GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

言い過ぎるとブーメランになる

ネット上のコメントやTwitterなどを見ていると、口汚く罵るコメントが多いが、怒りは新たな怒りを作るし、口汚いことを言うと自身の品格にも悪影響を及ぼすと思うので、俺も本ブログに書く際にはできるだけそのようなことのないように気をつけているつもりである。

最近の俺はこういうことばかりを言っているが、世の中には「ボロクソ言うあんたはそんなに偉いのか」と思うことばかりである。

 

明日のボクシングのタイトルマッチでは、比嘉大吾選手が計量の結果で900gオーバーで日本人初の体重超過によるタイトル剥奪となったようである。

体重超過といえば、山中慎介選手対ルイス・ネリ選手の因縁の試合が記憶に浅い。

ルイス・ネリ選手は1回目のタイトルマッチではドーピングで引っかかり、2回目のダイレクトリマッチでは再計量後に1.3kgの体重超過だった。

前回の山中選手とのタイトルマッチは確かに後味の悪いものだったが、俺はネリ選手に対する試合後の各方面からの異常なバッシングについて強い違和感を持っていた。

具志堅会長は1年前の比嘉選手とファン・エルナンデス選手の試合でエルナンデス選手の体重オーバーにも激怒されていた。

今回はブーメランとなって返ってきたかたちでもある。

 

山中選手とネリ選手の1回目の試合でネリ選手が勝ったのはドーピングのせいだという論が多かった。

また、大和心トレーナーの棄権が早すぎたという意見も多かった。

あの試合では大和トレーナーがタオルを投げ入れてもレフェリーが気づかず、大和トレーナーがたまらずリングインをして棄権となっただけに試合に対する後味は悪かった。

山中選手が「自分としては大丈夫だった」と言いつつ、「セコンドを心配させてしまった」「トレーナーを責めることはない」と言ったのは悲しくもいい話だと思った。

自分自身も元東洋太平洋王者だった大和心トレーナーは長年に渡って山中選手をバックアップしていて、誰よりも山中選手の負けを認めたくなかったことは想像に難くない。

また、過去に辻昌建選手が試合後に急性硬膜下血腫で亡くなった試合の際にセコンドについていたのが大和トレーナーで、この試合ではその経験が生きたのだろうと思った。

しかし、世間もそうだったし、帝拳プロモーション陣営もそうだったし、帝拳の本田会長も激怒していたが、当時の大和トレーナーに対するバッシングはすさまじかった。

確かにドーピングに引っかかるのは許されないし、数日間引きずるほどに山中選手のTKO負けが悔しかったが、俺はネリ選手はとてつもない強さを持った選手だと思ったし、大和トレーナーの棄権も上に述べたような理由で妥当だと思った。

 

ネリ選手のドーピングについては結局はWBCは不問にするという判断を下したようだし、2回目のリマッチでネリ選手がドーピングに引っかかったという話は聞かないが、今度はネリ選手への人格批判の嵐が日本中に吹き荒れた。

確かに体重超過は許されることではないが、2試合ともネリ選手が完全に圧倒したという事実は受け止めねばならず、これを全て体重超過のせいにしてしまったり、態度や人格への批判にしてしまうのはどうなのだろうかと当時思った。

また、ネリ選手の態度がナメた態度だったこともあるが、老獪な中南米の選手の態度にいちいち腹を立てていたらキリがないだろうとも思っていた。

 

ネリ選手の体重がどうしても落ちなかったかということはさておき、人間である以上はどうしても落ちない減量苦というのもあるわけで、俺はそこに対するルールの未整備ぶりこそが責められるべきだと当時強く思った。

 

ところで、長年見てきて思うのだが、ボクシング選手には、ある時から急に衰えてしまうことがあるように思う。

長谷川穂積選手フェルナンド・モンティエル選手との試合で11回目の防衛に失敗した試合を生観戦した際にそう感じ、長谷川選手はその後2度にわたって王座を獲って3階級制覇を遂げてから引退するのだが、長谷川選手の挑戦の価値は引退まで全く落ちはしなかったものの、長谷川選手がまばゆいばかりに輝く試合をしたのはこの試合までだったと思う人は多かったのではないかと思う。

山中・長谷川と言えば内山高志選手は外せないが、ジェスレル・コラレス選手との試合になって急に輝きを失ってKO負けし、ダイレクトリマッチでも判定負けして引退した。

山中選手がクリスチャン・エスキベル選手に勝って戴冠した試合を生観戦してからずっと山中選手の試合には魅了され続けてきたが、その山中選手も前々回の試合で急に衰えた感があった。

頂点でせめぎ合う世界ではわずかな衰えがそういった残酷な結果を呼び起こすものなのだと思う。

 

前回の山中選手とネリ選手の試合後に、「なんらかの対策を講じる必要はあるだろう」とこれでもかと論じられてきた。

一番簡単なのはアマチュアのように失格にして試合を中止にしてしまうことだが、チケットを売ってしまっているプロスポーツではこれはなかなか取りづらい。

ならば別の手を打つ必要があるのだが、先日に行われたK-1では、卜部功也選手と対戦したウェイ・ルイ選手が体重超過となり、ハンデとしてグローブが8オンスから10オンスに変更され、しかも減点1かつファイトマネー20%減額での試合というすさまじいハンデでの試合となったが、これが平等かどうかはさておき、こういった手を打つ必要はあるだろうと思う。

巨額の罰金でも、全ファイトマネーを相手に渡すでもいいかもしれない。

そうでないと、どうしても体重が落ちない場合に打つ手がなくなるように思う。

 

ところで、減量はしんどい。

正直、試合よりもしんどいかもしれない。

俺もキックボクシングの試合で体重が落ちずに苦しんだことがある。

何故かその時だけ体重が落ち切らず、強引に汗をかいて落としたのだが、計量の前の夜は喉が渇いて眠るどころではないわ、唾液が出ずに口の中が吸盤のように張りつくわで徹夜をして計量当日を迎えた。

計量は無事にパスをしたが、脱水症状で38度の熱が出た。

あの晩のしんどさはいまだにトラウマとなっている。

 

減量で脱水症状を起こして亡くなってしまうという例はあしたのジョー力石徹だけの話ではない。

落ちないものは落ちないわけで、多くの場合は死ぬまではいかずとも試合前にドクターがストップをかけて試合自体が中止になることが多いように思うのだが、さまざまな観点から階級制スポーツというものについて考えなければならないと思う。

もちろん、大相撲が体重無制限でいいのかということも含めてである。

 

さて、「ネリは永久追放だ!」と息巻いていたマスコミや世論が今回、ネリ選手に対するのと同じぐらいに比嘉選手のことを非難しないのであれば俺は納得できないが、同時に比嘉選手が非難されるのも見たくない。

 

世の中はブーメランになりそうなことばかりであり、今の世の中は、いたるところにログが残る。

意見を言う時に、口汚いことを脊髄反射に言わなければブーメランを浴びずに済むし、相手の怒りを発生・増幅させずに済むのだから、人は相手を慮るやさしさと知恵を持って生きるべきだと思う。

 

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