GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

リフレ政策は好き嫌いの問題ではなく、正しいか正しくないかの問題である

 

今頃アベノミクスについて

1月13日に、政治や政策の軸は好きか嫌いかで考えれば良いと思っているが経済政策は違うと述べた。

 

安全保障は別として、選択の問題であることが多い政治の問題と違って、経済政策はあまりにも重要過ぎである。

そして、マクロ経済や貨幣や金融というもののおもしろさ・わからなさってすごいな楽しいな、経済学部に行っておけばより見定める目を持てただろうな、数学を高1で完全に放棄したから数字が読めず困ったななどと、大人になって初めて学生の頃の勉強不足を後悔するこの頃でもある。

それも趣味的な理由で…。

アベノミクスについて思うことを述べるがが、アベノミクスが始まって5年も経つわけで、主に過去形のことを論じることとなる。

 

ところで、経済政策について各論を論じると、円安によって助かる企業もあれば円高によって助かる企業もあり、インフレを望む給与所得者もいればデフレを望む預金生活者もおり、立場によって願う内容は変わるのだが、総論としての経済政策は上手くやるか否かであり、正しいか正しくないかという問題に近いところがあるように思う。

 

安倍首相は元々は経済よりも政治課題の解決に情熱を持っている政治家というのがコンセンサスだったように思うわけで、確かに外交や安全保障にそういった要素を発揮しているし、憲法改正に対して並々ならぬ意欲を示し続けているが、結果として内閣の色が最も濃く出ているのはアベノミクスという経済政策に関してである。

 

アベノミクスウィキペディアを引用すると以下の3本の矢からなるとされている。

 

1 大胆な金融政策
 1-1 2%のインフレ目標
 1-2 無制限の量的緩和 
 1-3 円高の是正と、そのための円流動化
 1-4 日本銀行法改正

2 機動的な財政政策
3 民間投資を喚起する成長戦略

 

3はまだまだ物足りず、2も賛否はあるとはいえ、1こそがアベノミクスの真骨頂であり、長短金利操作付き量的・質的金融緩和等も導入されているが、上記1-1はまだ達成されないままとなっている状況である。

世界的な景気拡大に連動してではあるが、景気拡大を続けてGDPは少しずつ上昇し、下げ時の日銀によるETF買いはあれど株価も大きく上昇し、失業率も軒並み改善しており、民主党政権の時とは隔世の感がある。

 

リフレ政策の是非という対立軸

ところで、アベノミクスの根幹は何ぞやと言えば、膨大な財政赤字がある状況下において、これまで非主流派とされてきたリフレ派の面々を安倍氏が強い意志で登用し、日銀の人事権も含めてそれを押し通したという点にあると思う。

そして、リフレ政策を是とするか否とするかということが経済政策の大きな対立軸となっている。

当事者である日銀の黒田東彦岩田規久男はもちろん、在野中に安倍氏にリフレ政策を指南したとされる浜田宏一氏高橋洋一氏が、非伝統的金融政策とされるリフレ政策中心的な人物といえるだろう。

 

最近、出口戦略についてささやかれ始めたが、個人的にはまだまだ先だろうと思うし、年率2%のインフレとまでいくかどうかはわからないが、デフレ脱却宣言をした後にどうなっていくかで、リフレ政策が正しいかったかがいずれわかってくることになる。

 

出口戦略において上手くテーパリングをしつつ、過度なインフレを起こさずに名目GDPが相当大きくなるところまで国債を売らずに保持し続けるか、もしくは、政府紙幣無利子国債といった「禁じ手」を用いた場合に、過度のインフレや日銀の債務超過や信用不安や国債暴落や財政危機を起こさずにいられたらアベノミクスというリフレ政策は大成功ということになる。

まだ利上げについて考える必要はないように思うが、利上げ局面で銀行準備預金に対する付利金利払いによる日銀の債務超過のリスクも失敗要素として考えられるだろう。

なお、現状が事実上の財政ファイナンスかどうかと言われればYESということだと思うが、今現在においては問題は表面化していない状況にある。

 

そしてこのようにソフトランディングするならば日本の将来に一筋の光が灯るし、財政再建派が警鐘を促したり、凡人が普通に心配しがちなように、過度のインフレや財政危機が起きるとすれば日本の将来は暗澹たるものになるだろう。
日本の政治課題は多いが、こんなに重要な対立軸はそうそうない。

 

個人的には財政再建派の言ってることはごくごくあたりまえというか、身も蓋もないというか、高校生にでも思いつくことに過ぎず、普通に想像できることを声高に叫んでいるだけだから、これを叫ぶ先生方については偉いとも何とも思わない。

 

それに対して、リフレ派が言っていることはあまりにぶっ飛んでいるが、GDPギャップ=需給ギャップの解消に焦点を当て続けるという点において理路整然かつ一貫したロジックのようにも思え、かつ、仮に正しい結果になるならばミラクなことだと思う。

 

経済学というろくでもない複雑系

いずれ歴史が証明することになるのだが、学者達が真面目に言ってることがあまりに真逆であることに関して、経済学ってなんていい加減な学問なんだろうと思わずにはいられない。

医学にも化学にもエビデンスというものがあり、こんな体たらくが許される学問ではない。

 

まあ、地震予知・気象変動予想・埋蔵資源推定・低炭水化物食の是非・ダイエットの方法など正確性の低い学問は他にも多々あるから経済学だけがいい加減というわけではないのだが、株価や為替の予想が全く当たらないのと同じ複雑系というべきか、風が吹けば桶屋が儲かるというべきか、バタフライ効果というべきか、そういった的な面もあって予測が難しいということだろう。

 

困るのは、財政再建派の言ってることもよくわかるし、リフレ派の言っていることもよくわかるということなのだが、メイクミラクルを起こそうとするリフレ派の理論のわずかな部分には本当にそうなのかと思う部分もなくはないので、そのあたりについては次回に書きたいと思う。

 

ちなみに財務省は国内向けには危機を煽っておきながら、格付け会社に対しては恐ろしくクールな回答をしている。

まあ、この回答をした時の財務官は「黒田財務官」のようであるが…。

 

経済の歴史を顧みると、中にはイギリスの南海会社のような国民騙しもあるが、財政赤字を解消するために財政ファイナンスをしてその副作用としてハイパーインフレになった例は世界に幾度となくある。

 

もちろん、金本位制度ではなく、極めて高度な金融政策を実行する今の世の中においてもこれまでの歴史と同じ結果になるかどうかは分からない。

なお、リフレ派と財政再建派のどちらが正しいかということについて意見を表明しきれていない有識者も極めて多い

とにもかくにも見極めがつかないし、表明するのに勇気が要り過ぎるのだと思う。

 

リフレ派支持の上念司氏あたりは全く専門家でないのにも関わらず激しくファイティングポーズを取っておられるのだから、財政再建派の学者や論客は真正面から論争を挑んで論破してはどうかと思う。

そして、仮の話だが、アベノミクスが上手く軟着陸したとしたら、財政再建派の学者は全員丸坊主にして土下座するか、もしくは、学者を辞めるべきではないかとすら思う。

もちろん、アベノミクスで日本が窮地に陥った場合は土下座どころでは済まなくなる

 

これは選択の問題ではなく正しいか正しくないかの問題なのだから、経済政策でミスリードしたほうは、政治政策でミスリードしていると俺が思う朝日新聞社よりもタチが悪いということになってしまうと思う。

 

なお、リフレ派は円安を誘導しているが、円安と円高のどちらが好ましいかということについても、またどこかであらためて自分なりの考えを書きたいと思う。

しかしながら、財政再建派の野口悠紀雄氏らが「円安によって国民は損をしている。円安によるメリットはなくなっている」と叫ぼうと、円安の時に経常収支が増え、また海外からの投資資金が流入して株高になっているのは間違いのない事実である。

日本にとって原油の値段が上がっていいことは何一つないはずなのだが、原油の価格と日本の株価の相関が極めて強いというのも残念な事実である。

 

余談ですが、日銀のサイトは本当に良くできたサイトだな、解説等が本当にしっかりしているなあと思いました。

 

【追記】

以下に、今回の件を掘り下げた内容を記しました。

3回もあって長いですが、かなり時間をかけて書いたのでよろしければどうぞ。

 

gooddays.hatenablog.jp

 

別府にて