アメリカの中間選挙が終わり、下院では民主党が過半数を取った。
特にやりたいことがあって大統領になったわけではなく、大統領になるためになり、就任してからは再選するためにひたすら活動してきた、支持者にどこまでも忠実なトランプ氏がこの結果を受けて、再選するためにさらに硬化するのか、支持層を広げるために軟化するのか、どう動くのかをこれからも世界中の人々が気にし続ける日々が続くわけである。
為替と日本の株式とダウ先物はそれほど動かなかったが、トランプ政権の新たな動きによって一定の方向感を持って変動していくのだろうと思う。
しかし、日本も右と左とで接点のない小競り合いをしているとはいえ、アメリカ社会の分断ぶりを見ていると、まだまだマシだよなあと思わざるを得ない。
それにしても選挙直前のトランプ氏の遊説活動のタフさには驚いた。
72歳のトランプ氏が何歳まで生きるつもりなのかわからないが、この年齢になって、おそらくは自分が死んだ後のアメリカや世界に対する責任を彼なりに果たそうと思い、再選まで強く願うのだから驚く他ないが、世の中には、桐花大綬章を受章するために、就任後3度目の来日をした93歳のマハティール首相や、東京で3回歌い、明日、名古屋で3時間立ちっぱなしで歌う76歳のポール・マッカートニー様のような驚くべきタフガイもいるから驚きっぱなしである。
本題に移るが、最近驚いたのは、那須川天心選手とフロイド・メイウェザー・ジュニア氏がRIZINで試合をするという報に対してだ。
そもそも、ジャンルも体格も違っているうえ、ルールも決まっていないのに契約したというが、あまりにも無茶苦茶な話である。
玄人の格闘技ファンはこんな無茶苦茶なカードを望んでいないし、遠心力を働かせて話題作りできるとはいえ、日本のマネーでまともに買い取れるとも思えない。
PRIDEだってUFCのマネーパワーに手も足も出ずに買収・吸収されたわけで、地上波放送でカネを集めるしかない日本では、異種格闘技戦のカードだったり、大砂嵐VSボブ・サップのようなキワモノカードといった素人向けのカードでお茶を濁して客寄せするしかないわけである。
しかし、実際に契約をしたというのだから、むしろ試合よりも裏方の仕事のほうがずっと気になる試合である。
なお、格闘技ファンなら誰だって、お互いに全盛期同士の那須川選手VS武尊選手の試合を見たいわけで、地上波や大人の事情でファン垂涎のカードが実現しないのはあまりにももったいなく思う。
フォーブス誌が発表した2018年版のスポーツ長者番付の1位から5位は、1位 メイウェザー 2億8,500万ドル、2位 リオネル・メッシ 1億1,100万ドル、3位 クリスティアーノ・ロナウド 1億800万ドル、4位 コナー・マクレガー(総合格闘技UFCの選手)9,900万ドル、5位 ネイマール 9,000万ドルとなっている。
2018年度版ということで、これがいつからいつまでの期間で算出したランキングなのかは知らないが、メイウェザーは今年はまだ試合してないし、昨年も4位のマクレガーとボクシングルールで1試合しただけであり、1試合だけで300億円を超える収入を得ているわけである。
430万人が100ドルを払ってペイパービューを見るから660億円の興行収入を上げることができてこれだけのカネが動くわけだが、日本人にはペイパービューに多額の対価を払う習慣がないので、わずかなペイパービューしか売れず、地上波が報じる日本でどうやってビジネスが成り立つのかと思うと、どう考えても腑に落ちない。
なお、那須川選手が6月にロッタンというムエタイの強豪と試合をした体重がフェザー級の57.15kgで、メイウェザーがマクレガーと試合した際の契約体重がスーパーウェルター級の69.9kgだったが、計量時のメイウェザーは67.8kgだったようで、実際は10kg差といったところだが、身長も165cmと173cmと8cm違っており、蹴り無しだったら100%那須川選手に勝ち目はない。
俺はおおむねスーパーウェルター級だが、仮にフェザー級の選手と試合するとどれだけ楽かということがわかるだけにあり得ないカードである。
また、蹴りありにしたら逆に那須川選手のほうが有利になるだろうが、“マネー”の異名を持つメイウェザー選手がそんなルールで受けることはないだろう。
これまた同様に、キックボクサーが蹴りありで蹴りのカットをできないボクサーと戦えばどれだけ楽勝かということもわかるだけにあり得ない話である。
ボクシング50勝0敗の歴代ボクシング界最高のレジェンドの偉大な経歴と、キックボクシング27勝0敗・総合格闘技5勝0敗の戦績を誇り、井上尚弥選手と並んで歴代日本格闘技界の至宝である那須川選手の戦績のどちらかに傷がつくのももったいないし、どちらでもない変則ルールを無理して組んで試合をする価値のある試合とも思えない。
そして、猪木VSアリではないけれども、那須川選手は負けても負け方次第で世界に名を売れるが、日本マネーで100億円を出せるとも思えないので、メイウェザー選手は勝ってもさして得るものがなく、ボクシングでも「倒すボクシング」ではなく、徹底して「負けないボクシング」に徹して判定勝ちの山を築いてきたというのに、もしここで負けでもしたら一体何なの?となりかねないわけで、何から何までわからないことだらけのマッチメークである。
いつかのマイク・タイソンのK-1参戦騒ぎではないが、話題作りに終始し、結局は試合が成立しないというだけでも世間の注目を得られるという意味では効果があるだろうから、結局は成立しない可能性も高いのではないかと思う。
というか、そう思わざるを得ないほどに何から何まで意味不明だし、ほとんどの人がそのように思うのではないかと思ってしまう摩訶不思議なカードなのである。
大晦日の格闘技イベントでスティービー・ワンダーが歌うかと思わせつつ、ハーモニカ演奏だけをして退場したことがあったなあ…と、どうでも良いような記憶までがふと蘇ってしまったでござるよ…。
【追記】
2018年11月8日追記。
まさか、この内容について書いた翌朝に中止になるとは思わなかった。
AFP・時事通信によると、「このエキシビションは純粋に娯楽目的の『スペシャルバウト』として組まれ、公式戦とされることも、世界中でテレビ放映されることも意図していなかった」とのことで、一体、どういう人がどういった交渉をしたのだろうと思ってしまうが、さもありなんといったところでもある。
2018年11月17日追記。
今度はまた一転して試合するという情報が流れたけどどうなるのでしょうかね…。