GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

出口治明氏著「日本の未来を考えよう」の感想

クロスメディア・パブリッシングから出ている出口治明氏著「日本の未来を考えよう」という本が昨年からずっと積ん読になっていたのだが、少し前になんとか読み終えた。

この本はひたすら統計データが載っていてそれを出口氏が解説しているだけの本なのだが、読めば読むほどこの20年で日本が世界に置けてけぼりにされてしまっていること、日本に暗い未来が待ち構えていることが想像できてしまう作りになっている。

巻末には日本とドイツのデータを比べて、いかに日本があらゆる方面でドイツに劣るかというデータを並べており、日本の将来に対してネガティブな気持ちにならざるを得なくなっている。

それなのに、出口氏は、何故か本の巻頭と表紙裏で以下のように述べている。

 

これまでに70以上の国、1,200を超える都市を訪れ、自分の足で歩いて得た1つの結論があります。それは、「日本ほど素晴らしい国はない」という確信です

 

そして、これだけネガティブなデータを並べて置きながら、その理由についての記述はない。


本件とは関係ないが、少し前に、「ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか」という本や「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち」という本も読んだが、こういったデータではなく主観を元に書かれた本を読んでも日本の良さはデータでは得られない部分にあるというふうに見受けることができる。

暗黙の秩序、安全、空気の良さ、静かさ、ゴミの少なさ、マナーの高さ、世知辛くなさ、安心感、飯の美味さ、サービスレベルの高さ、約束を守る国民性、悪い人の少なさ、桜と紅葉の美しさ、歴史と文化の独自性とレベルの高さといった日本の圧倒的な美点はデータにはなりにくい。

数値データではボロボロだったとしてもこれらの長所がそれを十二分にカバーしていると断言できるから出口氏も冒頭のようなことを述べておられるのだと思うし、僕も海外から日本を見て強くそのように思うのである。

どんなに数値データが良かろうとカタールノルウェーシンガポールには住みたくない。


戻って、出口氏の本に時間当たりの稼ぎを示す各国の労働生産性の比較の記述がある。

日本の労働生産性G7最下位で長らくアメリカの60%弱程度だが、工業はほぼアメリカと同等なものの、電気機器は50%以下となっており、家電業界の苦戦を反映していることがわかる。

そして、卸売・小売りは40%程度、飲食・宿泊に至っては25%程度しかない。

飲食・宿泊といえば長時間働いて給料も低い業界だが、仮にアメリカのレベルを目指して従業員当たり4倍稼ごうとすれば、人を減らして、人の介在するサービスを減らして、営業時間を減らして、値段を上げて、原価を下げ、それでやれない店は淘汰ということになるのだろうが、僕はそんな飲食店にはちょっと行けないなあと思う。

 

そもそもアジアはどの国も飲食店がオーバーストアかつ外食の頻度が他の地域より断然多いように個人的に歩いて感じているのだが、世界32ヵ国回っていても実はまだアメリカ大陸に行ったことないからわからないけど、時間当たりで日本の4倍稼ぐアメリカの飲食店ってどんなものなのだろうと思う。

ファストフード店が発達しているのはわかるので、そうでない店はおそらくは客単価が高くておいそれとは行けないのだろうなと想像する。

そういった気軽に外食に行ける環境などという面は統計やGDPには出てこない部分で、日本の弱みでありながら利用する側にとっては幸せを感じられる部分でもある。

 

余談だが、その本にフランス人の睡眠時間は8時間50分で、日本人は7時間50分と少なすぎると書いてあるのだが、自分の尺度で考えての話で悪いのだけれども、8時間50分はおろか7時間50分も寝たら普通は寝過ぎではなかろうかと思う。

子供が平均を上げているのかもしれないが、そこまでは影響しないだろう。

僕は十分な自由時間がありながら7時間も寝れば十分で、9時間も寝たら寝疲れしてかつ頭がボーっとしてしまうのだがフランス人や同じく睡眠時間の長い北欧の人はそうならないのだろうか、いくら働く時間が少なくてもそんなに寝たら実自由時間が少なくてもったいなくはないのだろうかなどと思ってしまった。

著者によっては立ち読みで済ませたり、図書館で借りたり、ブックオフで買ったりするのだが、出口氏の著書は書店で見かけるとついつい購入してしまう。

この本にしても少し前に出された「人生を面白くする 本物の教養」にしても実は本人は口述のみをしていて執筆は別の人がしていると本人が述べているのに何故か読みたくなって買ってしまう。

上手く僕のニーズを突いているのだと思う。

また、氏は「仕事に効く 教養としての『世界史』」という本を2年前に出し、出た時期に即購入して読んだのだが、今度は上下巻から成る「『全世界史』講義」を出している。

トホホと思いながら、これも多分積ん読が減ったころに読むことになるのだろうなと思う。