リフレ政策について書いた際に、学者達が真面目に言ってることがあまりに真逆であることに関して、医学にも化学にもエビデンスというものがあるのに経済学はいい加減な学問かつ複雑系だということを述べ、だから株価や為替の予想も当たらないと述べ、とはいえ、地震予知・気象変動予想・埋蔵資源推定・低炭水化物食の是非・ダイエットの方法など正確性の低い学問は他にも多々あるとも述べた。
特に低炭水化物食の是非についての神学論争はリフレ政策論争と同じぐらいに学者の見解が真っ二つに分かれている。
僕は学者ではないのでどちらが正しいかわからないし、僕のように花粉症だったり、牛乳を飲むとお腹を壊したり、アーモンドに遅延性アレルギーがあったりする人間ともいれば、全く体質が違う人もいるわけで、肌の質にせよ、太りやすさにせよ、同じヒトであっても個体差というのもバカにならないなあと思っているので、人による違いはあるだろうなと思っている。
しかし、炭水化物を食べ過ぎている人間に太っている人間が多いことや実際に太ること、炭水化物を食べ過ぎると頭脳のパフォーマンスが落ちるという経験則があること、血糖値の急上昇が様々な病気の原因になっていることは明らかで、炭水化物の取り過ぎが身体に良くないということは確かだろうと思う。
なので、ラーメン・チャーハン定食を出す飲食店には罰則がいるのではないかと思うこともある。
人工透析患者にも同情の余地がある人とない人がいると思っている人も多いであろうとも思う。
そのようななか、東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らのチームが「糖質制限で老化が早まる、寿命が縮まる」という内容の結果を発表したという衝撃的な記事が3月15日付の日本農業新聞に出た。
僕はこの記事をネット上で見て、dマガジンの週刊新潮でも後追い記事を読んだ。
そして、これは日本農芸化学会において発表された研究結果とのことである。
僕は、研究機関主体が主体となって、科学的な観点で調査した結果であっても、特に健康関連の記事においては、それはどのような場で発表されたのか、どこがリリースや記事を出しているのかということには細心の注意を払うようにしている。
このところ特に、ヨーグルト・コーヒー・チョコレート・ワインなどの効用をうたっている記事を見かけることが多いが、どこがそれを広めようとしているかということには注目する必要があると思うのである。
その効用がどの程度大きいのか、万人に必要な効用なのか、弊害を補って余りある効用があるのかといった点に対して注意をすることが大切だと思うのである。
僕が見る限りでは、メーカーがどこかから意に沿う研究結果を見つけてきて、PR会社を使ってリリースを回してマスコミが報道してくれるように促しているように見える事例、もしくは記事広告を出稿する事例が多いと思わずにはいられない。
ところで、日本農芸化学会のサイトを見る限りでは穀物業界と癒着があるようには見受けなかった。
なお、都築毅氏は昭和50年の食事や健康な和食を推奨するスマートエイジングの学者のようであり、氏の運動にも低炭水化物食と同様に説得力と建設性を感じる。
しかし、日本農業新聞は穀物を売りたい側の意向をどこかで反映しているのだろうとは思った。
僕は、これに対して、江部康二氏をはじめとする糖質制限食論者の反論が出るのを楽しみに待っていたのだが、江部氏が東洋経済ONLINEで反論をしているのを発見した。
要点を述べると、以下のような内容であった。
そもそもマウスの食事実験の結果はヒトには当てはまらない
マウスやラットなどネズミ類の本来の主食は草の種子(すなわち今の穀物)
人類のもともとの食性は「糖質制限食」
この反論によって、都築氏らのチームの発表結果は一瞬で喝破されたのではないかと僕は思った。
ところで、僕が調べたところ、マウスはハツカネズミなので種子・穀物食で、ラットはドブネズミの実験用の飼養変種であるが、ドブネズミは雑食である。
なお、マウスを用いた研究結果として、食べ過ぎると内臓の老化を加速させるという研究結果が以前に出たことがあるのだが、こちらは人間に当てはめても問題ないだろうと思う。
僕は、演繹的な神学論争にほどほどつき合いつつ、長寿食のような帰納的・伝統的な要素にも目を配りたいと思っており、低炭水化物食の優位性を認めつつ、世界の人類の食文化を観察するに、極端な低炭水化物食に振れるのもまた危険だろうし、クオリティ・オブ・ライフの観点からも、そこまでがんばる必要性はないだろうとも思っている。
っていうかそこまでがんばれない…。
今は、山田悟氏が著書「糖質制限の真実」にて提案されたロカボ生活を支持しつつも、炭水化物が最も美味く、かつ、廉価なことは間違いないわけだし、何より意志が弱いので、きちんとロカボを守れていないが、食べ過ぎには気をつけるという、ゆるゆるロカボで生活をしている。
というわけで、糖質制限食にはきちんとつき合えないものの、それを否定する側を支持する気にもなれないといったところであるが、サプライヤーのキャンペーンには引き続き注意を払っていこうと思う。
本日より種子法=主要農作物種子法が廃止となるが、これも本質を見極めるには相当勉強をしなくてはならないのだろうと思う。
今のところ僕にはそれを深く勉強する意欲はないのだけど…。
あと、余談だが、高城剛氏が高城未来ラジオで「レギュレーションが野放しの日本のサプリは買わないほうが良い。飲料会社のサプリなどは止めたほうがいい。レギュレーションが厳しいアメリカ産やヨーロッパ産のほうが良い」と述べ、COURRiER Japonのサイトでは「〇〇〇の製品とか絶対に買うべきじゃない」とも述べておられた。
高城氏の話には興味深いものが多いので注目しているのだが、僕に〇〇〇の製品について四の五の言う資格はないし、氏の話を鵜呑みにしているわけではないということを付記してはおくものの、気になることを言うものだなあと思ったのでここで触れさせてもらった。
【追記】
2018年4月7日追記。
江部氏が反論した翌週に週刊新潮が再反論を試みており、お互いの沽券がかかっているためか、岡本卓氏などは随分と口汚い言葉で反論をされている。
そして、それに対して江部氏が再反論をしているのだが、個人的にはやはり江部氏の主張のほうに説得力を感じた。
とはいえ、江部氏の推奨する炭水化物無しの食事は僕にはとても真似できないのだけど…。
それにしても、リフレ派と財政再建派の論争を見るかのようなガチガチのバトルだが、医師や学者は自分の沽券を賭けているのに対し、週刊新潮は署名記事でもないし、売れればいいやという立場なのだろうなと思う。
困るのは経済政策も食事法もとても大切なことなのに真っ二つに論が割れているということに対してである。
2018年4月12日追記。
こちらに江部氏の東洋経済ONLINEでの反論が記されていた。