2010年に台北を訪問した際に所感および台北について述べているのだが、今回は2019年12月28日から2020年1月5日まで9日間ほど再訪して改めて思った所感と高雄・台南・台中・九份の感想について述べる。
以下は前回の旅行記。
なお、今回の旅行の写真はこちらとなる。
今回の所感
気候と時期について
今回の旅行の一番の感想は「とにかく最高の気温だった」という感想だったのだが、これが今回たまたまそうだったのかということについては同時期に複数回行っていないので検証しようがない。
また、気温が最高だっただけで、日差しに関してはあったりなかったりだったし、空気の透明度も東京よりは劣っていた。
そして、1年で最も寒い1月の台湾の気温が最高に気持ち良かったということは「他の時期は暑いってことかよ…」ということかもしれないと思った。
とはいえ、以前、3月に3日間台湾に行った時は最終日だけ暑かったものの、残りの2日は暑くなかったので、少なくとも1月から3月までは快適であるといえるのかもしれない。
ただし、その他の暑い時期の暑さは推して知るべしということなのだろうとも思う。
街並みについて
前回、台北の街並みについて「建物があまりきれいではない」という印象を持ったが、 今回、4都市を巡ってもその所感は変わらなかった。
もちろん、建物の美観があまり良くないとはいえ、ベトナムやフィリピンのようにゴミだらけというようなことは全くない。
今回、街を歩いて全体的に以下のような感想を持った。
- 台湾人はゆるいキャラクターが異常に好きなのか、街中のあちらこちらでものすごい数のキャラクターを見た。
日本人もゆるキャラ好きだが、台湾人はその10倍は好きなのだろうと思う。 - 気候が温暖なこともあるのかもしれないが、街中にホームレスが意外と多い。
もちろん福祉の問題もあるのだろうけど…。 - セブンイレブンとファミリーマートがとても多い。
台湾のセブンイレブンはセブン&アイグループの合弁会社ではないように見受けるが提携関係にはあるようで、日本のセブンイレブンの製品も置いてある。
もちろん台湾人に合わせてローカライズしているのだが、台湾のコンビニのレベルも日本よりかなり劣るように思う。 - 人々が歩くスピードが遅いように思った。
暑いから早く歩く習慣がないか、のんびりしているのだろう。 - 東京と違って白人をほとんど見かけなかった。
台湾は西洋の旅行者にはあまり認知されていないのかもしれない。
ヨーロッパやアメリカからわざわざやって来るうえでの優先順位が低めになってしまうのは仕方ないのかなあとも思う。 - 各建物が道路に面した1階部分をアーケード状にセットバックさせて道路として歩行者に提供していることが多く、頭上が2階部分に覆われるため、雨が多い台湾で雨が降っても助かるように思ったが、このセットバック部分の床の高さが建物によって違っていたり、什器や植木が置いてあったり、バイクが多数止められたりしていて実際はかなり歩きづらい。
また、このセットバック部分のすぐ脇に車線が引いてあり、路側帯が無しで車道になっている道路が多く、かつ、自転車が極端に少ないこともあって自動車が歩行者に注意を払わないので歩きづらい場所がかなり多い。 - 台湾は無電柱化が進んでいて電柱はほとんどないのだが、上記のような理由で街中を歩きづらい。
- 台湾人はあまり歩かないのか、バイクの数がすさまじい割には歩行者の数はかなり少ない。
ベトナムのように1台のバイクに3人・4人と乗っていることはないが、バイクが多いのはベトナムと同じともいえる。
台湾レベルの個人所得があれば自動車を所持している人も多そうなものだが、圧倒的にバイクが多く、そのおかげもあるのかあまり渋滞しているのを見かけなかった。
自動車の割合が増えた国や都市では渋滞が大問題となっていくが、雨が多いとはいえほとんどの季節が温暖な台湾の気候を考えてもバイクがベストだと思う。
なお、バイクは台湾メーカー製(ベトナムは日本メーカー製が多い)と思われるものが多く、車はほとんどが日本車だった。 - 歩行者は日本人より信号を守っていた。
ゆっくり歩いていることもあるが、日本人のようにせかせかしていないのだろうと思う。 - こちらが日本人だからという要素がかなり強いように感じたが、タクシーの運転手はとても親切だった。
また、日本では何があっても乗らないタクシーなのだが、日本よりもタクシー料金が断然安いので気軽に乗れた。
建物の1階にセットバック部分があって雨をしのげるが、床の高さはまちまちで、置き物やバイクの有無もまちまち。歩いているのは俺
2010年に訪問した時との違い
前回訪れた時のホテルではトイレットペーパーは流さずにトイレ脇のくずかごに入れるようにと言われ、とてもとても嫌だったのだが、今回はそのようなことはなかった。
というか、今回はウォシュレットトイレを設置しているホテルをセレクトして予約したのと、ホテルの以外で便座に座ったことがなかったので詳細まではわからないのだが、以下のサイトを参照するに、トイレの点はかなり改善しているようである。
前回訪問時に日本に迫っていた台湾の購買力平価がとうとう日本を追い抜いた。
2018年のデータで、台湾の一人当たりの名目GDPは25,007ドル(日本は39,304ドル)だが、一人当たりの購買力平価GDPは53,074ドル(日本は44,246ドル)となっている。
これは世界18位(日本は31位)で、台湾の後ろにはドイツ、オーストラリア、デンマーク、オーストリアといった豊かな国々が並ぶ。
なお、韓国は日本の次の32位で、43,290ドルとなっており、日本に肉薄し、こちらも日本を追い抜く推計となっている。
日本はアジアでは、マカオ、シンガポール、ブルネイ、香港、台湾、韓国に一人当たりの購買力平価GDPで抜かれてしまうことになり、日本の次に来る国はマレーシアになってしまい、先頭集団最下位の状況となる。
先進国で台湾ほど名目GDPと購買力平価GDPが乖離している国は他に見当たらないのだが、何故にこれほどまでに通貨安になっているのか、何故にそのことが許容されているのかということは俺の中でも大きな謎である。
食べ物について
「台湾といえば食の国、台湾にはあまり娯楽がなく、酒もあまり飲まず、とにかく食べることに集中して、食べるために生きる食道楽なのだから台湾の食はもう最高!」というような記述の文章を数多く見かけるし、そうに違いないという観念を持って前回も今回も上陸した。
前回、台湾に行った時にも八角の臭いについて「ちょっと苦手かも…」と思ったのだが、結論から言えば、今回も同じような感覚を持った。
いくら「台湾の食は最高!」という観念を持って出陣したところで、自分の舌や感覚をごまかしてしまえるはずがなく、実際には食欲をそそられない見た目と臭いの料理が多く、屋台の衛生状態も残念ではあるのだが、あまり良さそうに見えなかった。
若い頃は「何でも来い!」状態のバックパッカーだったのに、年を取るにつれ潔癖の度合いが増していって、日本でも屋台については衛生状態が気になるようになっていったため、日本でも屋台では食べないのだが、台湾は日本と違って屋台の比率がかなり高いだけにちょっと残念な印象を持ってしまった。
また、麺類であればさすがに屋台でも大丈夫だろうと思うので、タイの屋台でバミーナームやパッタイなどを食べるのは平気である。
タイの店もナンプラーの臭いが相当臭うのだが、タイでは屋台の前でも正直に腹が鳴る。
しかし、台湾の屋台では何故か全く食指が伸びなかった。
先進国の台湾で食指が伸びないのは何故なのだろうと繰り返し自問自答してしまったのだが、結局は使っている食材が不気味に思えてしまうことが多かったのと、タイとは違って臭いに惹かれなかったためにそう感じてしまったのだろうと思った。
俺はタイ料理より好きと言って良いほどに中国料理が大好きで、国内でもいわゆる「町中華」には行かず、中国人が調理をする中国料理店に行くことを好み、中国料理でも特に広東料理や上海料理は大好物なのだが、残念なことに今回の台湾訪問でとても美味しいと思う台湾料理には数えるほどしか出会わなかった。
そして、今回の台湾訪問中に逃げ込むように何度も広東料理店に入って、美味い美味いと舌鼓を打ったし、元々は上海料理である小籠包も美味しくいただいたのだが、台湾料理で美味しかったなあと思ったのは台北の街角で食べた胡椒餅、台南の名店である度小月で食べた睡蓮菜の炒め物と担仔麺、空港のラウンジで食べた鶏肉飯、台湾スイーツ全般といったところだったかなと思う。
俺だって台湾という国が大好きだからこんな無粋なことを書かずに「台湾は人も料理もサイコー!」と書きたくてたまらないのだが、どうしても自分の心に湧き起こる感情に嘘をつくことができないのである。
台湾のスイーツは大好きだが、俺にとっては香港の飯と台湾の飯とでは明確に違うのである。
もちろん、これは決してレベルの差などではなく、好みの差にすぎない。
なお、台湾料理は中国料理の中で最も味が淡泊と言われるそうだが、どちらかというと単に味がついてないうえダシの出具合もイマイチというふうに思えたし、実際に机に調味料が色々と置いてあるので、自分で味をつける方式になっているだけなのではないかと思った。
日本のラーメン屋のラーメンの塩気の強さにかなり嫌気がさしていて、かつ、東北あたりの濃い味付けが苦手な、日本人としては薄味好みの俺ですらそのように思ったのである。
ところで、「台湾料理を食べてみたら意外と苦手だったという日本人は多いかも…」「そういや、日本に台湾料理店って少ないかも…」と思ったのに、台湾には日本料理店がとても多いのだが、台湾人は日本料理が苦手ではないのかなと思った。
台湾人でも日本料理が苦手な人は日本料理店に行かなければいいだけともいえるが、デパートにおける日本料理店の集客力は他のジャンルの料理店よりも明らかに上であった。
なお、台湾は10%がベジタリアンのようで、ベジタリアン料理には「素食(スーシー)」と表記されていて、肉もどきの食材が多いのだが、実際に肉っぽく感じる料理が多いのでベジタリアンにはパラダイスかもしれないと思った。
ベジタリアンのうち4割は仏教の信仰を理由としているとのことだが、敬虔なものだと驚いた。
なお、台湾の外食率は日本よりも高いそうだが、外食が恐ろしく安いので家計も痛まず、楽ですばらしいなあと思った。
日本でも丼もの屋やうどん屋などは安いが、そういう店では当然ながら野菜を多く食べられないため、日本で安い外食ばかりを食べていると野菜不足・塩分過多・肥満になりやすいのだが、台湾は薄味だし、野菜の炒め物などが充実しているはずなのでそうではないのだろうなと思った。
台湾の超大雑把な年表
ここだけはおさえておいたほうが良いと思ったことを以下にまとめた。
→原住民は東南アジアから渡来して、それぞれが部族を形成して住んでいた(なお、現在の台湾において原住民が占める割合は2%程度)
→1624年にオランダが進出し、スペインと争うが、オランダが統治する
→この頃、中国の人口圧力に押されて福建省や広東省あたりから漢民族が突如、大量に台湾に移住する(本省人の祖先)
→1662年に福建省出身の明の軍人である鄭成功がオランダを追い払って鄭氏政権を樹立する
→1895年の下関条約により清朝から日本へ割譲され、日本が統治する
→1945年に日本が敗戦によって台湾を放棄し、中華民国へ
→1950年に中華民国政府が国共内戦に敗れ、南京から台北に移転・遷都し、外省人が大量に流入
→1975年に蒋介石死去
→1987年に戒厳令が解除され、1988年に蒋介石の息子の蒋経国が死去し、副総統で本省人の李登輝によって民主化されていく
台湾全般に関して押さえておいたほうが良いこと
- 日本は日本国内より先に台湾で義務教育制度を始めた。
- 終戦後に内戦で敗れて中国本土から逃げてきた外省人の構成割合は13%程度で、圧倒的に本省人のほうが多い。
- 本省人は福建省や広東省からの移民と、わずかな東南アジア(フィリピンと同じくマレー=ポリネシア系)の原住民から成っているようである。
- 台湾では台湾語=閩南語や客家語などが話されているが、国民党政権が中国語=北京語を公用語・国語として教育したので、北京語も話す。
- 香港でも台湾と同じく繁体字を用いているが、香港人は広東語を話すので、台湾人と香港人が話す場合には北京語で話さないと通じない。
- なお、台湾人は繁体字を使用しており、中国人は簡体字を使用しているが、さらに表現や単語の違いも多々あるという。
- 国民党政権独裁の頃は地理・歴史の授業では台湾よりも中国の地理・歴史について主に教えていた。
- 民主化が進んだのは1988年の蒋経国の死後に本省人の李登輝が総統に就任してからのことである。
- 長年兵役があったが、2014年に兵役がなくなった。
- 台湾も東アジア各国と同じように受験戦争や塾通いや学歴社会という側面があり、高校を卒業したらほぼ全員が大学か専門学校に進学するそうである。
- 台湾は中華人民共和国から支配を受けたことがないので、台湾の「独立」とは、概念としては中華民国からの独立を指している 。
もちろん、国連や他国から国家として承認されることが真のゴールであるといえるのではあるが…。
総合的な感想
親日国だし、人々はとても親切だし、先進国なのに物価がとても安い点はすばらしいと思った。
修羅の国とすら思えるベトナムのようにマナーが酷いということはないが、ベトナムと同じくバイクが多すぎるのと、歩道が狭くて歩きづらいのと、何よりも街中の緑や街路樹が少ない(壁面緑化はがんばっている)のと、建物がくすんでいてあまり美観が良くないことも気になったのだが、一番無念だったのは俺の食の好みが今一つ台湾にアジャストしないということを再確認したことである。
これはタイや香港とは明確に違う点である。
今回は「住んでみても良いなあと思える国」を探す視点で台湾を旅したのだが、今回の所感は「住めなくはないけど、日本のほうが断然いい」という感想だった。
台湾に限らず、「押しが弱い男性やおしとやかな女性がそのまま生きることができる国は日本だけだな…」とどの国を旅していても思う。
旅行先として、日本からの距離の近さ・物価の安さ・人々の親切さ・温暖な気候といった大きな魅力があり、かつ、台湾人の親日ぶりや訪日客数の多さを見ると、「日本人としてもっともっと台湾を愛したい」「そこに国境ができてしまう限り、隣国同士というのはどこも仲が悪いが、日本と台湾のような相思相愛の隣国は例がない」と強く思うのではあるが、文化・観光資源・食・気候・非日常感などを含めて総合的に勘案すると、旅行先としての魅力は弱めかなという感想を持った。
まあ、東アジアでは日本、東南アジアではタイの魅力が特に高いというだけで他はどこも似たり寄ったりのレベルといえるのではあるが…。
それと、今回は総統選の選挙戦中の訪問となったのだが、選挙前の雰囲気を楽しむことができたのは良かった。
今回の旅行の総出費は何もかも入れて二人で24万円程度だった。
個別の行き先の感想
高雄
高雄の代表的観光地の蓮池潭は巨大な建造物というか像がたくさん建っているものの、それ以上でもそれ以下でもないので行っても行かなくてもいいと思うが、水辺ということもあり、風光明媚で気持ちの良い場所ではあった。
旗津半島へは西子湾からフェリーで行くのだが、16時前に向かったので行きはそのまま乗船できたものの、帰りのフェリーは45分ほど並んでやっと乗れた。
旗津半島には土産物屋が並んだストリートとうらさびしいビーチと観光市場があるだけなので、45分待つことになったことを考慮して、行って良かったかについて後で考えたら、別に行かなくて良かったなという感想を抱いた。
繁華街の新堀江地区やリノベーションされた倉庫街がある哈瑪星地区は行って良かったという感想を持った。
台南
美食の街と言われているそうだが、残念ながら外国人かつ事前勉強不足だった俺には何故そうなのかについて理解するだけの見識がなかった。
台湾のなかで古都とされることもあり、寺社や砦は立派だし、こじんまりとした街中の雰囲気もとても良かった。
また、市内から少し外れた場所にある安平地区にはタクシーに乗って行ったのだが、高雄の場合と違い、「ここは是非とも行くべき」という感想を持った。
台中
台湾で最も住みやすい街と言われているそうだが、実際にそういう感覚を持った。
市民全員が持っているであろうICカードを持って路線バスに乗ると市内のかなりの区間を無料で乗れるのは特にすごいと思った(ただし、バスの運転は結構荒かった)。
とはいえ、住みやすそうだからといって見どころが多いというわけではない。
孔子廟は立派だし、宝覚寺の大仏も大きいけど、わざわざ行くほどかといえばそうでもないし、旧台中市役所だとか宮原眼科は言ってしまえば日本時代の懐古的な建物にすぎない。
観光地というわけではないが、繁華街の一中街や2013年にできた緑道地帯の草悟道付近は歩いていて楽しめた。
九份
情緒ある景観で有名な九份へはあらかじめ予約しておいた往復1,700円程度の安い相乗りのバンで行った。
我が家は有名な阿妹茶楼の向かいにあるビュースポットである海悦楼を事前予約していたので下の写真のような景観や雰囲気やお茶をとても楽しめたが、仮にそれがなかったとしたら満員電車なみの激混みの中、ひたすら階段や通路を歩かされるだけで正直、風情も何もなく苦痛しか残らなかったのではなかろうかと思う。
せめて階段や通路を一方通行にすれば良いのに双方通行になっているため、カオスの度合いが尋常ではない。
行く予定の方はかなり注意して欲しいと思う。
九份の景観