GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる48歳仙人のつぶやき

K-1 WORLD MAX 2007 世界一決定トーナメント 決勝戦 [2007/10/3]

 

各試合ごとの感想

1回戦 ○魔裟斗 VS ●ブアカーオ・ポー.プラムック (判定3‐0)

見事な勝利だったっすね…。

番組の冒頭に放送したから「まさか!」とは思ったけど、本当にそのまさかでしたね…。

ブアカーオ選手を攻略するためには前蹴りやミドルキックをもらわない距離にいることが大前提となるわけだが、魔裟斗選手は身体ごと入れ込むような伸びのあるストレートを起点にして徹底的に接近戦でのパンチの打ち合いに持ち込むことでそれを成し遂げることに成功した。

手を遠ざけてアップライトに構えるムエタイ選手が苦手とする右アッパーが有効だったのは言うまでもないが、モーションのない右ストレートはダウンを取ることに成功したことからしてもかなり有効だった。

魔裟斗選手のあのモーションのない右は昔から本当にいいと思ってきたが、この日は今までの中でも一番良かったような気がした。

確かに、ブアカーオ選手はパンチも強くなったし、去年は戦慄ともいえるようなシーンを再三パンチで作り出したが、「威力を殺してでもモーションを小さく速く打つ」というボクシングの理論体系から外れたパンチであることは間違いない。

拳を固めて硬直させた腕を当てにいくという徹底的に威力を重視した打ち方は、例えば五味隆典選手のように特別に上手い選手以外のほとんどの総合の選手が使う打撃理論でもあり、こういうパンチはとにかく威力があるから確かに怖いのだが、これでパンチのみの対決を制することができるのであればスピード重視でモーションを小さくまとめるボクシングの技術体系が否定されることになってしまうわけだ。

私事だが、私もボクシング理論とは違う技術体系のパンチが得意で、ある程度までのレベルの相手であればこのやり方で圧倒できるのだが、やはり速いパンチを打てるホンモノの選手が相手だとズラシだとかフェイントが通じず、こちらもジャブとスピード重視の正攻法で戦わざるを得なくなるわけで、ブアカーオ選手も3Rに打つ手がなくなったのはそういう状況に陥ったからなのかもしれない。

ブアカーオ選手を攻略するには徹底的にパンチの技術とスタミナを鍛えて相手を凌駕するという魔裟斗選手の作戦は見事に的中したわけだ。

ただ普段はあまりローキックを蹴らないムエタイのブアカーオ選手があそこまで執拗にローキックを蹴ったのは、それは魔裟斗選手が徹底的に距離を詰めにきたからであり、左足に思いっきり体重を前にかけてパンチを打ってきたからである。

まあ、魔裟斗選手のやり方は、前蹴りやミドルにはローリスクでもローキックにはハイリスクだったわけだ。

確かに、そもそもローキックのイメージが強くないブアカーオ選手があそこまでローキックを蹴ってきたのが誤算だったであろうとはいえ、たとえ誤算があってもその試合ぐらいは乗り切ることができるであろうという魔裟斗選手のリスク計算が初めからあったであろうということも間違いなかったのであろう。

あの猛烈な走りこみはスタミナの他に太ももの強化という目的もあったのでしょうな…。

 

1回戦 ○アルトゥール・キシェンコ VS ●マイク・ザンビディス (延長判定3‐0)

他の試合と比べてあまりに地味な組み合わせのため、ほとんど興味のない試合だが、キシェンコ選手には身体が柔らかくてバランスが良い・ガードが固い・目が良いという長所があって、パンチがあまり速くないという短所があるように思った。

 

1回戦 ○アルバート・クラウス VS ●佐藤嘉洋 (判定3‐0)

内容の良い試合だったが佐藤選手が負けてとにかく残念。

でも、3Rは明らかに取られたから仕方ない。

佐藤選手は誰よりも射程の長いジャブとストレートを持っているわけで、1Rはちゃんと伸びた腕の拳の先が相手に当たっていた。

接近戦でもうまくヒザが出ていた。

しかし、クラウス選手がだんだんと圧力を強め、それに対して自分の距離とペースを保てなくなったのが敗因となったのかもしれない…。

まあ、佐藤選手の敗因はいつもそれなんだけど…。

 

1回戦 ○アンディ・サワー VS ●ドラゴ (2RKO・右フック)

ナチュラルなフィジカルの強さではMAXで1位と2位の両者の試合だが、テクニック的には大したことなくてもゴリラのようにガンガン攻めてくる丈夫なドラゴ選手を完全にKOしてしまうサワー選手の極めの強さとテンプルをかすめる右クロスには脱帽っす。

 

準決勝 ○魔裟斗 VS ●アルトゥール・キシェンコ (2RKO・左フック)

両者のレベルが明らかに違うのは試合前からわかっていたことだが、いかんせん足を痛めている魔裟斗選手は左ローキックを起点に攻める。

まあ、相手の身長が高く、足もあまり長くない魔裟斗選手としては序盤の戦い方としてはセオリー通りだったともいえる。

2Rにパンチの打ち合いに持ち込んだが、これまたボクサーのようにモーションの小さい返しの左フックでKO。

あの左を打てるキックボクサーは他にいないよな~。

でも、試合後に明らかに足を引きずっていた魔裟斗選手が決勝のリングに上がれるのかすら心配になりましたわね…。

 

準決勝 ○アンディ・サワー VS ●アルバート・クラウス (判定2‐0)

因縁の対決だが、地味な対決でしたな~。

クラウス選手はローキックのダメージが大きかったせいか、ガンガン前に出てごまかしも含めたパンチで健闘したが、一発一発や上下の打ち分けはサワー選手のほうが勝っていたわけでまあこんなところでしょうな…。


決勝 ○アンディ・サワー VS ●魔裟斗 (2R終了後タオル投入)

明らかにローキックのダメージのある魔裟斗選手は捨て身の突貫攻撃を仕掛けるが、これがなかなか良い具合にポイントとなっていた。

相手が明らかに足を痛めているとわかっていたのかいなかったのかはわからないが、ローキックをあまり蹴らずに打ち合うサワー選手が紳士に見える。

しかし、2R終了後に完全に足を引きずって、仮に3Rを戦ったなら無残な姿をさらすことは火を見るより明らかだと危惧していたら、自ら棄権。

これまで完全なKOで一度も無残に負けたことのない魔裟斗選手の美学がそこにあったのだと思う。

まあ、ブアカーオ選手に完勝したという充足感がなければそれもなかったのだろうが…。

アンチ魔裟斗の人間に何も言わせなくする魔裟斗選手の実力と努力には本当に毎回感心するが、今回も大きな感動をファンに与えたわけで、ファン的にも興行的にも番組的にも良かった良かった。

ダイナマイトで再戦かな?

 

バンコク市内のジム