GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

中国の反日デモの件について整理してみると…

主に今日の日経新聞朝刊から得られた情報をもとに、中国の反日デモの件について自分なりに整理してみた。

 

中国政府は、無許可のデモや集会を厳禁しており、中でも、反政府や反共産党の言論は「ネット警察」が厳しく統制しているが、「愛国行為なら許される」という国家的スローガンと公安当局の事実上の容認ともとれる態度が群集を勢いづけたといえる。 それにしても、「愛国運動をして何がいけないんだ!」と絶叫しながら警官に食ってかかる若者達であふれていたのは印象的であった。

中国政府は、1989年の天安門事件共産党支配の“正統性”が揺らいだのに危機感を抱き、愛国主義反日教育に“正統性”を設定した。小学校低学年から高校に至るまで教科書に記述するのはもちろん、全国に“反日記念館”を建設し、課外教育に使っている。

 

…と今日の読売新聞社説に書いてあるとおり、屈折した愛国教育のせいでこのような事態が発生しているのだといえるわけだが、この局面で国民の反日感情を強く抑圧すれば政策の自己否定につながりかねず、また、これ以上反日運動を広げたくないことから、中国政府自身が大変に苦慮している様子がわかった。

 

このように、これ以上騒ぎが広がるとマイナス面が大きくなると中国政府そのものが認識しているので、国内向けにはこの件については一切報じていないという。

そもそも、中国という国は非民主主義国家であり、公然と情報統制が行なわれているから、台湾の情報すら入手できるようになっていないわけで、今回のような情報統制をやってしまうわけである。

もちろん、基本的には、歴史教科書の問題国連常任理事国へ日本が加盟するかについての問題尖閣諸島の領有権問題などがデモの口実となっているわけだが、正確な情報がないから、「日本の自動車企業は軍需産業の支柱企業だ」だとか「日本製品を買えば十分の一が『大日本皇軍』の資金になる」などといったとんでもないうわさが口コミやインターネット上で氾濫しているとのことで、それがこの運動を助長しているのだという。

ちなみに、情報が統制されていない香港ではデモは全く起きていないとのことである。

 

また、日本人や日本企業が多く、その恩恵に授かって生活水準が高くなっている南部の大都市ばかりだったというから、「政冷経熱」どころではないというか、地域の発展に尽力してきた日本人としてはショックを受けてしまうが、実は、投石には数多くの出稼ぎ情報者が参加していたという。

経済格差や一部の高官らの腐敗がもたらす社会の不均衡への不満は爆発寸前な水準まで来ているといえ、「当局が取り締まらない」と見れば、マグマが爆発するようにガス抜きに走るのであろう。

 

今のところ、反政府や反共産党活動については公安当局の取り締まりが厳しいため、天安門以来、そういった趣旨の騒ぎはほとんど起きていないが、今回の騒ぎは政府にとって表裏一体的な危険性を併せ持っているといえる。

やがて、世の真実が中国国民にわかってきた時を考えるとそら恐ろしくなってしまう。

これは余談だが、「中国は分裂する」「分裂を回避するために中台戦争を起こす」と言われて久しいが、核武装国の分裂も、米中戦争に発展しかねない中台戦争も困るというのが日本の本音で、中国政府には政体維持にがんばって欲しいといったところであろう。

 

ところで、過去にもアメリカ軍によるベオグラード大使館誤爆による米大使館へのデモ、西安での寸劇を発端とした反日デモ、サッカーアジアカップ決勝での反日感情の爆発、そして今回の大規模反日デモといった中国での暴動が国際社会に与えたショックは大きいといえる。

今回の件で日本大使館が日本記者団を含む外国人メディアに敷地内の惨状を公開しようとしたところ、公安当局は「安全上の問題がある」として、一部の日本メディアによる代表取材しか認めなかったというが、中国政府はこれ以上国際社会から批判的な目で見られるのがガマンできなかったのであろう。

 

なにはともあれ、今回のニュースで日本での嫌中感情が膨れることと、世界各国からの中国を見る目が厳しくなることは確実で、私個人としては「これでお馬鹿な日本人が減り、世界の中国を見る目がより厳しくなってくれれば…」とほくそえんでいる。

それにしても、日本側に求められるのは冷静・慎重にして的確な対応であろう。

 

読売新聞の社説に以下のようなことが書かれていたが、例えばこれはものすごく重要なことであろう。

 

中国が「政冷経熱」を対日外交カードにする中で、日本の財界人や企業経営者は言動に注意する必要がある。目先のビジネス利益のために中国側におもねるような態度をとることは、長期的な国益を損なうことにつながる。

 

日本という国は世界のほとんど国々から好かれているのに、近隣の3ヵ国にだけはとことん嫌われているわけだが、これらの国々には日本に対する強い劣等感と憧れがあることの他に、大いなる無知と政府の思惑もいうべきものがあり、そのためにいつまでもこのようにわだかまりはなくならないのであろう。

伝統的にローマ帝国キリスト教と似た価値観で束ねられたヨーロッパ文明圏と、「アジア」などというヨーロッパ人が「ヨーロッパ以外」とも言うべきニュアンスで作り出した文明圏の根本的な違いについて日本人はそろそろ強く認識すべきで、大東亜共栄圏ではあるまいし、「アジアは一つ」などといった馬鹿げた発想から脱却すべきであろう。

 

中国とあまり仲が悪くなっては困るが、日本は中国と韓国に不必要に擦り寄らず、アメリカはもとより、台湾・オーストラリア・ASEANの国々と今以上に仲良くしていくべきだと思う。