ボクシングWBCフライ級八重樫東選手とローマン・ゴンザレス選手のタイトルマッチは感動的な試合だった。
そもそもローマン・ゴンザレス選手とタイトルマッチをしようという選手がいないなか、八重樫選手が受けて立ったわけだが、やる前から圧倒的に王者不利と言われ、TKO負けでも大善戦・大感動となってしまう状況に現在のボクシングの世界王者の作られ方に疑問を感じざるを得ない人もさぞかし多いであろう。
なぜ、世界にはローマン・ゴンザレスを差し置いて4人もフライ級チャンピオンがいたのかと思わざるを得ないのである。
百田尚樹氏が著書「『黄金のバンタム』を破った男」において何度も何度も書いている通り、現在は主要4団体に17階級があり、さらに暫定王者があり、スーパー王者もある現在と違い、ファイティング原田氏が世界チャンピオンだった当時は1団体8階級のみで一つのチャンピオンの価値は少なくとも今の8.5倍以上であったのである。
しかし、その時代の名チャンピオンのファイティング原田氏をしてこの試合は「史上最高の試合」と言わしめただけあって確かにすばらしい試合だった。
でも、繰り返すが、原田氏のチャンピオンの価値はWBA・WBC・WBO・IBFのスーパー・正・暫定王者がスーパー・正階級を一つに集約してその中でのチャンピオンになる価値があるということであり、原田氏をトーナメントの王者とするなら今の世界王者はベスト8以上は全員世界王者で準決勝・決勝はなしと言っているようなものなのである。
しかも、このタイトルマッチまでローマン・ゴンザレスはトーナメントにすら参加できなかったのである。
今の6人の日本人の世界チャンピオンの中には内山選手や山中選手のようなものすごいチャンピオンもいるが、彼らとて原田氏のような統一チャンピオンになれるのかはわからない。
でも、ローマン・ゴンザレスは間違いないくファイティング原田と同じ高みにある輝ける王者であり、そういう選手がラスベガスでド派手なタイトルマッチを行って莫大な報酬を得るのである。
とはいえ、興業的には薄まったチャンピオンといっても、チャンピオンはチャンピオンでチャンピオンの試合=タイトルマッチとして認定できる団体が乱立したわけだし、そこに団体・選手双方にとってうま味があるわけだからチャンピオンの密度がかつてのように濃縮されることはもうない。