実は、このシリーズ、まだまだ続きます。
参議院について
日本の議会制度の問題点としてよく挙げられることには、第二院である参議院の力が強すぎることがある。
参議院が法案を否決したら、衆議院があおりをくって解散を食らうだなんて、もはや参議院は衆議院以上の力を持っているといっても過言ではないだろう。
しかも、衆議院が改選したからといって郵政法案が再び参議院を通過するとは限らないわけだからやっかいである…。
執行部の権力に屈するという形で投票行動を変える人が現れない限り通過しないというすごい事態なわけだわな…。
今回の場合、衆議院で自民党が勝って、小泉首相が続投しても、また参議院で否決されれば郵政法案は廃案になってしまうわけで、参議院の力たるやちょっと考えられないほどのものがある。
また、仮に今回、民主党が政権を取ったとしても、衆議院を通した法案が参議院でことごとく否決されることが簡単に予想できてしまうからこれまたやっかいである。
つまり民主党政権というのはほぼ完全に実行力を制限されることになるわけですな…。
ところで、これまでは青木氏を中心にいざとなれば一つにまとまるという結束力が参議院および青木氏の力の源泉であり、参議院の扱いやすさだったのだが、そのタガが外れてしまって制御不能に陥っているから大変である…。
昔はそうでもなかったと言われるが、もはや参議院は大局的・長期的な立場で国家の行く末を考える議会ではなくなっているのだ。
やはり、このように参議院が強すぎるのには問題がある。
衆議院と参議院の採決が違った時に今回のような政局にまで発展せずに済むような制度的工夫が必要だと私は思う。
一応、参議院が否決した時には衆議院において3分の2以上の票を獲得すれば採決されることになっているが、3分の2を獲得できる議会勢力が現れることが民主主義国家において健全な姿とは思えないし、それが続くことはなかなかないだろうから、この決まりは修正する必要があるように思う。
あと、両院協議会にかけるという手も残されてはいるが、「両院協議会を開いても意見が一致しないときは、“法律案以外”は衆議院の議決が国会の議決となる」ということになっていることには問題があると思う。
つまり、予算・条約・内閣総理大臣の指名などについては衆議院の優越が認められているわけだが、法律案については衆議院の優越が認められていないので、意見が一致しないときは廃案になるということである。
私は法律案についても衆議院の優越性を認めても良いのではないかと思う。
まあ、そうなってしまったら、参議院には事実上何の権力もなくなってしまうことになるわけだが、それで構わないのではないかと思う。
そもそも、私個人としては、ニ院制というシステムそのものが必要ないと思っていることもあるのだが…。
ちなみに、世界には二院制の国より一院制の国のほうが多く、それでも立派に成り立っている国は多いのだし、成熟した民主主義社会において議会の暴走なんてものは考えにくいので、それならば意思決定はできるだけ迅速なほうが良いといえると思う。
ただ、大国には二院制の国が多いが、どの国もどちらかの力がかなり小さい。
政治は選挙制度に左右される。
議員の行動は選挙に通るための行動にせざるを得ない部分がかなり大きいからである。
ところで、現在の参議院と衆議院の選挙制度は似たりよったりなものだが、参議院の選挙制度では中選挙区的な選挙区と全国的な比例代表制度を適用しているため、参議院にはよりバラエティーにあふれた人物が集まりやすくなっているといえる。
また、非拘束式というシステムを用いているため、民意をきちんと反映できはするようにもなっている。
しかし、その結果というと、業界団体代表的な候補やタレント的な候補ばかりが当選するという皮肉な結果に終わっているのが現状である。
まあ、タレント候補のほうは全く悪いとは思わないのだが、業界団体の代表が数多く選ばれるとどうしても天下国家を論じることができなくなってしまう。
国会議員が地方の利益の代弁者の集まりであることが理想的な姿とはとても思えないのだが、こうやって考えると、やはり以前に述べた通りで小選挙区制に勝る選挙はないということになるのかな~。
などということから考えても参議院はいらないように思う。
さすがに今さら廃止することはできないにせよ、衆議院の優越をよりはっきりさせる必要性はかなりあると思う。
しかし、問題はそれを実現する方法が全く思いつかないことである。