今回の相撲の事件ほどあまりに論点が多すぎて、かつ、政治や宗教の話題でもなく、あーでもないこーでもないと楽しめる話題もそうそうないだろう。
本来の論点は暴行事件への対応だけなのであるが、実際はそうはなっておらず論点がバラけまくっているように思う。
これだけ論点があれば国民総評論家状態になっても仕方ない。
外国出身力士の事件とはいえ、日本で生まれ育った者にしか理解し得ない、文化的に極めて閉じた議論であり、相撲という曖昧なこと極まりなく、見方によってはキワモノにも見える世界について論じるのだから楽しいといったらありゃしないわけである。
そこで、一体どれだけ論点がバラけているのかについて、思いつく限り列挙してみることとした。
先にも述べたが、国民総評論家状態になっているはずなので、いちいち論評するのは野暮なため、あくまで論点を列挙をしただけなのだが、その論点の多いこと多いこと。
なお、俺は6年前に、そもそも相撲を15日連続で取ると身体が持たないと書いており、興味があれば是非とも下の記事を参照していただきたい。
それにしても、当事者の日馬富士と貴ノ岩とは関係ないことばかりが論点として思い浮かんでしまった。
しかし、相模原や座間の事件のように口にするのも気分が悪くなる事件とは違って、怪我人は出たにせよ死者が出たというわけではないという意味でも一般評論向けの話題である。
社会論
- かわいがりや暴力や体罰の可否。
- 同郷の先輩が後輩を説教することの可否。
- 愛のムチというもの全体が今の日本社会で許されるかどうか。
事件論
- 日馬富士の暴力事件そのものの刑事事件の扱い。
- 事件の真相に関して色々なニュースが飛び交ってきたなかで相撲協会の見解がやっと出てきたが、公式記録となるべきであろう警察の発表はまだないと思う。
- 後になって、ホステスの自転車を無理やり取って乗ってコケて、ホステスを責め立てたというろくでなしなニュースまでも出た。
組織人論
- 貴乃花親方が組織への報告と刑事事件として黙秘のどちらを優先すべきだったかのコンプライアンス論。
- 貴乃花親方の巡業部長としての職務をきちんと果たしたかという話。
- 他の部屋の力士とのつき合いをどうするか、仲良くするのを許すか、他のスポーツではどうか、一般社会におけるライバル企業の社員との交流はどうかといった組織論や勝負論。
組織の体質論
- 相撲協会の事件対応は妥当だったといえるか。
- 相撲協会は過去の時津風部屋暴行死事件の教訓を活かせているのか。
- 相撲協会の危機管理委員会で出ている意見等はフェアといえるのか。
- 相撲協会にはまだ隠ぺい体質があるのか。
- モンゴル勢は好き放題にやっているのか、やっているとすれば実績に免じてそれを野放しにするのかどうか。
貴乃花親方論
権力闘争論
- この事件と相撲協会理事の権力闘争との関連はどうなっているのか。
八百長論
モンゴル人国民性論
- 「モンゴル会」力士における上下関係や互助関係はどうなっているのか。
- モンゴル人力士の団結の程度について。
- もっと言えばチンギスハーンの国における風習や無言の掟はあるのか。
- 朝青龍がやっていたように、目をつけた力士への出稽古での荒技を仕掛けてケガをさせる行為をモンゴル勢は執拗に行う傾向にあるのか、そもそもモンゴル人は陰湿もしくは手段を選ばない傾向にあるのか。
- 日馬富士の兄貴分の朝青龍は旭鷲山のベンツのバックミラーをへし折り、日馬富士は今回の事件を起こしたが、こういう大人げない行為はこの二人だけの特殊な話なのか。
- モンゴル国内での世論の盛り上がりについて。
- 引退した旭鷲山や朝青龍のモンゴル国内での影響力が何故にこれほどにあるように見えるのか。
- 日本人や他国の力士にも「モンゴル会」のような互助会的な組織はあるのか。
マスコミ論
- 真相が明らかになっていないままマスコミは好き放題報じていないか。
- マスコミはきちんと裏をとって報道しているといえるのか。
- 旭鷲山や藤田紀子氏まで追いかけるマスコミの矜持について。
- なんでもかんでもおもしろがって報じるマスコミとそれをおもしろがる国民論。
文化論・品格論
- 先輩への礼儀礼節というが、逆に先輩ならどこまで無礼が許されるのか、これは儒教的な側面なのか、日本人的な側面なのか、モンゴル人的な側面なのか。
なお、個人的には礼儀礼節の強要は大嫌いである。 - そもそも相撲が神事なのかスポーツなのかすら曖昧だがこれをどう切り分けるか。
- 日本の武士道精神やスポーツマンシップと相撲の取り口について。
- 横綱の品格といったあいまいなものをどう論じるか。
- 白鵬の先日の物言い、万歳三唱、貴乃花巡業排除発言は許されるか、白鵬の横綱としての品格の論争。
- 最近の白鵬が頻用する強烈な張り手からかちあげ肘打ちのフックアッパーコンビネーションがあまりにも酷過ぎると思うが、これは横綱としてアリなのか。
健康論
- 相撲は身体への負担が大きすぎるというホリエモン発言をどう論じるか。
これは僕が6年前に書いたのと同じ内容でもある。 - いくらなんでも土俵が高くて、あそこから落ちるのは危険すぎるように思うがどうか。
- 八百長をしないと身体が持たないのか、ルールを守っていたら健康を大きく害するのかどうかの論争。
- 伝統競技かつ神事とはいえ、張り手・頭突き・危険な投げ技の禁止など、安全性を高める取り組みを今一度考えるべきではないか。
- 力士の平均寿命は短く、引退後に内臓疾患などに苦しみがちで、還暦時の横綱土俵入りができたのは38人中10人しかいないがこれをどう論じるか。
キャリア論
- 自民党の竹本直一衆議院議員が「相撲協会がつぶれたら路頭に迷う。力士は体が大きいから普通のことはあまりできない」などと述べ、責められると「サラリーマン社会に適合するのは大変な人もいるという趣旨だ」と釈明したらしいが、その通りとはいえないか?それに対して、朝青龍や旭鷲山のビジネスマンぶりはその対極ともいえる。
- 中卒で部屋に住み込んで食べて寝て相撲して不健康になって、引退した後のにどうすれば良いか、大規模な進路追跡調査をしたら驚く結果がわかるかもしれない。