GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

THE MATCH 2022所感

実は本ブログを書き始めた時に一番多く書いていたのは格闘技ネタだったのですが、今日は久々に格闘技ネタを扱います。

興味のない方はパスしていただければと思いますが、興味のない方でも楽しく読んでいただけるように書きました。

なお、今回は普段より力を入れて書いたので「SHUMIオススメ」タグもつけました。

 

PPV(ペイ・パー・ビュー)で番組を購入するのは初めてだったのだが、昨日はPPVでキックボクシングのメガイベント「THE MATCH 2022」を観戦した。

そもそもABEMAがRISEとK-1を無料で生配信してくれているのを長らく観戦させてもらっていて、とてもありがたく感じていたのだが、ABEMAが蒔いてきた種をここで一気に収穫するのはとてもすばらしいと思ったし、ある意味これまでのお礼も兼ねて喜んで購入できたように思う。

さすがに5,500円(俺は一旦会員になって4,400円で購入したが…)は今回だけにして欲しいが、普段のRISEやK-1の無料での生配信を止めても2,000円程度であれば購入すると思う。

なにせこうした大格闘技イベントは昼から21時ぐらいまで延々と続いて、その間ずっと楽しめるのだからありがたいのだけど、本当に疲れるのが難点で、特に昨日はぐったりした。

地上波テレビのようにCMがなく、やかましい芸能人が騒がないのもありがたかった。

 

本イベントは会場の東京ドームに56,399人が詰めかけて20億円を売り上げ、PPVでも50万件の観戦があって25億円を売り上げ、スポンサー収入などを入れて50億円を売り上げたビッグビジネスになったようである。

日本国内における1イベントによる収入としてはなかなか記録的なものだったのではないかと思う。

テレビというCMスポンサーに依存するビジネスモデルではPPVのように20億円もの収入は到底得られないわけで、世界のスポーツビジネスがテレビからPPVに移っていっているのは当然といえば当然の流れであろう。

30球団もあるMLBドジャーズ1球団の年俸と日本のプロ野球12球団の合計年俸がほぼ同額になっているのはPPV収入の差によるところも大きい。

 

とはいえ、本イベントのPPVが50万件あったとはいえ、これではおそらく100万人ぐらいしか生観戦しなかったということになり、仮に地上波テレビ放映されたとして視聴率が10%弱あったとすると1,000万人が観戦したらだろうからその差は大きく、実際、那須川天心選手も武尊選手も子供が観られなくなる可能性が高くなることに大きく失望していた。

確かに、PPV50万件から得られる収益は多いが、100万人程度しか観なかったとすると個人的には少ないなあ…と感じたのだが、5,500円ものPPVを買おうとするキックボクシングのヘビーファンはその程度の人口なのだろうと理解した。

日本人の1%程度といったところだろうか…。

もちろん、もっと多くの人が本イベントを観られるに越したことはないよな…と思っていたのだが、どうやら今夜ABEMAで配信するということで、なかなかニクいことをするなと思った。

むろん、個人的には昨日観られたことに1万円以上の価値があったと思っているので、今日になって「タダで観られますよ」といきなり発表したことに対しての異論はない。

 

個人的にはスポンサーに忖度し、かつ、マス層に訴求するがゆえに個々のニーズにアジャストしづらい地上波テレビというビジネスモデルに辟易としており、かつ、スタジオ芸人やテロップや効果音が騒がしい民放番組に強い嫌悪感を抱くようになってしまっているので、スポーツ中継を除くとNHK以外の地上波テレビは全く観ていない。

前は「題名のない音楽会」や「モーサテ」のような良質なコンテンツに限って観ていたが、今はスポーツ中継以外はゼロである。

しかし、天心選手も武尊選手も地上波で地名度を得ていったこと、彼らが地上波で多くの人に観て欲しいと願ったことを思うとやはり気持ちは複雑である。

 

ご存知でない方がいるかもしれないので言及しておくが、本イベントは当初はフジテレビが生放送する予定だったのに5月31日になっていきなり中止するという出来事があった。

新型コロナ禍でもこの国では官民ともに異常なリスク回避志向が見られたし、日本の経済が低迷しているのもサラリーマン経営陣による過度なリスク回避志向によるところが大きいと思うのだが、今回のフジテレビの判断にもそうした側面を感じた。

かつてK-1GPを盛り上げたフジテレビの功績は認めるが、この件で最も嫌いなテレビ局になった。

まあ、全く観ていないので好きでも嫌いでも何のダメージにもならないのだが…。

この反社会勢力の人間が入り込んでいる可能性があるというスキャンダルを報じた週刊ポストの記事にはdマガジンで目を通しているが、そこまで問題視するほどのことなのだろうかと思ったし、現にABEMAはテレビ朝日サイバーエージェントの共同出資会社なのにきちんと配信した。

俺にとって地上波テレビの番組はつまらないのに、ABEMAやテレビ東京のネット配信番組はとてもおもしろく感じるのだが、それは、放送時間の縛りがなく、自主規制やコンプライアンスにがんじがらめになっていないからだと思う。

また、垂れ流し放送よりもオンデマンドのほうが圧倒的に良いので、早くサブスクリプションを含むネット配信番組が伸びて、地上波テレビがどんどん衰退していくことを心から願いたいと思う。

なお、個人的には週刊ポストというクソ週刊誌(ほとんどの週刊誌が当てはまるが…)は昔から早く休刊になって欲しいと願っているのだが、団塊世代が健康・情弱雑誌として購入し続けているのかなかなか往生際が悪い。

 

ところで、何故に本イベントがメガイベントになり得たかというと、天心選手と武尊選手の試合が実現するための道のりが足掛け7年にも及ぶあまりに険しい道のりだったので、そういう政治的な部分だけでも相当な注目を呼んだからである。

また、天心選手41戦全勝、武尊選手40勝1敗(1敗は新人時代の負傷ドクターストップ)と、全勝が難しいキックボクシングではちょっとあり得ない戦績かつ人気絶大の2人が雌雄を決するというのも当然大きな要素となっている。

個人的には実現しないほうがお互いのためとすら思うような残酷なカードだと思っていたし、より悲壮な覚悟で臨んでいるようにうかがえた武尊選手が勝つのではなかろうか、いや、勝って欲しいと願っていたのだが、試合内容そのものは一方的な展開だった。

開始1分で天心選手が2回ジャブをまともに当て、武尊選手がそれに対応できなかったところで大勢が決したように思う。

その後のほとんどの攻撃がこのジャブによって封じられてしまった。

1994年の薬師寺保栄VS辰吉丈一郎戦における薬師寺氏のジャブのようなすごさだった。

いくら武尊選手がサウスポー相手に練習をしてきたとはいえ、この種の苦手意識はなかなか解消しづらいというのはキックボクシングの経験者としてはよくわかるし、ボクシングの小國以載氏は元世界チャンピオンなのに過度にサウスポーが苦手だった。

もちろん、武尊選手も並のサウスポーのジャブならば得意のプレスで一気に潰せたのだが、天心選手のジャブだけはもろに食い続けてしまった。

 

このイベントは天心・武尊という両雄の対決という側面の他に、決して交わらなかったRISEという団体とK-1という団体の対抗戦という側面もあったのだが、交わらなかった原因は看板の大きさとその理念ゆえに専属契約にこだわり続けたK-1側にある。

一度解散状態になったK-1は2014年に新生K-1として復活したのだが、あまり表に出てこない新生K-1のオーナーは矢吹満氏という方でこの方が長期的に存続させるために当面は、選手は専属契約にし、ランキング制は設けず、コミッションも作らないという方針を掲げ、その理念ゆえに他団体RISEの天心選手とK-1の武尊選手の対戦はなかなか実現しなかったのである。

RISEは黎明期から知っているが、もとはゴールドジムサウス東京ANNEXあたりでイベントをやるような団体だったのだが、他団体とニュートラルに交わり続けたことと、天心選手の人気によってK-1と並び称される団体になった。

個人的には本イベントでもメジャーを標榜するK-1の選手のほうが勝ち越すのではなかろうかと予想していたのだが、蓋を開けたらRISEのほうの分が良かった。

これはやはり専属契約によってガラパゴス化したK-1と他団体と分け隔てなく交わってきたRISEの地力・選手層の差といえるのかもしれないと感じた。

なので、これからキックボクシング界がどうなっていくか見ものだな…とも思った。

 

ところで、天心選手も武尊選手も「格闘技のすばらしさを広めたい」「自分たちを見て格闘技をやりたいと思う子供が少しでもいたら…」というようなことを事あるごとに口にする。

ただ、これについては個人的には違和感を覚える。

格闘技、特にプロ格闘技はあまりに身体に悪いのでどうしてもやりたくて仕方ない人以外には薦められるようなものではないと強く思うからである。

また、プロ格闘技のすばらしさというのは勝者と敗者のあまりにも濃いコントラスト、合法的なケンカという野蛮さに起因する中毒的なものであり、その背徳感とアドレナリンを快感にして楽しむものであり、プレイヤーとしてのスポーツのすばらしさを求めるのであれば柔道やアマチュアボクシング程度にとどめておくべきであろうと思う。

ただし、その背徳感と爽快感ゆえに俺個人は他のスポーツよりも格闘技を観るのが好きなのである。

 

魔裟斗氏や武尊選手はいい車に乗ることで、「上に行けばこうなれると子供たちに夢を与えたい」と述べているが、そうなれるのはごく一握りだし、純粋に自分が乗りたいから乗るのなら良いが、子供たちに夢を与えるために乗るというのはちょっとうらやましくない。

また、武尊選手は「負けは死であり、負けたら即引退と思ってやっている」というようなことをずっと述べていたが、それは裏を返すと敗者に対する冒とくと考えられなくもない(ちなみにK-1の運営会社の名前は「グッドルーザー」である)。

なお、武尊選手は「天心戦はこれまでの人生の全てを賭けて戦う」とも述べていたが、そこまで悲壮な覚悟を口にするのはいくらなんでも重すぎるだろ…と俺は思った。

天心選手も「負けたらマジで死のうと思って遺書的な動画を撮っていた。生き残った」というようなことを述べていたので同様である。

天心選手や武尊選手がいかに大きな栄光をつかもうと、それをうらやむ心の何百倍もそのしんどさに対する同情の念のほうが大きい。

 

さて、本イベントは決して交わらなかった天心選手と武尊選手の7年間にわたる因縁ともいえる物語があったからこそ東京ドームのチケットが即時完売し、社会的な現象にもなったのだが、天心選手は舞台をボクシングに移し、武尊選手は引退する可能性が高く、引退しないとしてもこれほどのライバルストーリーはもう生まれようがない。

これまで溜めに溜めた物語を昨日という日に一気に爆発させ、我々を魅了したのだが、コアなファンはともかく、マス層に対してはキックボクシングはしばし雌伏の期間になることを余儀なくされるのではなかろうかと思った。

 

また、人間は国であれ地域であれ団体であれ自分が帰属する集団に愛を抱くのは当然だが、強い「RISE愛」「K-1愛」を抱き、対抗戦という図式を描いている間はキックボクシングは統一コミッションの下で行われるボクシングのようなメジャースポーツにはなりようがない。

まあ、ボクシングもJBC日本ボクシングコミッション)が腐ってて財政難で清算して再建したばかりなのだけど…。

 

さて、全勝のままキックボクシングを引退して、ボクシングに転向する天心選手はチャレンジングでありながら、守るものもとてつもなく大きなしんどい人生を歩むこととなるのである。

観客としてはたまらなく楽しみである。

 

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最近、夕方の空が赤い日が多いが、6月16日の夕方の空は赤かった。最近出かけたところ写真は次回に…