やっとフィリピンへ
フィリピンという国はどうにもこうにも気になる国でありながら、観光的な魅力を見出せず、また、治安への不安もあり、なかなか足が伸びなかった。
フィリピンについて気になり続けていた点は以下のような部分である。
- 国内の給与が低くて失業率が高く、国民が英語を話せるため、国民の1割が出稼ぎに出ていて、GDPの1割は海外からの仕送りとなっている。
- 工業化が進まず、国内の産業が育たないままである。
- フィリピンはカトリック国であり、また、治安が悪いという側面が影を影を差すが、他の東南アジアの国と比べてパッと目につくような違いはあるのかという素朴な疑問。
- フィリピンは貧富の差がかなり激しい国なのだが、貧しい層や中間層の人々の生活がどのような感じなのかを感覚として知りたい。
このような点について注意して滞在したのだが、多くの学びを得られた。
日本人と何もかもがあまりにも違うフィリピン人を見て、果たして、クレバーで悲観的な日本人的なほうが幸せなのか、損しまくっているけど楽観的なフィリピン人的なほうが幸せなのかについていろいろと考えさせられた。
次回にこの点についての考察をしてみた。
なお、今回訪れたのはマクタン島とセブ島だけであり、フィリピン全体を見たわけではない。
セブ都市圏はフィリピン2番目の都市圏とはいえ、人口200万人超で、2,400万人もの人が住む世界最大級の都市圏であるマニラ首都圏よりもずっと小さいのだが、今回はセブから感じたフィリピンについての考察をあれこれと述べさせていただいた。
セブ島に行って抱いた雑感
旅に出た時には気づいたことを忘れないようにメモしておくようにしているのだが、以下はその転記である。
- 物価は日本の半額より少し安い程度ぐらいかなと感じた。
念のために述べておくが、国民一人当たりのGDPは日本の10分の1以下である。 - カトリック国で島国なので他のアジアの国と違った雰囲気なのかもと思いきや、タイやカンボジアと似たアジアらしい街の雰囲気であったことに驚いた。
- 路上で寝ている人が多く、物乞いも多いが、物乞いは特に子供が多い。
- 市場の臭いはやはり強烈。
- 大通りから道に入るとタイやマレーシアよりも明らかに貧しいあばら家が数多く立ち並んでいる。
- 銃社会であることもあって、店には銃を持った警備員が必ず立っていて手荷物検査がある。
- 車に乗って信号待ちしていると、頭の上に大量の水や菓子を乗せて売っている人が車道に入ってきて、停車している車に声をかけて売って回る。
炎天下で重い水を売る苦労を考えると驚いてしまう。 - 車の運転マナーやクラクションは他の途上国と同じように酷い。
- 何故か走っている車のほとんどが日本車だった。
- 中間層の拡大とともに車が急激に増えたのか、道はどこも渋滞していて、道路には砂埃が舞っていることも多かった。
大雨が降った時に土砂が道路に流れるのかもしれないと思った。 - 乗り合いバスのジプニーやサイドカー付きバイクのトライシクルが渋滞の大きな原因になっている。
- ジプニーは中古の日本製トラックを改造して作られているものが多いようでド派手だが、元の車両が古すぎてそこから出る排気ガスがあまりに酷い。
- ジプニーは常に満員でぎゅうぎゅう詰めで、身体と身体を密着させ合って座っているが、道を歩く人は少なく、歩道の整備も貧弱で、散策にはあまり適さない街という印象を受けた。
他のアジアの国々と違って散策の楽しみが小さいというのは大きな減点ポイントである。 - 歩道が歩きづらくても、ジプニー内で人と身体を密着させるぐらいならまだ歩いたほうがマシと個人的に思ったが、訪れた12月はたまたま気温が低いシーズンだったからそう思っただけかもしれない。
それにしても南国の人って歩かないよな~。 - 自転車は驚くほどに見かけない。
- バイクに乗っている人はセブ市内ではきちんとヘルメットをしているが、セブ市内から出ると誰もヘルメットをかぶっていない。
- 人々が食べる米の量がかなり多い。
日本人の2倍以上食べるようで、気候的にもコメの生産量が多いのかと思いきや、前近代的な農法で栽培している農家が多いため、世界最大のコメの輸入国となっているようである。
他のアジアの国と違って工業化もできていないのに主食すら輸入とは工業国でコメ輸出国のタイと違うなあと思ってしまった。 - 他のアジア諸国と違って食べ物が辛くないものの、おかずの味は濃い目で、味の濃いおかずをたくさんの米で食べているように見受けた。
国民的ファストフードのジョリビーで売っているフライドチキンにライスがついてきた時には「どれだけ米好きなんだよ!」と思った。 - 米を食べ過ぎるためか、太っている人が多い。
また、全体的に日本人より身長が低い。 - 子供は痩せている子が多いが、ものすごくかわいい。
- 店員のノリが良く、他のアジア諸国より明らかに愛想が良い。
- 詰まったまま修理をしていないトイレが多く、途上国特有のメンテナンスの行き届いてなさを感じる。
- 店で紙幣を渡した際に「おつりがない」と言って、おつりを返さないというのは途上国でよくあることだが、フィリピン人は他の国とは逆におつりよりも額の大きい紙幣で返してくる傾向にある。
スーパーなどで何度かそれがなされたのだが、帳尻はどう合わせるのか、どういう裁量権で行っているのかについては全くわからなかった。 - 巨大ショッピングモールがいくつもあるが、貧困層以外の現地の人の消費の多くもここで行われているのではないかという印象を受けた。
そのためか、巨大モールの外の街の広がりが他のアジア諸国と比べて極端にないように感じた。
例えるならグアムのような印象である。 - 巨大モールがあまりに便利すぎて他の商業形態が入り込む余地がなくなっている印象だったが、先進国ならともかく、途上国のフィリピンでいち早くこのような形態になっていることに驚いた。
- 驚くことに、世界の巨大モール・トップ20のうち、5つはフィリピンに集中しているようで、巨大モールはもはやフィリピン名物とすらいえるかもしれない。
セブの巨大モールですら、そのメガっぷりが日本の巨大イオンモールを超える大きさで驚いた。 - 後述するが、2週間に1度の給料日のモールの賑わいがすごい。
- 訪問した12月には英語留学者を含め、韓国人観光客を多く見かけ、日本人や中国人はあまり見かけなかった。
- 残念ながら乾季でも蚊が出る。
- 念のため述べておくが、セブ市街には全くビーチがなく、ビーチリゾートの趣きもゼロで、マクタン島もビーチの美しさが際立つ島ではない。
要は街歩きもビーチもさして楽しめない島ということである。
次回にフィリピンに関する考察について述べる。