GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

高齢者ベッタリになるしかない週刊ポスト

週刊ポストの「年金は75歳までもらえなくなる」「老前破産」「75歳まで働かされるニッポン」と3週続く特集の題材が気になったので目を通してみた。


本誌は、政府の「人生100年時代構想会議」が「高齢者を中心にした給付の社会保障制度から、全世代型の社会保障に改革していくことが求められる」と位置づけて、高齢者への給付を減らそうとしていることに激憤しているようである。

 

本誌2週目の「老前破産」特集の見出しと概要は以下のような感じだった。

 

  • 政府が年金を払うと約束していた65歳を過ぎても年金をもらえなくなる時代が来るので、住宅ローン完済5年前に我が家を手放す「住宅ローン破産」の恐怖

  • 年金支給が遅れて減額になると、例えば「月額26万円」の終の棲家を追い出される「老人ホーム」破産の悲劇

  • 高額療養費制度のひと月の限度額が44,400円から57,600円に引き上げられ、払えなくなり通院・入院をあきらめる「医療費破産」の皮肉

  • 保険料アップは続くのにサービスは縮小、介護認定受けられないまま「介護破産」

本誌3週目の「75歳まで働かされるニッポン」の見出しは以下のような感じだった。

 

  • 「一億総活躍社会」→高齢者は働いて社会保障の支え手になれ

  • 「生涯現役社会」→楽隠居は認めない。死ぬまで働け

  • 「健康長寿社会」→健康なうちは年金を支給しない

  • 私的年金の充実」→自己責任で老後資金を捻出せよ

 

これらの見出しを見て、「政府が現実を認める方向に舵を切るのかな?」と思わない勤労世代の人はあまりいないだろうと思う。

これらの見出しを見て、多くの高齢者が週刊ポストを買いたいと思うようであれば、残念に思うぐらいである。


もちろん、65歳になったら年金をもらえると思っていたのに、思ったより少なくなって残念に思うという気持ちはわかるが、政府は支給年齢を遅らせたらその分多くもらえますよという仕組みにしていることに関して多少触れつつ「75歳までもらえなくなる」と煽るのもおかしければ、対案を一切示さずに政府を嘘つきと批判するだけの姿勢も非建設的で、そういう週刊ポストの姿勢を残念に思う。


我が国の年金は積立方式ではなく現役世代が年金世代を支える賦課方式である。

大戦後かつ人口増加という特殊事情があったとはいえ、最初に年金をもらった人は払っていなかったのにもらったり、健康保険料や税金を納めていない主婦がもらったりする滅茶苦茶といえば滅茶苦茶な制度が悪いのであって、いずれその割を食うのは少子高齢社会における人口の少ない現在の現役層であることは火を見るよりも明らかで、本誌の主読者層である団塊世代は明らかに食い逃げ世代なのにそのことを後の世代に申し訳なく思うでもなく、週刊ポストの記事に「そうだそうだ!」と思うのだとすれば残念である。


年金は税からも拠出される税方式だが、少子高齢化が進み財政赤字が膨らむ中で、年金制度を維持するうえで、政府がどのようにして年金の支出を抑えていくかという視点を持つのは論理的に考えて真っ当である。


年金の件では政府を詐欺呼ばわりする特集を組むのに、政府が消費税を上げる際にも老人殺しといって詐欺呼ばわりする大特集を組んだり、GPIFが損を出した時には泥棒だの詐欺だのとあれほど叩いたのに利益を出している時には一切触れなかったりと、何一つ対案を示さない週刊ポストの姿勢を残念に思う。


編集部スタッフの高齢化もそれなりに進んでいるのかもしれないけど、まさか、高齢者が作っているわけではないと思うので、このような高齢者ベッタリの特集を作ることに気が向かないスタッフもたくさんいるであろうから、それを考えるとかわいそうにも思える。

売るためだったら意に沿わない記事を書かなければならない辛さは僕だったらとても耐えられない。


週刊誌を買って読む世代のほとんどは高齢者だろうから、どちらにしても週刊誌はそう遠くないうちに行き詰る運命にあると思うのだが、なかでも週刊ポストは、これでもかと「死ぬまでSEX」特集とヌードと下半身およびボケ防止の健康特集と女子アナネタばっかりで、政治・経済・社会の記事はさわり程度しかなく、最近はスクープもほとんどなく、都議選中に小池百合子氏の若い頃のグラビア特集をするなど、他の週刊誌と比べるとあまりにスケベオヤジで下世話な内容ばかりが目白押しなのだが、老いとともに本誌の読者層の興味もこのような方向に推移しているのだろう。


今年の最初にも空前絶後の好景気が来るとしつこいぐらいに特集をしていたが、忘れっぽい高齢者の読者とともに忘れてしまいそうな勢いで、そのくせ、前に触れた出来事が起こるとこれでもかと「本誌が述べていた通り」と上から目線で述べるのもこの媒体の大きな特徴である。


個人的な政治的スタンスでいえば、週刊ポストを出す小学館のスタンスほうが週刊現代を出す講談社のスタンスよりも近いのだが、それでも週刊現代のほうが週刊ポストよりはずっと内容も矜持も取材力もあるように感じる。

なので、週刊ポスト週刊文春週刊新潮週刊現代に次ぐ部数を維持している理由がさっぱりわからない。

といいつつ、僕は週刊ポストほど衆愚層に売らんかなと思って作っている媒体はないと思っているので、定点観測に持ってこいの媒体だと思っていつも見出しなどをチェックするようにしている。

なお、大前研一氏・曽野綾子氏・ビートたけし氏のコラムはおもしろいと思う。

ただ、肩ひじ張らずに週刊ポストは読めるので、dマガジンで読む分にはとても重宝している。


週刊誌でいえば、ヤクザ情報の充実ぶりはすごいが逆にある意味ノンポリな週刊大衆・週刊実話・アサヒ芸能のほうがずっと志があると思う。

パートナーにネタでKindle Unlimitedの週刊実話を見せてみたら「これって、ヤクザ・女子アナ・野球・プロレス・ギャンブル・フーゾク・熟女・グルメと中高年男性読者が求める全ての情報がぎっしりと詰まってるじゃん!」といたく感心していたが、週刊ポストもその一種と思うしかないのであろう。


ついでに書いておくが、人のプライバシーを暴きまくっているくせに週刊新潮の中吊りを盗み出すようにコピーしたことを組織的な行動と認めない週刊文春、および、人の不幸で飯を食う場合の週刊誌の所業に関して、個人的には嫌悪感を持っている。


余談だが、うちは子供が欲しくなかったわけでも、そのための努力を惜しまなかったわけでもないのに、結果としてできなかったのだが、それでも、個人的にはそもそも子育てをした人としていない人が同じように年金をもらうこと自体、極めてアンフェアだと考えていて、それを解消するためにも年金と同額程度の支給を子供に対してすべきだと思っているぐらいで、つまり年金受給者は老人と子供にすべきと思うのだが、そのために大幅に増税されても大賛成という立場ですらあるので、、今回の週刊ポストの論調は極めて残念に思ったのでした。


まあ、ネットのゴミ情報に期待するのがバカなのと同じで、週刊誌に建設性を期待するほうがもしかしたらマヌケなのかもしれませんね。