GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

2018年秋時点における外交の難題を整理すると…

今の日本のおける外交全般について考えると、以下のような事項を両立させる必要があるように思うが、両立させるのが実に難しい難題ばかりである。

 

  • マクロ経済学的に貿易赤字は一概に悪いものであるとはいえず、基軸通貨を発行する国にとってはなおさらそうなのだが、アメリカの貿易赤字を悪いものであると見なすトランプ政権から日本が関税をかけられたり、為替相場への圧力を受けないよううまくいなす必要がある。

  • 過去の大戦後の反省に立って人類が生み出してきた知恵である国際協調・自由貿易・多国間主義といった秩序を覆し始めたトランプ政権を怒らせないよう対応する必要はあるが、失脚や選挙での敗北の可能性もなくはないうえ、秩序を重んじる立場に立つ必要性があることおよびアメリカ以外の国々との関係を考えるとトランプ政権に肩入れし過ぎないことも必要である。

  • 考えられないようなことをするサウジアラビアや、アメリカと全面対決をしているイランは、日本における生命線を握る資源である原油を輸出する国だが、国際社会の中において距離の取り方に細心の注意を払う必要がある。

  • アメリカと中国の関係悪化から漁夫の利を得ることを考えなくてはならないが、中国と距離を縮め過ぎたり、手助けし過ぎてトランプ政権を怒らせないようにする必要があるし、かつ、中国と敵対し過ぎて中国を怒らせないようにする必要もある。

  • ヘゲモニーをめぐる闘争という理由以外において、アメリカが中国に貿易戦争を仕掛けた理由には、中国側が自由資本主義国と異なった慣行で経済運営をしていることや、国家レベルで知的財産権を簒奪しまくっているということがそもそも論としてあるわけであり、日本としても中国によるサイバー活動・スパイ活動・知的財産権侵害などを強く牽制する必要がある。

  • 尖閣諸島を巡る中国との軍事的なせめぎ合いにおいて、お互いに武力行使を伴わず、かつ、領土侵犯を許さないという難題を両立させる必要がある。

  • 日本の安全保障・東シナ海尖閣諸島の防衛在日米軍普天間基地の移転を日米安保条約と第6条に基づく日米地位協定に則りつつ、かつ、選挙で示された沖縄県の民意等を推し量りながら適切に成し遂げる必要があり、これも相当な難題である。

  • 北朝鮮拉致問題の解決を図るために一定のプレゼンスを示す必要があるが、それが未来の国交正常化時における戦後賠償金であるというのはなんともはやという気もする。

  • 間違っても、北朝鮮大陸弾道ミサイルを放棄する代わりに核保有を認めるというあり得ないディールをトランプ政権が行わないように釘を刺し続ける必要がある。

  • ロシアとは北方領土の帰属交渉という難題があるが、ロシアと敵対しているヨーロッパ諸国やアメリカの目を気にする必要もあるので、ロシアとの距離の取り方には細心の注意を払う必要がある。

 

さほど難題とはいえないのは以下の事項ぐらいであろう。

 

  • 安倍首相が訪欧から帰国したが、ヨーロッパとFTAより包括的かつ高度なEPAを通じて、より連携を強化することは実利面および国際秩序形成面においてものすごく重要なことである。

  • イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドといった英連邦諸国とTPPによって連携を強化することも実利面と国際秩序形成面において重要なことである。

  • 安倍首相が提案した日米豪印戦略対話で結ばれたアメリカ・オーストラリア・インドの3ヵ国と、中国の一帯一路および軍事的拡大に対する包囲網を強める必要があり、この包囲網は東南アジアや太平洋やインド洋諸国に対する中国の介入を牽制するのにも資する。

  • 世界中の新興国・途上国に対して、中国の一帯一路に対抗するプレゼンスを示す必要がある。

  • 韓国と価値観を共有するとうたいつつも、理不尽な要求には毅然とした対応を取る必要があるが、韓国は外交や経済においてさほど影響力がない国であるがゆえに扱いやすく、多少強く出ても大丈夫な国でもある。

 

これらの問題を対立相克なしに進めることは不可能であり、ケチをつけようと思えば誰にでもケチをつけることはできることなのだが、安倍首相は良くやっておられると思うし、安倍首相と河野外務大臣のコンビより上手くやれる政治家は簡単には見当たらないように思う。

 

それでも安倍首相にとって、憲法改正社会保障改革・消費税増税をしつつのデフレ脱却・金融緩和政策の出口模索といった難題と比べれば、外交は得点を重ねやすい項目であり続けているのだから驚くほかない。

なかなか光ることを主張することが多い日本維新の会以外の野党には、スキャンダル追及よりもこういった数々の難題に対して、与党を上回る現実的な対案を出すことによって政権担当能力があるということをアピールしていただくと政権の選択肢として考えることができるようになるのではないかと思う。

 

以下余談。

五反田の地面師事件の物件は、大学生の頃に住んでいた五反田のマンションから目黒川を挟んですぐのところにある物件で、存在を知っている物件だっただけに驚いた。

 

ヘルシンキスオメンリンナの要塞