GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

売値の設定は商売の原点

少し前に獺祭の蔵元の旭酒造が「お願いです。高く買わないでください。」という広告を出したようだが、確かにそんなに高く卸していないものをどこかで高くで売られていたら腹が立つだろうとは思うものの、百貨店内の店舗ですら高く売っていたというし、希少性があるがゆえに高く売れるならば最初から高く売れば良いのにと思う人も多いと思う


もちろん、その商品のブームが去った時や日本酒というものの一般的な価格等を勘案して値付けをしているのだろうが、酒好きでないため酒の話は全くわからないものの実に日本的な話だと思った。


ロマネコンティのようにとんでもなく高いワインもある気がするのだが、そういうふうにはいかんのかねと思った。

しかし、広告代理店もPR効果をきちんと考えて広告を打ったのだろうが、そういった視点でいえば、良心的な蔵元であることをこれでもかとアピールでき、かつ、ブランドの価値をさらに高めることに大成功したのではないかと思う。

高く売ればいいのにと思いつつも、そのような意味では買う側にありがたく思わせるPRの成功例ともいえると思った。


特に発展途上国などを旅した際には、モノ・サービスの値段が逐一交渉で決まることが多い。

これは面倒だから大嫌いなシステムなのだけど、売り手は少しでも高く売りたいと思い、買い手は少しでも安く買いたいと思い、交渉によって売買をなすというのは商売の原点である。

売り手は「コイツはどれぐらいのカネを出せるか、持っているか、ボレそうか」といったことを見極めようとする。

買い手には価値を見極める目と、タフな交渉力と、交渉してまでそれを欲しいと思う情熱が必要で、それらがそろってこそ妥当な価格でモノ・サービスを手に入れられるという仕組みとなっている。


先進国におけるBtoCの売買行為は、便利で効率的な値付け式にすっかり切り替わってしまったが、表情や口調を織り交ぜて、時にはしょっぱい気持ちになりつつタフに交渉をして欲しいものを手に入れる行為を通じて本当の意味での商売の原点とはなんたるかについて旅人は学ばされるわけである。


向こうから10倍の値段を吹っかけてきて交渉がスタートするパターンならまだ良いが、「おまえはこれをいくらなら買う?」と聞かれてスタートするパターンだと、価値があまりわかっていないほうとしてはどう答えるか臆してしまう面もある。

逆に、ネパールに住むチベット族の人とは日本の100円ショップで買った懐中電灯だのライターだのと、ラピスラズリやガーネットやヘマタイトのアクセサリーを交換したという、向こうから物々交換を持ちかけられたにせよちょっと申し訳ない思い出もある。


余談だが、このシステムは面倒なので大嫌いだけど、そうやってタフな交渉をすることで売り手とだんだんと打ち解けるし、タフな交渉で決まった瞬間はお互いに味のある含み笑いをして互いの健闘を認め合うという小粋な部分もある。

また、お互い暇なこともあって色々と話をすることになるところまで仲良くなるというのも良くあることで、こういう部分は交渉制の国を旅する醍醐味であり、スマートに旅ができてなかなか誰とも仲良くなれないままに終わってしまう先進国の旅にはない思い出を数多く残してくれる。


とはいえ、若かったからタフに交渉をがんばっても許されたわけで、ある程度の年齢になって、かつ、日本人という時点で明らかにこっちにはカネがあるわけだから、あんまり粘ってもしょうがないと思うのだが、これまた、次の旅人のことを思うとあまり高値で手を打つわけにもいかず、どのあたりで手を打つか考えるところもある。


実際、BtoBでの営業マンだとか築地の仲買人がやっていることはこれと同じで、お得意度、ロット、将来性等々を総合的に判断して顧客によって全く違う値付けをしているのではないかと思う。

俺は営業職をやったことがないが、一般的な会社が見積を作る時には顧客の予算や時期によって金額を調整していることぐらいは人と話していてわかる。

例えばの話だが、Amazonが商社レベルのBtoBの大口取引に殴り込みをかけて、いちいち交渉をせずに最安値と効率を追求したサービスを提供した挙句に多くの営業マンが職を失うというような事態はあってもおかしくないように思う。


これも個人的には好きではないが、「せどり」という転売ビジネスは副業の代表選手とされる。

ダフ屋は別の理由で取り締まられるが、せどり転売は取り締まられない。

株式のデイトレードなどもせどり転売と同じようなものだろう。

もちろんデイトレーダーがたくさん集まることで市場に厚みが出るのでそういう意味では存在価値はある。


これらのように、安く買って高く売るのは商売の原点である。


日本製も含めて多くの化粧品の原価はパーセンテージで一桁だし、ヨーロッパのブランドなどぼったくりの芸術的体系といえるものだ。

俺の視点ではこうしたブランドビジネスも転売ビジネスも似たり寄ったりだと思っているが、両方とも商売の原点だろうと思っている。


俺はドケチなので、噛んで味わえる食べ物ならまだしも、飲んで無くなる飲み物にはどんなに価値があろうと高いカネを払いたくないし、悔しいから転売品には絶対に手を出さないし、企業のブランド料にはびた一文払いたくないと思って生活しているが、株や通貨の高値掴みはたまにやっちゃってま~す。

 

商人とは一対一の真剣勝負