GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

「美しい国へ」と「小沢主義」(下)

小沢さんは現在、硫黄島に行っているらしいが、今日は「小沢主義」について思ったことを述べる。

 

哲学的にはいいこともたくさん言っているが、肝心の政策論が非現実的・支離滅裂であるような印象を強く持った。
 

「どぶ板選挙」こそが、本当の選挙だし、それがなくなったときに民主主義はなくなるとさえ思っているのだ。(15ページ)

マスコミは自分たちを高みに置いて、日本国民全体を馬鹿にしているわけである。(31ページ)

国民のレベル以上の政治家は生まれない。(43ページ)


確かに、これは正論だし、“民主主義原理主義”の小沢氏にとってはこれだけは曲げたくない意見であろう。

とはいえ、マスコミもそうだけど、現実的には国民も“衆愚”としか言いようがない判断を下しそうになることも多いわけで、藤原正彦氏の「国家の品格」ではないが、時には民意に反してでもやるべきことをやるのが政治家の役目なのだと私は思っている。

 

小沢氏によると、ミニ集会をしたりどぶ板的に現地を回ったりすることで導かれた政策が、「大規模農家を優遇する農政省の愚」という前置きをつけて述べられる「不足払い」という政策なのだという。

ところで、「不足払い」とは、以下のような政策を指すらしい。

 

政府が主要な農産物の生産コストを計算し、マーケット・プライスが生産コストを下回る場合、その不足分をすべての農家に支払うというものだ。(38ページ)

 

これは、単なる露骨なまでの零細農家保護策である。

やっと政府が大規模経営の農家を重点的に補助するというまともな施策を取り出した時に「なんとバカバカしいことを言うのだ?」と耳を疑ってしまった。

日本の農業はその規模に対して就労人口が多く、また、その多くは高齢者が占めている。

何といっても農家の絶対数がアメリカよりも全然多いというのは異常だし、いくら生産性が低いとはいってもアメリカの10分の1程度しかないのは酷すぎる。

そのような状況において、やる気のある大規模専業農家が効率的に農業を行えるように一定規模以上の農家をいっそのことい現金で支援する政策というのは、農村の民意には反するかもしれないが、国民全体の利益には明らかに資する施策である。

小沢氏の述べるこの政策は来年の参院選における1人区を意識してのものとしか思えないような政策である。

まあ、先述の藤原正彦氏のように美しき田園を守るために「たかが経済」と言って片づけるぐらいに尖がっていれば筋は通るが、そんなことに納得する国民は少ないであろう。

 

「不足払い」以上に首を傾げてしまうのは、小沢氏がかねてより提唱している「御親兵」に対してである。

「僕がかねてから理想として提唱しているのが、日本が世界に先駆けて、国連にその力を提供するということである。(158ページ)」

 

国連御親兵を差し出して、「人員・装備は日本が負担するが、指揮権は国連にある」と宣言をするのだそうな…。

今は、国連軍より集団安保体制、WTOよりもFTAの時代である。

国連では解決できない問題や、中ロ両国の拒否権のために動きが取れなくなっている問題がこれほどまでに世界に山積しているのに「この人は何をのん気なことを言っているのだ?」と思ってしまう。

それに、「先駆けて」御親兵を提供したところで他国が大きく追随するとは到底思えない。

こんなことを野党第一党党首が堂々と語るのだから本当に参ってしまう。

また、御親兵を提供しておいて、「今こそ日本国憲法の精神を」と言うのだから笑える。

 

あと、小沢氏は靖国問題に関して、小泉首相を嘘つきと呼んでいる。

小沢氏の主張によると「私は日本人の立場から参拝せざるをえないのだ」と中韓両国に対して堂々と言えば良いということになるらしい。

確かに小泉氏は参拝日や参拝スタイルを変えた面においてはブレがあるが、「外国から言われる問題ではない」と言い続けてきた面においては一貫性があったともいえる。

小沢氏は小泉氏が「分かった、適切に対処したい(154ページ)」と中国首脳の前で述べていながら参拝したことを指して「嘘つき」と読んでいるわけだが、私は外交とは権謀術数が渦巻くものと思っているので、だからといって嘘つきとは別に思わない。

 

…とはいえ、私もハッキリと説明すべきだと思っているほうなので、この小沢氏の主張には共感する面もある。

また、安倍晋三氏はそのような立場を取ってくれるのではないかと期待してはいる。

安倍氏がまもなく首相に就任することとなる。

 

アメリカのマスコミには、新しい大統領が生まれた時は最初の一年目に限って、その政策を批判しないという不文律があると聞いたことがある。(133ページ)

  

このようにおっしゃっておられる小沢氏のこと、マスコミほどではなくとも、野党党首としてどのように新政権と対峙するのか見ものである。