49回の放送を1回も欠かすことなく見てきたので感慨深いものがあった。
いくら武士道精神を全うするためであるとはいえ、仲間内での暗殺や切腹が多すぎること、登場人物が若くして死にすぎること、主人公の近藤勇の斬首という最も悲劇的な最後で終了することなどのせいで重苦しくなりがちな内容である割に、そんなに悲壮感を感じさせない作りであったことが、悲劇嫌いな私でも楽しんで見続けることができた最大の理由であろう。
歴史的な観点で考えた場合、新選組の何を評価するかと言われれば、「武士の意地を最後まで見せた」「武士道精神の範を示し続けた」「組織の規模の割に行動力と影響力が絶大であった」といった「生ける伝説」とも言える精神的な意味合い以外では評価をするのが正直難しいところではあるが、しかしながら、それだけで十分だろうと思う。
何故ならば、ずっと未来であり、全く昔とは価値観、国民の気質が変わってしまった今の世においても熱烈な新選組ファンが存在し続けるのは、その高い精神性、もしくは武士道精神に対して、普遍的な価値を見出すことができるからに他ならないからである。
とはいえ、土方歳三の容姿の今の世にも通ずる端麗さの貢献する部分は大きいと思う。
また、新選組モノの魅力はトムソーヤとハックルベリーフィンや劉備玄徳と諸葛亮孔明の関係ではないが、土方歳三というスーパースターが主人公の近藤勇をしのぐ存在感を示していることによるダブルキャストぶりが話に厚みを持たせているからでもあるだろう。
さらに、味方側にも魅力的な登場人物が多いうえ、敵方も西郷隆盛や木戸孝允や坂本竜馬といった歴史の表舞台の人物という豪華ぶりなのだからもうお腹いっぱいになるのもうなづけるというものである。
昨年の「武蔵」に引き続いて2年連続で見たが、「武蔵」はキャストは良くても脚本がイマイチだったのに対して、「新選組!」は主演の香取氏も悪くはなかったうえ、主演以外を実力派で固めたキャストと三谷幸喜氏の絶妙なテンポの脚本のおかげでつまらなかった回というのが全くと言って良いほどなかった。
あえて言うなら、多摩編と芹沢鴨との抗争編が長かった割には、後半のテンポが速かったような気がするが、おそらくは後半は暗いので手短に済ませたかったのだろうし、尻すぼみで宮本伊織すら出てこない「武蔵」よりはマシだろうと思った。
しかし、どうせなら、劉備玄徳亡き後も蜀が滅ぶまで、物語を続けた三国志よろしく、土方歳三が主人公の司馬遼太郎の「燃えよ剣!」よろしく、函館五稜郭まで話を続けて欲しかった…。
もちろん、同キャストでの続編を望む。
とはいえ、全般的には「燃えよ剣」よりこちらの「新選組!」のほうが私は好きである。
強烈な個性を持つ土方が主人公だと近藤があまりにかすむうえ、先に述べたダブルキャストぶりがおもしろいからである。
なお、司馬が「燃えよ剣」において、実際には女遊びが激しかった土方をそれほど女好きに書いておらず、純情一直線な「お雪」とのやりとりの部分を読むと興を削ぐように思うのは自分だけだろうか…。
八木邸