大阪のドヤ街は、通称「あいりん地区」もしくは「釜ヶ崎」と呼ばれるエリアに存在する。
JR環状線・南海本線新今宮駅、もしくは、大阪市営地下鉄御堂筋線・堺筋線動物園前駅の南側にそのエリアが広がっている。
ミナミとはいえ、JR環状線と御堂筋線という超メジャー路線が合流するスポットにこんなディープな場所があることに大阪の懐の深さを感じる。
大阪出身の故・司馬遼太郎氏が「山の手と下町が分かれている東京や神戸と違って、大阪は庶民の町の中にお屋敷が普通にあるような町でした…」というようなことを言っておられたが、これこそまさにその典型的な例であるといえよう。
これも、時が移り変わるにつれて変化したのかもしれないが、かつて私が見た時はこうだったと思って読んでいただければと思う。
かつて、駅の北側にはフェスティバルゲートというオシャレな感じな大型アミューズメントビルがあったが、できたばかりの頃に行った時には、ビルの間を縫うように走るジェットコースターが話題を呼んだりして活気があったように感じたものの、残念ながら、2004年の夏に行った時には周囲になじむかのように活気が失せており、しばらくしてあえなく倒産。
まるで、山谷に恵比寿ガーデンプレイスを持ってくるようなものであるが、墨田区の東京スカイツリーは健在である。
また、さらに北側には、通天閣がある一帯があるのだが、この一帯も「いつの時代だ?」と言いたくなるような味のある街並みが広がっており、「北に通天閣、南にあいりん地区ではスパぐらいまでならうまくいったとしても、オシャレ系志向のスポットは立ち行かなくなるのもしょうがないわな…」といった感じである。
前置きが長くなりすぎたが、この辺からはあいりん地区について触れねばなるまい。
あいりん地区のどこがすごいって、まずは、東京の山谷と横浜の寿町とは規模・エリア面積が違うことであろう。
エリアに入り込むと完全に周囲とは隔絶してしまうのである。
しかも、大阪だからか、黙って炊き出しの列に並ぶおとなしい東京のホームレスと違って、ものすごく元気な感じがするのだ。
…とは言っても、これは決してプラスの意味でではない。
ここでは、賭博をする光景やケンカをする光景などがあたりまえのように見受けられたのだが、そういう意味で「元気がある」のである。
ちなみにケンカは3件目撃した。
そういうおっさん達のしゃがれたダミ声がゴミや小便の臭いと共に地域内をうずまいている。
写真を撮っている様子がバレようものなら何を言われるかわからないので用心してカメラのシャッターを押す。
…で、ドヤの料金はと言うと、安いドヤは700円ぐらいからあり、全体的に山谷より安い。
このエリアの東端にはアーケードになっている商店街もあるが、なかなか渋い雰囲気である。
エリア内の飲食物の物価は「うどん100円」とか「ラーメン100円」とか「ホルモン焼き100円」とか「弁当190円」などと異様に安いのだが、周囲は小便臭いし、大変失礼ではあるが、食べる食欲は起きない…。
以前、何かの本に「『何故、こんなに異常なまでに安いんですか?』と聞いたら、店主は『いや~、単純に高いと売れへんから…ほら、周りも安いし』…」というようなおかしなやりとりが書かれていたが、この特区内での特殊な需給経済があるのだ…。
このエリアにはアーケードでない場所にもこのように屋台が並んでいる
そして、アーケードになっている一角を外れ、西側のディープなエリアに足を運ぶと、ドヤ街の様相とはさらに異にした驚愕の光景が広がっている。
その光景を一言で言いあらわせば、それは「ドヤ街」ではなく「ホームレス街」と言い表すこともできる。
その中心とも思える箇所には、写真のように広場のようになった一帯があるのだが、ここには無数のホームレスが住み着いており、それなりに活気が溢れている。
大学構内にあるような左翼の立看板やキリスト教のポスターが掲げられたりしているのもおもしろい。
「ここまでくれば、『俺達から搾取しているのは資本家だ!』と叩くぐらいしか主張することはないだろうからな~」と思わず共感。
こういう場所に入り込むのが左翼とキリスト教の真骨頂といったところか…。
お賽銭やお布施といった俗世間のお金の類が大好きな神道や仏教は見事に入り込みませんからねぇ…。
上:公園か空き地かわからないが、このように完全に占拠されている
下:「小便するなアホ」と書かれた落書き
バリケードのよう
車両も住まい
上:職安の中にも人が座り込んでいる
下:青空商店の様子
【追記】
この時以降、このエリアを訪れていないのですが、今やバックパッカー街にもなっているのだとか…。
また、このエリアに星のやが進出するというから期待したいものである。
機会があれば再訪しようと思う。