今日のボクシングはすごかった。
WBAミニマム級タイトルマッチでは、新井田豊選手が技術と精度の高いボクシングで頑強なコリアンファイターを圧倒した。
接戦のようにみえるという人もいらっしゃるかもしれないが、私の中ではあれは圧倒といって良い内容であった。
この前の高山勝成選手の試合と同様、おそろしくレベルの高い試合だった…。
これでミニマム級におけるWBA・WBCの両ベルトを日本人が所持するという状況は続くこととなったのだが、この前WBCチャンピオンの高山選手といい、前々王者のイーグル京和選手といい、日本ではミニマム級の選手にばかり異様に強い選手がいるのは何故だろう…。
そして、WBC世界バンタム級タイトルマッチでは、長谷川穂積選手が、まさか、14回もの防衛歴を誇る不敗王者のウィラポン・ナコンルアンプロモーションを破った。
まさか、あのウィラポンが破れるとは夢にも思っていなかっただけに今日の王者奪取劇にはかなり驚かされた…。
計量2度目でパスしたものの減量に失敗したからか、調整不足だったのか、年齢的な衰えのせいかはわからないが、明らかに今日のウィラポンの調子は悪かった。
しかし、序盤は接近戦が得意なウィラポンをアウトボクシングで翻弄し、相手のスタミナが切れてきた終盤には接近戦での壮絶な打ち合いを制し、文句のない内容だった。
中でも、あのウィラポンのジャブ的な右・ストレート的な右という驚異的な右をほぼ完封してみせたのは圧巻だった。
私は、「黄金のバンタム級のベルトの価値はその周辺の階級より重い」と思っていたし、不敗王者のウィラポンを破ってのベルトはそんじゃそこらのタイトルより断然価値があると思った。
でも、オイラはムエタイで3階級を制してボクシング界に転向した後も伝説的な王者として君臨し続けたウィラポンのことも好きだったのでちょっと悲しいかも…。
ところで、テレビではカットされたが、試合後、辰吉丈一郎選手がリングに上がりこみ、ウィラポンの手を取ってリングを旋回し、一緒に退場したらしい。
映像を見ていないから何ともいえないが、ちょっと新王者を侮辱しているというか、やりすぎなのではないかと思った。
確かに、辰吉選手がボクシングを続けているモチベーションはウィラポンを倒すことの一点にあったわけで、その王者が敗れたのだからやり場のない気持ちがそうさせてしまった部分もあるのであろう。
しかし、辰吉選手にあこがれてボクシングを始めた王者もさすがに呆れたであろう。
ずっと負けが混んでいた日本人の世界戦だが、最近は勝ち試合が多くなってきたのでとてもうれしい。
最近は斜陽気味になっているボクシングの人気に再び火がつけばなあ…と強く思った。
やはり、ボクシングには、あらゆる技術を身につける必要がある総合格闘技などにはない洗練された芸術性を感じるのである。
しかし、最近起きたこのニュースだけは忘れられない…。
4月3日のタイトルマッチでTKO負けした後、意識不明の重体に陥っていた前日本スーパーフライ級王者の田中聖二選手(金沢)が15日午後8時43分、大阪市の国立病院機構大阪医療センターで死亡した。
28歳だった。
日本ボクシングコミッションによると、日本でプロボクサーが試合中のダメージが原因で死亡するのは、36人目となる。
田中選手は、3日に大阪市IMPホールで行われた同級タイトルマッチで名城信男(六島)と初防衛戦を戦った。
激しい打ち合いの末、最終10回57秒にTKO負けした。
試合後は自力で歩いていたが、控室で嘔吐するなど症状が悪化。
その後、大阪医療センターに運ばれて急性硬膜下血腫と診断され、7日には開頭手術を受けていた。
所属ジムの金沢英雄会長によると、田中は15日午後7時ごろ、容体が急変。
意識が戻らないまま、今年1月に結婚した夫人や会長、同じジムの徳山昌守ら関係者にみとられて息を引き取ったという。
田中選手は私と同じ年だ。
今日の世界戦の結果を見て、「ボクシング最高!」って思いたかったけど、気が重い。
お亡くなりになったご本人はもちろん、ご両親や新婚の奥さんなどのご家族や、徳山昌守選手をはじめとする関係者の気持ちを思うと強くいたたまれない気持ちになる…。
そして、田中選手は新王者の長谷川選手の練習相手だったとのことである…。
ボクシングの放つあまりに大きな光と影の部分を見せつけられた気がする。