GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

俺の思う永続的な景気刺激策

大企業は下請企業から搾るだけ搾って潤ってきたのに、国際競争力を高めるという面目で従業員の給与を増やすことなく、配当にもそれほど回さずに済み、内部留保や設備投資を増やしてきた。

日本の労働分配率が国際的に見て低いわけではないのだが、勤労者人口の多くを占める中小企業の従業員は大企業の搾取に苦しめられて先が見えない状況にある。

 

確かに大企業の従業員の給与が増えているわけではないが、大企業の正社員の給与が高いのは事実である。

ことに、他の層からしたら考えられないような給与をもらっている大企業の中高年層の給与水準は極めて高い。

彼らの雇用と給与水準を守るために他にしわ寄せがいっているのが今の日本における雇用環境の現状であろう。

そして、不祥事さえ起こさなければ彼らをクビにできないし、賃金の下方硬直性は低いので賃金も下がらず、美味しい思いをできているので彼らはとことん守りに入っている。

 

とはいえ、他の場所でも通用するスキルではなく、社内でのみ通用するスキルをひたすら磨いてきた大企業の中高年にとっても、法令もしくは企業側がいつまでも現状を維持させてくれるという保障があるわけではないから、彼らすらお金をたくさん持っていても使うわけにはいかなくなっている。

若者の置かれている状況は深刻で、大学を卒業していない人や、20代を低付加価値的な労働でしか過ごさなかった人が「負け組」だとか「希望格差」だとか言われるようになって久しいが、彼らに希望を抱かせるような労働市場の展開も全く見えてこない。

自殺率の国際比較的な高さを見てもわかるが、不安感と閉塞感が今の日本を覆ってしまっている。

それほど稼がなくても飢えるような状況にはならないので、食べるのに困る途上国の貧困とは比べるべくもないのだが、日本社会の不安感と閉塞感は強い。

 

かくして、誰もお金を使わなくなり、モノ・サービスが売れず、負のスパイラルに陥っているわけである。

そんななかで値下げ合戦を仕掛け合い、供給者が傷つき、その結果生活者も傷つくようになってしまっている。

 

また、バブル崩壊以降、バラマキを繰り返しても経済は思うように上向かず、そうしているうちに国の財政が逼迫していったため、国民は長期的に福祉を信用することができないし、少子高齢化によって勤労層が支える非勤労層の比率が上がるから取られた社会保険料ほどの福祉を受けられないとわかっているからそれが怖くて貯蓄に励む。

そんな状態で内需拡大といってもどうにもならない。

 

だからこそ消費を拡大させようと政府も躍起なのだろうが、その方法が一過性のバラマキによるものでしかないため、長期的・永続的な安心が得られず内需拡大に向かわない。

政府がやっている「エコポイント」のような政策も消費を拡大させる戦略なのだろうが、これは一部の大企業ばかりを利する偏った政策であり、一発屋さん的な愚策である定額給付金以下の愚策である。

それにあれが本当にエコになっているのであればまだ救いがあるが、製造コスト等をトータルで見るとそれすらも怪しいというのが本当のところだ。

 

ところで、最近、日本を工業立国・貿易立国から内需大国に脱皮させろなどという意見が頻繁に叫ばれるが、これらの不安感を払しょくせずに、一体どうやってそうするかについては甚だ疑問だ。

中国やドイツは3割程度もあるのに、日本の貿易依存率は1割程度で、この割合は主要国の中ではアメリカと並んで最も低く、日本を純粋に貿易立国と呼べるのかという疑問も別にある。

とはいえ、日本は資源も食糧も必ず外国に頼らなくてはならない国なのだから、海外との輸出競争に勝てるようでないと未来の展望は得られない。

 

個人的には、ゼロ金利と金融緩和を徹底的にやってインフレーションと円安を誘導するとか、所得税減税をしながら毎年、小数点ありで良いからほんの少しずつ消費税率を上げるとか、課税方法を資産課税に変えるというような「未来になればなるほど目減りするから、とにかく今使ったほうがマシ」と思わせる政策が効果的なのだろうと思う。

インフレに関しては、国債の利子返済だけで税収を上回るような状況が起きたら国が倒産するから気をつけないといけないけど、そうなるずっと前に誘導をやめれば良いし、インフレが起こるということはすなわち所得と税収が増えるという話でもある。

いずれにせよ今の日銀の硬直した考えよりはマシである。

 

個人的には、大前研一氏が提案する、課税方法を所得に応じて税金を課す所得課税でなく、資産の何%かを税金にする資産課税にするという政策は日本人の消費性向を高める方策として有効だと思う。

現に固定資産においては税金をかけているのだから捕捉の確実性の問題はあるが、金融資産に税金をかけるという案はなかなかの妙案だと思う。

そういった施策を取れば、課税されずに野放しになっている非効率的なストックが一気に効率的なほうに傾くのではないかと思う。

 

さらに広い観点で言えば消費というのはとにもかくにもエコの大敵であるわけで、消費が奨励されて貯蓄をするだけ搾取される社会が良い社会かと言いきれるかというと、そこに疑問がなくもないが、景気の敵は貯蓄であり、貯蓄性向の強い国は往々にして慢性的に不景気に悩まされやすいのだからそれぐらいの荒療治をやったほうがいいのではないかと思う。

 

とはいえ、この金融資産課税は実は資産をたくさん持っている強者なのに自分のことを弱者だと叫びたがる人口層の厚い老人層の強烈な反対にあって実現するのは無理だろうとも思う。

老人層を動かく方法としては贈与の非課税枠の拡大という方法が考えられるが、これは消費喚起という意味では悪くない政策だと思う。

 

つまり、日本の景気がいつまでも悪いのは、国民が諸種の不安におびえて貯蓄に励み続ける結果、消費が縮むからであり、日本の経済を上昇のスパイラルに乗せるためには、円安誘導やインフレ誘導といった円資産の毀損を目的とした強引な荒療治が必要なのではないかと思うのである。