- 全体の感想
- 各試合ごとの感想(左側に表記してあるほうが私が勝つと予想していたほう)
- ○魔裟斗 VS ●イム・チビン (判定3-0)
- ○ブアカーオ・ポー.プラムック VS ●ワシリー・シシ (判定3-0)
- ○アルバート・クラウス VS ●ヴァージル・ガラコダ (判定3-0)
- ○アンディ・サワー VS ●マルフィオ・カノレッティ (判定3-0)
- ○ジョン・ウェイン・パー VS ●シェイン・チャップマン (3RKO・左ボディーフック)
- ○小比類巻貴之 VS ●ダリウス・スクリアウディス (2RKO・敗者のスネ負傷)
- ○ジャダンバ・ナラントンガラグ VS ●安廣一哉 (判定3-0)
- ○マイク・ザンビディス VS ●山本“KID”徳郁 (3RKO・右フック)
- ○佐藤嘉洋 VS ●ウィリアム・ディンダー (判定3-0)
- ●朴光哲 VS ○サム“ハンズ”・オブ・ストーン“スタウト” (延長判定3-0)
- ○山本優弥 VS ●城戸康裕 (判定3-0)
全体の感想
オープニングファイトを除いたら事前予想がフルマークで当たった。
地味に、朴光哲選手 VS サム”ハンズ”・オブ・ストーン”スタウト”選手の試合だけ外しました。
だって、この試合だけ両方のデータがほとんどなくて当てずっぽうだったので…。
今回のMAXはヤバい。
トーナメントに残った選手全員がホンモノばかりである。
ジャダンバ・ナラントンガラグ選手を除いて全員が優勝候補と言って過言ではない。
イロモノ選手がほぼ全員排除され、純粋なキックボクサー同士でのレベルの高すぎる試合が見られることは間違いないと言って良いだろう。
主催者推薦枠に佐藤嘉洋選手が来れば大穴となるだろうが、おそらくはザンビディス選手が来そうで、見事にレベルアップを果たしたザンビディス選手もこれまたかなりの実力者なわけで、これまでのトーナメントの中で最高のレベルのトーナメントになることは間違いないと言って良いだろう。
魔裟斗選手とブアカーオ選手が安定した実力を持っているのは言うまでもないが、アンディ・サワー選手とジョン・ウェイン・パー選手あたりが下手すると優勝候補筆頭と言えるかもしれない。
なかでも、全員とも負けられないという意識の強い中で、負けても一番失うものが小さく思えるのはジョン・ウェイン・パー選手なので、彼は大穴中の大穴と言えるのではないだろうか…。
どちらにしても言えることは、「今回と違って次回はまともに予想できません!」ということである。
各試合ごとの感想(左側に表記してあるほうが私が勝つと予想していたほう)
○魔裟斗 VS ●イム・チビン (判定3-0)
あくまで韓国旗を頭に巻いて日韓戦を意識するイム・チビン選手。
モンコンを外すときに必ず祈りを捧げるということはムエタイの流儀を知る者にとっては常識なのに、いかにも必死に祈りをささげているかのように「祈ります。イム・チビン」とアナウンサーが感情を込めて言っていたがその不勉強ぶりにちょっと笑えた。
魔裟斗選手は実は左ひざ裏を痛めていたようで、全然練習もできず、ドクターストップもかかっている中でそれをおして戦ったらしいが、とてもそうだったとは思えない横綱相撲的な内容であった。
実際に試合では2Rの始めに1回だけ空振りのミドルキックを出す以外に左ミドルを出していない。
オーソドックス同士の対戦で左ミドルを出さずに戦うというのはかなり大変なことなのにそれをこの大一番でやってのけるのだからすごいとしか言いようがない。
イム・チビン選手は、テコンドーのチャンピオンにまでなる華麗な足技を持っているのにムエタイスタイルでも戦え、さらに強烈なパンチを持っている選手なのにも関わらず、ケガをしているのに、それを全く出させずに完封して勝ったのだから本当に文句のつけようがない。
あくまで、トーナメントの1回戦であり、KOをする必要はないのであれで十分であろう。
どんな状況にあっても発揮される抜群の安定感にはいつも驚かされる。
イムチビン選手は「魔裟斗選手は思っていたほど強くはなかった」と言っているようだが、それは負け惜しみとしか言いようがない。
伊原会長のパフォーマンスは今日も派手だった…。
○ブアカーオ・ポー.プラムック VS ●ワシリー・シシ (判定3-0)
放送を見る限りでも、ブアカーオが圧倒しているように見えた。
左ミドルで相手の腕をつぶし、組んでからのさし合いでも腰の強さで圧倒していた。
○アルバート・クラウス VS ●ヴァージル・ガラコダ (判定3-0)
畑山氏が「谷川さんボクシング出身者で一番まともなのが出てきましたね…」とコメントしていたが、ボクサーがパンチでクラウスに打ち勝っていように見えたのが余程うれしかったのだろう。
しかし、クラウスは深追いすることなく、着実にローキックでポイントを積み重ね、安定感のある試合運びを見せて危なげのない勝利をおさめた。
右ローキックだけでなく左ミドルや前蹴りやインローもかなり有効だった。
ガラゴダ選手のパンチは上手かったが、クラウス選手がきちんとガードを固めてあくまで蹴りと打ち終わりを待ってのカウンターで勝負をしていたので、有効打はほとんどなく、むしろ、パンチでもクラウスの有効打のほうが多かったように見えた。
ガラゴダ選手はローキックをあれだけ食って立っていたのは立派だったが、もうすこしキックに対応する必要があるだろう。
○アンディ・サワー VS ●マルフィオ・カノレッティ (判定3-0)
実力だけではトップ中のトップ選手といえるアンディ・サワー選手。
カノレッティ選手程度の実力の選手相手に取りこぼしを喫することはなく、無難に勝利をおさめたようだ。
○ジョン・ウェイン・パー VS ●シェイン・チャップマン (3RKO・左ボディーフック)
ウェイン選手は1Rにも右フックでダウンをとったようだが、まさかこの超実力者対決がKOで終わるとは思わなかった。
実力者のチャップマン選手にレバーへの左ボディーフックで勝つとはウェイン選手おそるべし…。
○小比類巻貴之 VS ●ダリウス・スクリアウディス (2RKO・敗者のスネ負傷)
スクリアウディス選手のストレートは強烈だったが、小比類巻選手は見事にかわしていた。
小比類巻選手のヒザカットでスクリアウディスがスネを痛め試合は終了したのだが、VTRではどうみても太ももでカットしたようにしか見えない。
しかし、小比類巻選手のヒザカットが勝因として記録されてるのでそうなのだろう…。
2ちゃんねらーは「太ももをスネと言うんだ」だとか「長いスネだな」とか言っていそう…。
突如拾ったような勝利でも小比類巻選手はメチャクチャ喜んでいたが、まあ、この試合はとにかく勝てばいいわけだし、あれはあれで立派な勝利だと思った。
○ジャダンバ・ナラントンガラグ VS ●安廣一哉 (判定3-0)
あんまり関心のない一戦だったが、「こういうカードって意外にファンにウケるので、まあ、いいんじゃないの…」って感じで見ていた。
地力に勝るナラントンガラグ選手が順当に勝ちあがった。
○マイク・ザンビディス VS ●山本“KID”徳郁 (3RKO・右フック)
ザンビディス選手の69.2kgという体重に対して、KID選手の体重は63.9kgと、5.3kgもの差があった。
計量後の体重差を聞いて、「ハードパンチャー同士といった相性の問題もあるし、これではザンビディスに勝てないな…」と思ったが、予想は悪いほうに当たってしまった。
魔裟斗選手もカードが組まれた時にKID選手の負けを予想していたようだ。
ザンビディス選手は魔裟斗選手と小比類巻選手に負けているが、いずれもパンチでは打ち勝ち、ヒザ蹴りで攻略されて負けであり、パンチでダウンを喫したのを見たことがない。
対して、勝つとき大抵右フックでダウンをとって勝っている。
KID選手がどこまで打たれ強いかと、いかにヒザ蹴りやノーモーションのパンチを当てるかによるかと思って見ていたが、左右の手から繰り出されるノーモーションのアッパーカットは見事なまでに封印された。
それどころか、そこを狙いすまして右フックを食らい、衝撃的な10カウントKOを喫した。
あのアッパーの軌道を読まれているとわかった時点で「これはまずいな…。見切られてるから勝つ手がない。これは絶対に判定負けだな…」と2Rの途中に思ったのだが、逆にそこを狙われてフックを合わされてKOで敗れるとまでは思わなかった。
KID選手は序盤は狙いすましての左ミドルキックで勝負をしようとしていたようにも見えるが、ブアカーオ選手や「ムエタイの至宝」サムゴー・ギャットモンテープ選手のような異常なレベルならともかく、自分より断然体重の軽い相手のそんな攻撃で一流のキックボクサーが致命的なダメージを負うはずがない。
それにしてもザンビディス選手のフックの回転は速く、威力もすさまじく怖かった…。
絶対に全体的にパワーアップ&技術力アップしていたように思えた。
どんなに連戦連勝の選手でもたまに敗戦を喫すのがキックボクシングの酷なところ。
唯一黒星のない大物には、これを書いている時点で18戦18勝16KO勝ちと爆進中の全日本キックライト級大月晴明選手がいるが、大月選手もムエタイのトップファイター相手だったら連勝できないだろう。
場数の少ないKID選手もいつかは馬脚をあらわすと思っていたが、何も「K-1ルールでは最後か…」というリングでその敗戦を喫してしまうとはちょっと哀れであった。
しかし、この敗戦でKID選手のカリスマ性が落ちるか、人気を維持できるかといえば、後者のほうだと思う。
「超気持ちよかった。何も覚えてないけど、気持ちよかった。負けるんだったらこれだなって」だとか「人生がもっと面白くなった」だとか「初めてKO負けして、超おもしろい。こんなこともあるんだって。いいっすね、K-1って」などとは普通の人間に言えたセリフではあるまい…。
このぶっ飛び方がカリスマたる所以なのだと強く思う。
あと、右肩を痛めていると言われていたが、右手をぶんぶんと振り回す場面が少ない気がちょっとした。
ザンビディス選手の後姿はいつもヴァンダレイ・シウバ選手のように見えるのだが、今日もそうだった。
それと、KID選手の奥さんが初めてテレビに映っていたな…。
真里有さんといって、VIVIの元モデルのハーフでJリーグの田中隼磨選手の元妻で子持ち方だからあまり表に出せなかったのだと思うが…。
○佐藤嘉洋 VS ●ウィリアム・ディンダー (判定3-0)
テレビでは佐藤選手を「キック界の中田英寿」と言っていたが、「言い得て妙かな…」と思った。
…というよりあれはスポーツライターの布施鋼冶さんが言っていたのかな?
首相撲を得意とするムエタイスタイルが首相撲からのヒザ蹴りが1回だけというK-1ルールにどれだけ適応できるかが見ものだったが、ムエタイスタイルでややもすると素人目には地味にも見えかねない佐藤選手の試合をTBSがきちんと放映したことはうれしかった。
佐藤選手はいつものように相手の嫌がるところを上下に分けて徹底して攻め続け、相手を完封した。
本来なら首相撲でしとめるところをパンチ→ヒザ→蹴り→ヒザと攻めたて、K-1ルールに対応すべく工夫していたのも大きな見どころだった。
でも、できることなら普通に首相撲をさせてあげたいところなのだが…。
佐藤選手はKO勝ちより、相手に「何度やっても、コイツには絶対に勝てないという敗北感」を味あわせての大差での判定勝ちを理想としているというような旨の発言をしていたことがあったように思うが、まさしくその通りの展開となった。
何発かディンダー選手のパンチが佐藤選手の顔にたまに当たっているように見えたが、あれは毎度のことで、両手できちんといなせていたし、後ろに下がりながらああやってパンチを打たれてもそれほど効くものではないことは、キックをやったことがある者であればそれぐらいはわかる。
それに、佐藤選手は意外に打たれ強い部分もあって、あれでダウンをするようなことはないとわかっているので安心して見ていられた。
トーナメントに出ることができればすごいなあ…と一抹の希望を抱く。
佐藤選手のすごいところは、普通は弱いヤツとやりたいのが人間の心なはずなのに、常に「強いヤツとやりたい」と心の底から願っているところで、その精神性に強く心を打たれてしまうのだ…。
●朴光哲 VS ○サム“ハンズ”・オブ・ストーン“スタウト” (延長判定3-0)
スタウト選手はK-1のトライアウトに合格して参戦した選手だということらしい。
データが全くなくて予想も何もできませんでしたわい。
ただ、「朴選手は修斗の環太平洋王者で打撃が得意で、KID選手と同じジムだから強いんだろうな~」と思って、朴選手の勝ちを予想したのだが、延長判定で負けだったのだからまあ仕方ない。
○山本優弥 VS ●城戸康裕 (判定3-0)
山本選手はパンチ、城戸選手はキックで攻め、クリーンヒットの多さでは城戸選手のほうが多い展開だったともいうが、終了間際に山本選手の右フックが城戸選手をとらえダウンをとり、山本選手の判定勝ち。
こう聞くと、学生キック2冠王の城戸選手は有名な山本選手相手になかなか善戦したと思う。
両者ともものすごく良い選手なので、これからも成長して上を脅かして欲しいと思う。
バンコク市内にて