企業の業績ばかりは絶好調で、戦後最大の景気拡大が続こうと、多くの人々にとっては無縁な好況であるわけだが、そのことが格差感を広げていることには変わりはない。
現在の世の中は正社員が7割、非正社員が3割というが、この3割の人々にとってはなおさらそうであろう。
人材派遣業のような産業が発展している影には企業側の姿勢の変化が伺える。
日本人が「ウチの会社」と言う場合、株主ではなく社員がそう発することが多いわけだが、昨今は、日本も国際標準化してきたということで良いことだもと言うべきなのだろうけど、企業は段々と社員の利益よりも株主利益を追求するようになってきている。
そして、スリムになった会社の社員が、派遣社員やアルバイトを安月給で使って最高益を出し続けているようになっているわけである。
実際、派遣社員の平均年収は300万円弱で若いときでも正社員の7割だという。
フリーターになると200円弱だというが、その数字を聞くだけで絶望的な気持ちになる。
そして、ITが進歩したり、カタカナ職務が増えたり、仕事が細分化・専門化していく一方の世の中において、ほとんどの正社員は細分化された業務におけるプロフェッショナルとして機能せざるを得なくなっている。
つまり、正社員の専門化が進み、敷居が高くなっているのだ。
そのような流れは、フリーターにとってものすごく大きなリスクを作り出している。
大学の時は就職氷河期だったが、私はあの時に正社員になれたものの、今になって、あの時になれなかった人と同じか、それ以下かもしれない立ち位置から、30歳になった私はサラリーマンに戻ろうかと思っているが、歳を重ねるごとに選べる職種が限られてくる世の中の状況に相当な恐怖を感じる。
転職市場を調べてわかることだが、ある年齢までは未経験でも大丈夫だが、それがだんだん「経験者のみ」になっていき、さらに歳を取ると経験者すらも難しくなっていっていることが良くわかる。
また、転職市場にあふれるカタカナ職務の肩書きなんて門外漢を無条件で拒否しているようにしか思えない。
もちろん、私が払った代償も相当大きいと思うが、私の場合は正社員経験が4年半ほどあるからまだ職務経歴を書ける。
しかし、例えば、20代に親元に住んでフリーターになった人の代償はとてつもなく大きく、そのまま正社員にならずに歳を取ってしまうと、収入がフリーター並の職業に就くことができなくなることはほぼ間違いない。
いくらなんでも時給850円のフリーターが家庭を養えるはずがない。
例えば、850円×22日×8時間の場合、月収ベースで149,600円、年収ベースでは1,795,200円である。
所得によって納付額は代わるものの、住む自治体によってはベラボーに高くなる医療保険と国民年金とほとんどない税金を引いて残るから東京で家賃でも払おうものなら…以下考える気がしない。
これでは共働きフリーターでなんとか子供を公立学校に行かせることができるにしても、子供を大学にやることは極めて難しいといえるだろう。
そもそも妻が妊娠でもしたら働き手が一人になるわけだから、子供もおちおち作っていられないというのが現状であろう…。
しかも、厚生年金がないから老後はさぞかし不安だろうし、国民年金すら払っていない場合も多いのであろう。
そもそも、計画性があったらダラダラとフリーターなんか続けるわけがないと思われるわけで、概してそういう人は金の使い方も下手くそなものである。
さらに歳を取るとバイトにすら雇ってもらえなくなるという不安が出てくる。
うーむ、正社員と比べると絵に描いたような格差っぷりが実現しそうな勢いですな…。
まあ、世の中には3K高収入職業と言われる職業も無くにはないわけだから、いざとなったらそういうのでがんばらないといけなくなるのであろう。
そして、昔は、金持ちの息子は放蕩息子だと言っていたようだが、今は金持ちの子供ほど勤勉らしく、ニートは高所得層の子弟より貧困層の子弟に多いという結果があるみたいだからから泣きっ面にハチである…。
…というわけで、非正規労働の社員の労働条件を徹底的に改善することこそが真の格差是正につながるように思う。
どんな国民でも最低限の暮らしを健やかに送る権利があるのだから、本当にその辺はどうにかして欲しいと思う。