多くの人がそうだろうが、安倍晋三氏が暗殺されたショックはあまりに大きい。
ふとした瞬間にも考えてしまう。
これは民主主義への挑戦でも何でもなく、犯人の個人的な怨恨事件だった。
ここまで負の連鎖が複雑に絡み合って針の穴を通すようなかたちで最悪の事態を招いた事例なんて他にあるだろうか。
偶然が重なりまくるドラマを見て白々しい気持ちになることがあるが、今回は偶然が重なりまくって最悪の結果を生んでしまった。
犯人の母親が旧統一教会とされる宗教団体のせいで自分の母親が破産に追い込まれた、本当は旧統一教会の幹部を襲撃したかったのだが、ガードが固いので安倍氏を狙うことにした…というふうに報じられている。
また、今年に入って安倍氏がトランプ氏らとともに旧統一教会にメッセージを寄せていたのを見て安倍氏に恨みを募らせて犯行に及んだ…というような話も出ている。
なお、このメッセージをYouTubeで最初から最後まで聞いたが、安倍氏は終始、教団に肩入れすることなく、現在の世界情勢についてまっとうなことを述べていた。
宗教票はとても固いので政治家が宗教団体にメッセージを出すことは珍しいことではないのだろうが、犯人は誇大妄想をしたのだろう。
SNSなどで陰謀論的に安倍氏と旧統一教会の関係性を疑うような言説を以前より見受けていたし、NHK党の黒川敦彦氏が先日のNHKの日曜討論で「統一教会を日本に持って来たのが岸信介氏」「アベノセイダー・おじいちゃんの代からCIAエージェント」などと唱える放送事故を起こしていたが、今となってはあまりに胸糞が悪い。
また、犯人は安倍氏以外に岸信介氏にも恨みを抱いていた…とも報じられている。
反共という点で価値観が一致した統一教会の創始者の文鮮明氏と岸信介氏の友情が固かったこともあり、岸氏が統一教会を日本に招き入れたと犯人が考えたようである。
京都アニメーション放火事件や大阪北新地のクリニック放火事件の犯人と同じく、どこまでも独りよがりな逆恨みが起こした事件だったように思う。
もちろん暴力は言語道断だが、親の仇を取るというほどの個人的な大義名分があるのならともかく、こういう誇大妄想が引き起こしたような事件は一番やるせない気持ちになる。
今回のようにそれによって失われたものがあまりに大きすぎる場合にはなおさらである。
犯人は岡山など他の場所での狙撃も狙っていたが、地元の奈良以外はどこもガードが固かったと述べている。
本来なら安倍氏はこの日は長野市内で松山三四六氏の応援をするはずだったのだが、週刊文春が出した松山氏のスキャンダルの余波を受けて急きょ演説先を奈良に変更したとのことだった。
候補者本人が悔恨の念を持っているであろうことは当然そうだろうが、スキャンダルを出した週刊誌の編集部は人間の心を持っていない連中だから後悔も何もないだろうけど、このタイミングでタレこんだ張本人も遠因を作ってしまったことで後味が悪かったろう…せめてそうであって欲しいと思う。
また、この犯人を各新聞社が「元自衛官」だとか「元海上自衛隊員の無職」という肩書きでいつまでも報じていることにも強い不快感を抱く。
凶行が行われた奈良の西大寺駅前の後方の警備が手薄だったことは事後的には良くわかる。
それは犯人が武器を手にしたままいとも簡単に安倍氏のすぐ近くに接近できたからである。
しかし、手製の鉄砲の音が拳銃の銃声と違ったことで周囲の人は別の音と受け取ったのではないか、だから1発目と2発目の間の2.5秒間程度の間があったのに伏せるだとかSPや警察が覆いかぶさるだとかといった行動をとっさに取れなかったのではないかと想像する。
そして何よりあの手製の鉄砲で安倍氏の急所に命中したのは相当に偶然性が高かったのではなかろうかと想像する。
もう数センチ外していれば助かったかもしれないと思うと本当にやるせない。
この事件はこのような偶然の連鎖で起きた事件ではあるが、とはいえ、ここまで執拗に追っかけていたのだから犯人はどこかで安倍氏に向かって襲撃を試みたのだろうとは思う。
しかし、選挙期間は残すところあと2日間しかなかったし、もし別の機会・場所で犯人が凶行に及んだとしても的を外すか未然に防がれる可能性のほうが断然高かったのではなかろうかと思う。
昨今、何も失うものがない「無敵の人」と称される人物の犯行が相次いでいるが、社会全体を良くしたらこのような犯罪を減らせると述べる声があるのには簡単には賛同しかねる。
そもそもこの世のあらゆる苦悩を社会が救済することはできない。
人はなんらかの苦悩を抱きつつもそのほとんどが真っ当に生きているわけで、全体をどうにかすることでこうした例外中の例外的な人物の行動を変えられるとはとても思えない。
ただ、こうした無敵の人を見ているとあまりに家庭環境に恵まれていない人が多いというのは事実だと思う。
政治的な面について述べれば、安倍氏を失ったことによって、岸田文雄首相や林芳正氏は党内でかなり優位な立場に立ったのではなかろうかと思う。
安倍氏も自派閥の政治家で傑出した人材がいないから会長を務めていただけで、いつまでもキングメーカーを演じるつもりはなかったのだろうと想像するが、誰よりも日本のことを思い、背負ってきた人だからこそ良い余生を送って欲しかった…ただただそう思うのである。
安倍氏を夫人やお母さん、森喜朗氏や小泉純一郎氏が見送る…そんな絵は見たくなかった。
参議院選挙が終わったが、衆議院選であれ参議院選であれ俺が注目する指標は比例での総得票数である。
前回の衆議院選と今回の参議院選での票の推移だが、純粋に票を増やしたのは議席を減らした国民民主党だけで、立憲民主党の表の減らし方は尋常な数ではない。
れいわ新選組の得票数が増えるのは既存の政党に対する情弱層の不満を反映しているからともとれるが、いかんせん彼らが唱えている経済理論は正しくないので困ったものだとは思うのだけど、そもそも日本共産党は暴力革命を肯定し、かつ、その理論は何から何まで間違っていると思うし、日本共産党より有害さで優る政党はないのでそういう意味ではマシかと思う。
自由民主党 19,914,883票(34.7%)→ 18,258,791票(34.4%)
公明党 7,114,282票(12.4%)→ 6,181,431票(11.7%)
立憲民主党 11,492,094票(20%)→ 6,769,789票(12.8%)
日本維新の会 8,050,830票(14.0%)→ 7,845,985票(14.8%)
日本共産党 4,166,076票(7.3%)→ 3,618,342票(6.8%)
国民民主党 2,593,396票(4.5%)→ 3,159,110票(6%)
れいわ新選組 2,215,648票(3.9%)→ 2,319,159票(4.4%)
参政党 0票 → 1,768,349票(3.3%)
社民党 1,018,588票(1.8%)→ 1,258,621票(2.4%)
NHK党 796,788票(1.4%)→ 1,253,875票(2.4%)
七夕の夜は月が美しかった