GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

消費税と社会保険料と目くらまし

過去に消費税について思うことに関しては思いの丈を述べたつもりであるが、このたび増税になったこともあり、今回は社会保険料との比較と目くらましという観点で述べることとする。

 

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サラリーマンに課せられている厚生年金保険料は18.3%健康保険料が10%程度で、介護保険料だとか雇用保険料を合わせると、サラリーマンは本来の収入の30%程度社会保険料として徴収されているのであるが、社会保険料労使折半のため、給与明細には半額の15%程度の額のみが記載されている。

そして、第3号被保険者はこの支払いを無条件で全額免除されている。

なお、年金定期便に記載されている「保険料納付額(累計額)」の欄に書かれている額は労働者負担分だけなので本来の徴収額の半額である。

源泉徴収制度と併せて見事なまでの国による目くらましである。

 

本来の収入の30%程度を占める社会保険料と比べたら、課税所得額900万円以下のサラリーマンの所得税は10%~23%と少ないし、10%の住民税もかわいいものである。

消費税そのものがかわいいとは言わないが、社会保険料の30%と比べたら2%の消費税増税は些事に過ぎんと言って良いかもしれないと思う。

 

サラリーマンや公務員でない人が加入する国民年金は将来の給付が少ないので月額16,410円だが、健保と同じベネフィットを得られる国民健康保険のほうは安くするわけにはいかないので、健保から多額の支援金が国民健康保険に流れていても、国民健康保険は会社が負担分ない分だけ高い。

しかし、これは使用者負担分という目くらましがないために高く見えるだけと言い換えることもできる。

 

6割強の企業が法人税を払っていないとはいえ、社会保険料は企業にとって外形標準課税に近い側面があるわけで、使用者である企業側としてこの料率をこれ以上増やされたり、非正規雇用者への厚生年金の適用範囲を広げられてはかなわんので経団連などの業界団体は消費税増税に賛同するわけだが、これは道理に沿っている。

そして、基礎年金の半分に関しては年金保険料ではなく国庫からの税が投入されているものの、少子高齢化時代において、企業とサラリーマンで社会福祉制度を支え続けるのではなく、非勤労者も含めてより幅広い層で社会福祉制度を支えるべきという主張もまた道理にかなっている。

なので、本来のロジックであればサラリーマンも消費税増税賛成に回るのが妥当なのだが、サラリーマンにとっては社会保険料であろうが消費税であろうが負担が増えるのはどちらも嫌なので、消費税増税に賛成という人より反対という人のほうが多いのだろうと思う。

 

そして、消費税増税の最大の弱点は全消費者=全国民にとって大きな痛税感があるため、過去の増税時に大きく景気が冷え込んだという点である。

消費税増税に非があるとすればこの一点だけなのだが、この一点があまりにも大きいので消費税増税に反対する経済学者や評論家が多いのだと俺は理解している。

俺もこの一点だけの理由でデフレ脱却前の消費税増税には消極的に反対と前回に述べた。

なお、痛税感の緩和策についていえば、諸外国がそうであるように物品の総額のみを表示させる内税方式にすれば痛税感は緩和されるのではないかと思うのだが、再増税時の値札差し替えの負担等を考慮してそうはなっていない。

 

今回は、公明党が「何が何でも軽減税率を導入しろ」と騒いだために軽減税率が導入され、さらに経済産業省キャッシュレス・ポイント還元制度という複雑珍奇な手を打ったものだから、今回の増税の話題は増税そのものではなくそちらに向いているようであり、これまた見事な目くらましである。

 

景気の冷え込みを防ぐという名目ながら、決済作業を簡略化することで国内経済の生産性を上げ、現金流通のコストを減らし、カネの流れを捕捉して徴税を徹底したいという国の意図で行われる国による還元大セールだが、9ヵ月間の大セールをやっても現金主義を貫く人は筋金入りの現金主義者ということで放置することとして、そうでない人を一気にキャッシュレスの世界に引き込みたいということなのだろう。

実に見事な目くらましである。

なお、世界には高額紙幣を中止する国も出てきているが、2024年に導入される新紙幣に一万円札が残ったことを鑑みると50兆円を超えるタンス預金に手をつけるというほどの意図はまだないようである。

 

最後に二つほど余談。

現在のマイナス金利下においては国債を刷れば刷るほど逆に国は儲かるはずなのに増税するとはナンセンスではないかといったことを高橋洋一氏が主張しておられるがこれは実にごもっともな意見である。

安倍内閣経済産業省色が強い内閣だが、外務省が関わっている韓国との「徴用工」問題の事実上の報復手段として経済産業省より輸出管理制度の強化というジョーカーを韓国に対して繰り出し、かつ、全く別の問題としらを切り通し、財務省が行う消費税増税に合わせて国税庁に資する徴税強化ためのキャッシュレス化スキームをこれまた経済産業省が繰り出したわけで、すごい省庁だな~と思う。

 

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