GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

郵政事業民営化問題の本質

昨今は特に、郵政事業民営化をめぐる首相サイドと慎重派の火花が激しく散っている模様で、毎日、新聞紙面をにぎわせている。

そこでは、郵政事業は民営化するか既存のままにするかという二者択一の議論が交わされているが、事業内容の解体については検討すらされていない。

ところで、この郵政事業はどう扱われることが最も妥当なのだろうか…。

 

私にとっての結論から述べる。

郵政事業の問題については、さまざまな考え方があって、これまでもいろいろな意見に目を通してはきたが、最も決定的なことを述べているのは、大前研一氏であると私は思う。

大前氏が、著書「考える技術」において述べている意見は、郵貯・簡易保険は廃止し、郵便は全国で1つの配達公団として生まれ変わるのがベストであるという意見であるが、私もこれが妥当だと思う。

 

大前氏は、たまにぶっ飛んだことを言うものの、天才的ともいえる視点で斬新かつ本質をついた提言をされ続けている。

私は高校生の頃に熱烈な「大前ファン」だったこともあって、それ以来、氏の著書にはほぼすべて目を通している。

大前氏の意見はまさに郵政民営化の問題の本質を突いていると思う。

 

もちろん、他の評論家の考えをつぶさに調べたわけではないので、このように言うと多少の語弊が生じるかもしれない。

しかし、常日頃からさまざまな評論家の基本的な考え方については本屋での立ち読みでチェックしているつもりではある。

 

ところで、世間の主婦や田舎の爺さん婆さんの感覚では「郵政事業民営化=郵便局のユニバーサルサービスがなくなるかも…」という程度の認識なのだから笑ってしまうが、郵便事業なんてものは民営化しようがしまいが本質に関わる話ではないと思う。

言うまでもないが、問題は郵便貯金事業と簡易保険事業、特に郵便貯金事業にある。

大前氏のご意見と私の言葉を交えて、問題点と廃止すべき理由を以下に挙げてみたいと思う。

 

  • 最大の問題は、郵貯は集金だけはできても、融資をするノウハウを全く持っていないことである。

  • 銀行ですら法人営業部や審査部の能力が低く、融資が下手クソだったからあれだけの不良債権を作ったのに、融資ノウハウのない郵便局がどうやって金を貸すのだろうか。

  • なお、230兆円もの資金を運用する能力を持つ銀行は世界のどこにもないし、そもそも、それだけの資金のニーズがない

  • これまで郵貯で集められたお金は財務省の理財局に入れられたり、国債を購入にあてられたりしていたわけだが、民営化後に自主的に運用しようとしても、現在の日本の経済の資金ニーズからみて、郵貯が優良企業に貸し出せるのはせいぜい10兆円で、それすら既存銀行より低金利で貸すことによってでしか達成できなさそうなのだが、それは民業圧迫になるから積極的にはできないと思われる。

  • となると、結局、国債の購入しか運用手段がなくなるわけだが、郵便局の職員の費用まで払って実際は国債を買っているようなふざけた商品を買う人はいないということになる。

  • なお、郵貯は決済能力も銀行より著しく劣るうえ、海外為替もダメダメである。

  • したがって、郵貯は廃止するのが最も妥当である。

  • なお、簡易保険についても、そもそもこの事業を国がやる必然性は薄かったわけで、民営化はおろか必要ですらない事業だと思われるうえ、これまた巨額の資金の運用手段がないのだから必要がなく廃止するのが妥当だということになる。

 

さて、メールやFAXや宅配便にとって代わられる一方で、斜陽産業の郵便事業についてだが、大前氏の案は、「公団化し、郵便物・新聞・チラシをすべて集約するデポとして生まれ変わるべきで、デポ⇒各家庭というラスト1キロメートルのユニバーサルサービスを提供すれば良い」という案である。

なお、「デポは国民の財産なのだから、他の宅配便も自由に使うようにすべきで、そうすれば従来の配達網である新聞販売店やチラシ配布業者は壊滅的なダメージを受けかねないが、物流コストは飛躍的に下がるはずであり、また、デポの運営は民間委託で行っても良い」との認識が示されている。

チラシがデポから届くことを住民が迷惑と考えるかどうかは別として、これもまた秀逸な考えであるといえるが、問題は協力が上手くいかず実現は難しいだろうということである。

 

なお、万国郵便条約でユニバーサルサービスを提供することが求められるので、「仮に、民営化して、郵便にユニバーサルを求めるのであれば、それによって生じる追加コストの部分だけは税金で補填すべきであろう」と大前氏は述べているし、私もそう思う。

 

ちなみに「窓口会社事業」などというわけのわからない事業についても、大前氏は「そもそも窓口が利益を生む事業になるとは考えられないから、私には全く理解不能である。」と、窓口を委託料と手数料収入でまかなうのには無理があるというふうに断じている。

 

なお、特定郵便局がいかにいびつな存在であるかについては、2004年9月27日に意見を述べているので以下をごらんいただきたい。

なお、特定郵便局長会は自民党における最大級の支持母体である…。

私にとっても、これは悪名高き特定郵便局的な要素を残すための発想としか思えない。

 

gooddays.hatenablog.jp