GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

企業の内部留保額が増え続けていることについて

読売新聞の2016年8月31日の9面と9月1日の1面・11面に「政府・与党内で内部留保に対する課税論がくすぶっている」という内容の記事があった。

国内企業の内部留保は10年間で約140兆円も増えて約378兆円に達しているらしい。

 

確かに、人口減に伴って国内市場の縮小が余儀なくされるなかにおいて国内企業が生き残って行くために、海外進出したり、海外企業を買収することによって投資利益を上げたりすることは賢明な道である。

実際に国内企業による海外企業買収は盛んに行われている。

 

しかし、その間、給与所得者の平均所得は減少の一途をたどっている。

内部留保の多くは企業買収や設備投資に回っているとはいえ、企業が利益を配当や自社株買いや賃上げに回さずにこのように溜めこんでしまうと経済全体は必ず停滞する。

内部留保を積み重ねるのは経営者の怠慢であると言えなくもない。


企業の内部留保批判はしんぶん赤旗などが得意とする論調で、同紙と同じ論調では僕は意見を述べたくないのだが、本来はカネを借りて成り立つ存在である企業がカネを借りなくなれば金融と経済が縮小するというのはどう考えても真理なのである。

これでは金融緩和を進めても効果も限定的になる。
 

家計負債+企業負債+一般政府負債+海外資
=家計資産+企業資産+一般政府資産+海外負債
=誰かのカネは誰かの借金

 
という等式が成り立つ以上、企業がカネを溜めこむということは経済全体にとっては大きくマイナスに働くのである。

なお、この件については今年の2月6日に一気に書いている。

 

gooddays.hatenablog.jp

 

誰かが借金をしなければ信用創造が起きず、カネが世の中に流れないわけで、企業がカネを溜めこんでいてはマイナス金利にしてもカネを借りないのだからカネが世の中に回らず、使われもせず、家計にも入ってこず、縮小するのである。

それを防ぎ、需要を作り出すために唯一湯水のようにカネを使い続けているのが国と地方公共団体であり、その顛末が、先の等式における国や地方公共団体の収支の尋常ではない赤字の累積となっているのである。


読売新聞の同記事によると、内部留保への課税は韓国などが実施しているらしい。

もちろん、内部留保のうち現預金にせず再投資している分をどう考えるかという議論はなされるべきだし、法人税を払った後に再度課税をすることは二重課税になるという批判も根強く、また、同記事において「日本商工会議所の三村明夫会頭は『一生懸命努力をして、収益を上げようとする企業のやる気を失わせ、経済原則に反する』と述べ」という記述もある。

しかしながら個人的にはもはや、課税の原理原則云々というのはあるにせよ、内部留保の現預金部分や個人金融資産に課税でもしない限り本質的には日本経済を上向かせられないのではないかと思わなくもない。

もちろん、個人金融資産への課税は個人としては絶対に勘弁して欲しいと思っているのではあるのだけれども…。

 

経済を上向かせるには、とにかくカネを溜めることをバカバカしいと思わせてどんどん使わせるためのドラスティックな手として、以下のような手があるのではないかと思う。

  1. 課税方法の議論は必要なものの企業の内部留保の現預金への課税。
  2. トリクルダウンは幻想とわかってきているため、累進課税の強化。
  3. 金融資産等への資産課税の強化。
  4. 贈与税率の大幅削減。
  5. 日銀が外債や外国株式や原油などをガンガン買う徹底的な通貨毀損策。
  6. 貯蓄を不要と思わせるほどの年金の信頼性の強化。
    これは低税率の日本では無理だと思うが、できたら北欧のように貯蓄率が減るだろう。
  7. 所得税を落としつつ毎年小数点~1%ずつ消費税を上げて消費を前倒しさせる。
    消費の前倒しが起きなければ逆効果となるのでこれに関しては効くか断言できないが、利上げ局面に利上げの代替手段として行うのはどうだろうか。