将来、以下のどちらの社会が到来するか予想がつかない。
- 少子高齢化のために労働者が不足する社会
- AIの普及などのために多くの労働者が不要な社会
世界的には後者の可能性が叫ばれる昨今だが、日本では前者も声高に叫ばれている。
これまでは専業主婦の割合を減らしながらも、労働者の労働時間が激減することなく世の中が推移しており、イノベーションが労働時間の減少に役立っていない。
今回は前者の労働者が不足する社会を想定して未来に導入されるかもしれない課税制度について意見を述べる。
後者の労働者が不要な社会についての個人的見解もあるのでこれは後日に書く。
シンプルライフの中に真の豊かさを見出す俺は、国民の幸せと経済成長は比例しないと思っているのだが、実際のところは経済成長が国の実績を測る大きなモノサシとなっている。
また、資本主義世界のプレイヤーは経済成長のための競争をし続けないと生き残っていけないという宿命を持っており、資本主義は怠惰な社会を許してくれない。
公共部門への支出=納税を除いて考えた場合、仮に全員が自給自足で満足ならばGDPはゼロと算出されるが、それで生活が完結する。
しかし、経済規模を測る数字であるGDPは「他人のためにどれだけ働いたか」「他人からどれだけ財・サービスを受け取ったか」を積み上げた数字である。
家事労働が付加価値に反映されないのは厳密にはおかしいのだが、GDPの計算には家事労働のような無償労働は反映されない。
要は、GDPで計算する経済規模とは「他人のためにした時間×作業単価」ともいえ、そこに自己目的は存在しない。
「他人のためにした時間」を増やすには「参加者率と作業時間の増加」が必要で、「作業単価」を増やすには「生産性の向上」が必要である。
特に前者の増加は経済成長に現実性を持たせるための重要なファクターとなる。
特に少子高齢化の社会ではできるだけ多くの国民に働いてもらう必要性が出てくる。
働いてもらうためには、不労所得を得てろくに労働しない人間や現在の貯蓄でやりくりしている人間にも働いてもらう必要性が出てくる。
そのターゲットは、お金からお金を生む人間・専業主婦・老人となる。
これまで、専業主婦と老人が選挙に絶大な強さを発揮してきたのでここにメスが入ることはなかったが、少子高齢化が進んで労働希望人口が不足するとここにメスが入ることは間違いない。
前にこちらに書いたように、今はサラリーマンばかりが増税されているが、長期的にはこのようになっていくと思う。
働かない人間もしくは働かなくて良い人間を働かせる方法は簡単である。
自然に思い浮かぶ条件としては、通貨価値を下げる高インフレが考えられるが、これは外貨や外国株式で運用すればヘッジできる。
ところが、貯金や株式などの金融資産全体に毎年1%なら1%と一定割合ずつ課税して、貯めれば貯めるほど税を取られるならばヘッジが利かなくなり、ほっておくと資産が目減りをすることとなる。
つまり、金融資産に課税すれば否が応でも労働への参加率が上がるということである。
これまでは金融資産を正確に把握できていなかったのだが、それを把握するためにマイナンバー制度が導入されたため、国は遠慮なく金融資産に課税できるようになった。
資産捕捉に対する外国との連携も強まるばかりである。
現在の日本はキャピタルゲインが20%程度の分離課税で資産家天国となっているが、ここに関しても他国のように総合課税になっていくと思う。
相続税の増加やマイナス金利に加え、資産課税や総合課税まで加わり、これまでは複利効果の恩恵に預かってきた投資家には辛いパラダイムシフトとなる。
資産課税は下手すると負の複利を生み出すものなのだから、強烈なパラダイムシフトである。
これは強制労働社会に近く、貯めても貯めても削っていく「全員ラット化社会」とでも言うべきものだろう。
ちなみに、所得税を上げても、消費税を上げても人は防御のために貯蓄に走るが、家計の金融資産や内部留保の現預金部分に課税されれば、取られたくないからどんどん投資するようになる。
カネを貯めれば貯めるほど景気が下向き、使うほど景気は上向くので、資産課税の景気高揚効果は絶大である。
資産課税をすれば好景気にならざるを得なくなるのである。
電子決済を促すために高額紙幣を無くす動きというニュースがあるが、これに関しても、金融資産の逃げ道であるタンス預金を減らすためという意味もあると思う。
また、こちらに長々と詳細は述べているが、広義で「総貯蓄=総借金」であり、これらを足すとゼロになるが、国民や企業の貯蓄が減れば減るほど国の借金も減る。
資産に課税することにより、これまで政府が財政出動をしても、中央銀行が金融緩和をしても貯蓄されていたのと逆の流れを作り出すこととなる。
消費税を増税したら景気が落ち込んで逆に税収が減ったりするが、金融資産に課税すれば、景気を浮揚させながら国自体の借金を減らしていくことができる。
ゆくゆくは節約しながらできるだけ働かない生活をしたいと思っている俺にこれらは悪夢である。
また、できる限り生活の自己完結度を高めたいシンプリストとして、こうした他人との相互依存ばかりを評価指標とする経済最優先の思想に、その大きな受益者でありながらも嫌悪感を抱く。
二重課税だから違反だとか、捕捉ができないだとか色々な意見があると思うが、立法府がいつの間にか決めてしまえば当局は容赦しない。
当局は海外資産も執念を持って捕捉してくる。
検察や税務署を見ていると、国家権力と徴税権の恐ろしさに身がすくむ。
国は行き詰れば必ず国家権力を駆使してくる。
冒頭に述べたなかで労働者が不足する社会になると想定した場合、長いスパンで考えると、資産課税が強まることで労働参加・強制消費を促す世の中が到来することも想定に入れなければと思う。
生涯現役の人にはいいかもしれないが、俺にとってはこんな世の中はごめんである。
高福祉国家は強制労働社会である