ボクシングでは、不利と思っていた井岡一翔選手が田中恒成選手に圧勝したことに驚き、RIZINではカーフキックで決まる試合を2試合も観て衝撃を受けた。
俺がキックボクシングを始めたのは大学に入学した26年前で、講師・トレーナー・スパーリングパートナーから足を洗ったのが14年前なのだが、その頃にはカーフキック(ふくらはぎへの蹴り)という技術はほぼ存在しなかった。
そもそも26年前にはローキックといえば右足で蹴る左足外側へのアウトローキックで、左足で蹴る左足内ももへのインローキックだとか奥足ローキック(後ろ足へのローキック)もオーソドックス同士での対戦ではあまり見ず、サウスポー相手の場合に右足でのインローキックを練習するぐらいのものだったのだが、14年前にはこれらの技はあたりまえに使い分けられるようになっていた。
それでもカーフキックに関しては存在はしていたとしても、太ももへのヒザ蹴りだとか、軸足払いなどのようなちょこざいな小技といった位置づけだったように思う。
しかし、数年前からカーフキックを有効に用いる選手が出てきて、カーフキックという言葉を耳にすることが増えてきたのでかなり気になっていた。
もちろん、今はスパーリングはおろかキックボクシングの実戦練習すらすることがないので、俺はカーフキックをもらったことがなく、頭ではそれがどれぐらい痛いか想像はおよそつくにしても、身体でその痛さを体験したことはない。
昔ほどキックボクシングや総合格闘技の試合を数多く観戦しているわけではないが、格闘技を観ることが大好きであり続けているので、格闘技の試合を年に100試合を優に超える程度はAbemaTVなどで観戦していると思う。
それらのなかでカーフキックが決定的なダメージを与えた試合を見たことはなかったのだが、大晦日のRIZINでは2試合がカーフキックによるKO決着となった。
大相撲の貴公俊(貴ノ富士)関が相撲界を事実上追放され、スダリオ剛というリングネームで総合格闘技に転向し、わずか総合格闘技2戦目にしてベテラン中のベテランであるミノワマンを相手にカーフキックで勝ったのにまず驚いた。
172cm・83kgのミノワマンは190cm・115kgのスダリオ剛選手より32kg軽く、かつ、44歳という年齢(俺と同じだが1学年上)とはいえ、総合格闘技戦で、196cmのボブ・サップ、218cmのチェ・ホンマン、218cmのジャイアント・シルバ、171kgのバタービーン、激闘王のドン・フライ、K-1の名選手であるステファン・レコやエロール・ジマーマンといった錚々たる、かつ、名前を聞くだけで笑っちゃう巨体格闘家を仕留めてきた実績があり、簡単には仕留められないだろうと思っていたのだが、元力士がカーフキックという新しい技を繰り出して歴戦の猛者を打ち破ったのである。
ここ数年、総合格闘技戦の実戦経験に乏しいミノワマンがどの程度練習をしていたのかは知らないし、44歳とはいえ、身体はきちんとできていた。
しかし、ミノワマンの頭のなかにカーフキックという新しい技術がきちんとインプットされていなかった、もしくは、まさか新人のスダリオ剛選手が繰り出してくるとは思わなかったということなのだろうと思う。
そして、メインイベントの朝倉海選手と堀口恭司選手という超実力者の対決があっさりとカーフキックでの決着となったのにはさらに驚いた。
ローキックへのステップバックに自信があり、パンチの練習に傾倒していた朝倉海選手の裏をかくようなカーフキックだったが、ここまであっさりとわずか4発のカーフキックで決まってしまうなんて…とカーフキックの恐ろしさに身震いがした。
カーフキックのカットはローキックのカットより簡単なはずで、朝倉選手もカーフキックをカットする技術は身につけているはずなのだが、ことごとく的中させ、破壊的なダメージを与えた堀口選手の技術と作戦力に脱帽である。
俺ならカーフキックを1発もらっただけで歩けなくなる自信があるのだけど、太ももの外側という筋肉量の多い場所にもらうローキックですら悶絶するほど痛いのに、やわらかいふくらはぎに蹴りをもらったらそりゃ壊れるわな…。
俺も身体はついていけなくなっているのかもしれないのだけど、キックボクシングの技術だけは落とさないようでありたいと思っているのだが、今からカーフキックの練習をすることはないだろうな~やったとしてもシャドーボクシングで見様見真似でやってみる程度だわな…。
そして、見てはいけないものを見たと感じたのが、吉成名高(よしなりなだか)選手。
タイ人選手を肘打ちで仕留めた吉成名高選手の動きや技術体系が日本人のものではなく、完全にタイ人のもので、かつ、タイ人選手と比べてもあまりにもの破壊力とアグレッシブさと技術の高さに唖然としてしまい、「こんなヤバい選手を知らなかったって、どういうこと?」と驚いた。
調べたらタイ国二大スタジアムのラジャナムナン・スタジアムとルンピニー・スタジアムの統一王者ということを知り、ダブルで衝撃を受けた。
しかも、まだ19歳だという。
以前であれば層の薄い中量級であっても日本人選手が二大スタジアムのどちらかのチャンピオンになったらキックボクシング界の大ニュースとして取り上げられていたのに、タイでは尋常ではなく層の厚いミニフライ級の統一チャンピオンになった日本人選手がいたのか!と驚きまくった。
そして、そんなすごすぎる選手のことが俺のフィルターに入っていなかったことを恥じるとともに、報道が俺に届いていないほどに報道が少ないのかもしれないと思って寂しさを覚えた。
吉成名高選手にはマジで注目です。
元旦の丸の内仲通りは予想通り閑散としていた
元旦の新有楽町ビル。なんとなく撮った
元旦の銀座中央通り。店はどこも閉まっているが歩いている人はそこそこいた
和光にて。期待にきちんと応えるディスプレイ
勝鬨橋より元旦の夕暮れ。東京タワーはレインボーカラー