技術入門・パンチ編
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パンチは基礎から始め、いろいろな種類を練習してみて、使いやすいパンチを磨いていけば良いと思う。
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ただし、苦手なパンチも集中的に練習することによって使えるようになっていくものなので、諦めずにやったほうが良いと思う。
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説明は図解がないのでわかりにくいかもしれないが、かなり的確に書いたつもりなので、とりあえず手を動かしてみて、わからなくなったら本文に戻ってやっていただけるとありがたい。
オーソドックススタイル(自分)対オーソドックススタイル(相手)の場合のパンチ技術
ストレート
左手で相手を牽制する「ジャブ」と、左から右のダブルパンチである「ワンツー」は、すべてのパンチの基本となるパンチである。
本来ならキックボクシングを始めてから2日はジャブのみ、1週間はワンツーのみを練習すれば良い。
なお、パンチを打つ場合、相手に当たる瞬間にだけ拳に力を入れるようにし、普段は拳をガチガチに握らないようにする。
うずらの卵を握るように構えて、当たる瞬間に卵をつぶすような感じにする。
左右のストレートパンチを打つフォームだけは絶対に間違ったものを身に着けてはならない。
特に気をつけたいのはひじの角度で、初心者のうちはひじはどんなときでも下を向いて打つ癖をつけなくてはならない。
上級者になれば別だが、初心者のうちにひじを横を向けて打つ癖をつけると、「技術的に伸びない」「連打ができない」「防御ができない」「癖がついてなおらない」など致命的な弊害が数多く生まれる。
ストレートの定義を私なりにすれば「自分の拳と相手の的を最短距離で結ぶパンチ」ということになる。
自分の拳と的を直線で結ぶように打つことだけを心がけて打つと良い。
拳をその線に沿って移動させながら拳をひねるようにする。
また、左を打つ場合は左の肩を、右を打つ場合は右の肩をしっかりと入れて打つようにする。
鏡に向かってパンチを打ち、鏡に映った拳の場所が変わらず、大きさだけが変わって見えるぐらいになるまで練習すると良い。
とはいえ、若干拳を内側に入れ込む必要はある。
なお、左肩の引きと同時に右肩を入れるようにするとワンツーが出るテンポが速くなる。
最終的には打つときの予備動作を完全にゼロにしてモーションがわからないぐらいになるようにする。
特にフォームが重要なパンチなのではじめはスローモーションでフォームを確認してから鏡を見て反復練習すると良い。
特にジャブはスピードが命なので全てのパンチで最も速く打てるようでなくてはならない。
ジャブを打つ際に余計な予備動作があるとすべての攻撃を見抜かれるので、ジャブの予備動作を消す練習は最も重要である。
これができるかどうかが、パンチが上手いか下手かを分けるポイントのような気すらする。
なお、絶対にジャブは連打できるようにしなくてはならない。
一度完全に戻して打つジャブと半分だけ戻して打つジャブの両方ができるようになったほうが幅が広がる。
なお、左のパンチを打つときにはその場で打つ場合よりも、ステップインを伴って打つ場合のほうが多い。
練習を始めたばかりの時はその場でワンツーを打っても良いが、すぐにジャブ&ステップインを伴った練習に切り替えたい。
左足は手と完全に同時に出すのがポイントである。
難しいのは右足で、左足とほぼ同時に前に持っていくようにする。
右のパンチを打ちながら右足を前に持ってくる打ち方もなくはないが、私はそれをあまりオススメしない。
ストレートを打つ場合に気をつけることは右足のかかとの向きで、かかとを右手が向かっている方向と真逆の方向を向くまで回す必要がある。
その際に、左足は絶対に外側を向かないようにし、右足は太ももが地面から垂直になるぐらいにまで内側にねじるようにする。
ジャブ無しでいきなり踏み込んでからのストレートを打つ際には、カウンターをもらわないようにするため、頭を左下に沈めながら打つほうがベターである。
あと一つ、ジャブやストレート打つ際に気をつけたいことは、必ず一番伸びきったところで当てるようにするということである。
一番伸びきったところで確実に当てるために足の踏み込み位置がモノをいうので、これを絶対におろそかにしないようにする。
当たる瞬間に拳を握り、骨を伸びきった状態に一瞬ロックさせた時に最大の威力が得られる。
腕が伸びて硬直した状態の拳は硬くて痛いのである。
引きが速いに越したことは無いが、引きを意識するあまりに伸ばしこみが弱かったら本末転倒になる。
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左右とも基本の構えは同じ 肘を下に向けたまま 肩を入れて腕を伸ばしきる -
ストレートの応用
以下、応用に入る。
ワンツーの後に左足を強く踏み込んでジャブを打つことがあるが、これをワンツースリーと呼ぶこととする。
このパンチは身体を左にひねった後に出すので普通のジャブより断然威力があり、場合によってはストレートと同じぐらいの威力を持つので多用したい。
ストレートには相手のガードの内側から入るパンチと外側から入るパンチとがあるが、自分から仕掛ける場合には内側から入れるのが理想とされる。
カウンターの場合は内側からでも外側からでも良いが、外側から入れるほうが現実的ではある。
基本ができた上で、外側から下ろすように入れるカウンターの右クロスストレートが使えるようになれば攻撃の幅は劇的に増大する。
このパンチは若干フック気味に打っても良い。
左のパンチはちょっと左に動いて左から、右のパンチはちょっと右に動いて右から伸び上がるように上から入れるという手もあるが、意外にこのような外側からのパンチは相手に入りやすい。
その応用として、私が“右ジャブ”と呼んでいるものを紹介する。
なお、これはオリジナル気味の技である。
オーソドックススタイルの場合、左ジャブを突破口にするため、普段は左に回ることが多いが、右に一歩踏み込んでジャブのようなストレートを外側から打つタイミングをつかみさえすれば、このパンチはおもしろいように当たる。
もしくは、ボクシングのウィラポン・ナコンルアン・プロモーション選手よろしく、左のガードを固めて右のジャブを連打して相手にプレッシャーをかけることで相手のガードにスキ間を作るアプローチもオススメである。
なお、キックボクシングにおいては、ボディーへのストレート攻撃は上級者でない限りは基本的に蹴りやヒザで行った方が良い。
もちろん、上級者はボディーストレートをバンバン打って良いが、蹴りやヒザのほうが射程が長く、威力もあるというのもあり、また、ボディーを殴る際には殴る手のほうの顔のガードががら空きになるし、体勢を低く前かがみにせざるを得なくなることから、相手の攻撃を貰いやすくなるため、若干、実用性に劣るからである。
しかし、キックボクサーにはボディーストレートが得意な選手が少ないことをいいことに、かなり有効な武器にしている選手がいる。
手だけを下に沈めるのではなく、身体全体を沈めながら足音がバンと立つぐらいに前足を力強く踏み入れて打つ。
ボディーを打つ場合には左ボディージャブを打つ場合も、右ボディーストレートを打つ場合も、もう片方の手できちんとガードしないと危険なのでその点には気をつける。
ボディーブローを練習する場合、接近してのレバーもしくはみぞおちへの左ボディーアッパー、もしくはレバーへのボディーフックを先に練習してから右ボディーストレートを練習したほうが有効度の面からみて良いといえるだろう。
なお、当然ではあるが、左ボディージャブも右ボディ―ストレートもみぞおちをねらうようにする。
右ボディーストレートをしゃがみこむように打つ選手というのは相手をしていてやっかいに感じるものだから、右ボディーストレートを一生懸命に練習してみる価値はあると思う。
ちなみに私は背が高いこともあって苦手気味である。
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フック
もちろんフックは顔への左フックが基本である。
ボクシングにおいて、左フックは最もKOを多く生み出すパンチである。
キックボクシングにおいてもおそらくそれは例外ではない。
なお、ボクシングのフックとキックボクシングのフックとでは微妙な感覚の違いがあり、前者は前傾姿勢から前傾姿勢に構える相手に向かって放つため、ショートフック気味に打つ場合が多く、後者はアップライトスタイルからアップライトスタイルに構える相手に向かって放つことが多いため、若干ロングフック気味に打つ場合が多い。
ショートフックも必要な技術だが、こちらは当たらないことも多い。
技術的に気をつけることは以下のことである。
まず、身体を左にひねって左足に全体重を乗せて後ろ方向に十分な溜めを作って、溜めの前方向への反発と、左足の伸び上がりを使って、肘を前および上方向に思いっきり押し出す。
そして、肘を押し出しながら、肘をカギ状のフックの形の90度に固定して、もちろん拳は握るが、水平にテーブルを雑巾がけするようなフォームで右側に思いっきり振り抜く。
肘は真上方向に、拳は間右方向に動くのが理想である。
なお、肘が拳の高さまで上がったら肘も右方向に動かすようにする。
打つ前は左ワキに力を入り、打った後はガードを固めている右ワキに力が入っている状況がベストである。
なお、肘が腕の外側に出ないようにパンチを打つこともモーションが小さくて速いパンチを打つうえで大切なことである。
打ち終わった際にも右足ではなく左足に体重が乗っているようにして、左足を返さないようにする。
そして、パンチの最初から最後まで左胸は前にせり出さないよう、オープン気味にならないよう気をつけるようにする。
もちろん、左フックを打つ際の右手のガードは完全に固めておかなくてはならない。
なぜかというと、左フックの相打ちというのが非常に多く、自分だけが相手に当てるためにはガードをしっかりすることが強く求められるからである。
あと、予備動作無しで出すのは難しいので、それができないうちはコンビネーションの中で使うべきである。
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身体を思いっきり左にねじる 拳を外側に膨らませない 肘の角度を横に変えていく
だんだん肘を水平に近づける ミートの瞬間は
肘を水平にするフォロースルー時も
ガードを忘れない -
先ほどは「打ち終わった際にも右足ではなく左足に体重が乗っているようにする」と書いたが、ショートレンジのフックの場合には右足に体重をシフトさせないとヒットしない場合も多いので注意が必要である。
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その際に右足に体重をシフトさせる場合には左足は当然ながら返す。
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また、左フックを打つ時に身体を左にひねると言ったが、左から左を打つときなどにそうする時間が無い場合もままある。
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そういう時に若干手を外に開いてスナッピーに手打ちすることとなるが、手を振りぬく前に肩を思いっきり前に出して振り回すように打つとそれは手打ちではあってもそれなりの威力を得ることができる。
なお、その際は胸が若干オープン気味になっても仕方ないかと思う。
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右フックはいわゆる「ケンカパンチ」で、おそらくまともに食ったときの破壊力は全パンチの中でも最強だろうが、これを当てられるようになるためにはタイミングをつかむための経験が必要になる。
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なお、右フックには何種類も打ち方がある。
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私の中ではだが、主なものに4種類あり、普通のかぎ状のフック、ワンテンポ速いオープンブロー的な打ち方、ロシアンフックとも呼ばれる先に肩を入れてあとで腕をオーバーハンド気味に振り回す打ち方、相手のジャブを左にかいくぐりつつ入れ込む右クロス気味な打ち方である。
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特に最後のクロス気味の打ち方はかなり有効で、この芸当ができるようになれば戦いの幅もグンと広くなる。
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ボディーフックは、正面に相手のレバーがあり、なおかつ腹に対して垂直に入るので右よりも左ボディーブローのほうが重要である。
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右手のガードを固めて身体を左下にひねりながら、ほんの一瞬だけ左手をオープン気味にして下げて、胸を締めるような動作でわき腹の横か後ろ側をスナッピーに叩くようにすると相手のレバーに効かすことができる。
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左肩を左にひねらずとも出せるという点においては左ボディーアッパーよりすぐれているが、インパクトはこちらのほうが弱いかもしれない。
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右ボディーフックは背中に当たる感じになるのでそれほどの効果は期待できないが、左側よりは右側のほうが手前側にあるので、近づきすぎた時にドサクサに打ってポイントを稼ぐことができるという意味では有効である。
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アッパーカット
アッパーカットは顔への右アッパーが最も有効である。
体重が乗りやすいことと、左フックとの相性が抜群に良いことが右アッパーが有効な理由である。
ワンツー・左フック・右アッパーのコンビネーションは個人的には最もすぐれたコンビネーションだと思うのだが、その際のフィニッシュブローであり決め技がこの右アッパーとなる。
技術的に気をつけることは、打つ際にスキは大きくなるが、拳を下げないと威力のあるパンチは得られないため、右の拳をおへその前ぐらい、もしくはベルトラインぐらいまで十分に下げ、足の伸び上がりに合わせて、肘の開きを70度ぐらいの角度にして上に向かって伸び上がるように放つことである。
なお、右アッパーは前傾姿勢の相手や自分より背の低い相手に特に有効である。
かなりの上級者になれば顔への左アッパーも使えるようになったほうが良いが、左アッパーは体重を上手くパンチにのせるのが至難の業で、ジャブや左フックとのダブルで打つのが有効なのだが、こうなると余計に体重をのせるのが難しい。
しかし、左アッパーを使いこなせるようになれば攻撃の幅は一気に広がる。
イメージとしてはスコップで穴を掘って土を放り投げる際の左手の動きを参考にすると良い。
ボディーへの左アッパーはボディーブロー全体の中ではかなり有効なブローである。
打つ場合、右のガードを固めつつ上体を左に倒し、右肩下に左拳を隠しこむんで、下からボディーに向かって突き上げるように打つ。
標的はレバーでもみぞおちでもどちらでも良い。
右ボディーアッパーはジャブのカウンターとして当たりやすいが、背中側に打つため、あまり効かないことが多いということを留意しておきたい。
威力を出すために腕は下げる 拳を内側に絞りながら上げる ミートの瞬間は拳に力を込める
オーソドックス(自分)対サウスポー(相手)の場合のパンチ技術
ストレート
相手がサウスポーの場合は右ストレートが最も有効である。
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フック
- 相手がサウスポーの場合は、左右フックどちらも有効である。
- ボディーへの右フックはかなり有効である。
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アッパーカット
- さしたる違いはない。
- しかし、ボディーへの右アッパーはかなり有効である。
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