GOODDAYS

世の中をかいくぐって逆張りの人生を歩む俺の意見

日本経済と労働政策⑦ 生産性の比較

日本の生産性は低いと言われるが、今回は生産性について触れる。

 

生産性一人当たりのGDPはいくらなのかという数字を見れば比較できるので、一人当たり名目GDPを比べれば簡単にわかるのだが、より公正に比較する方法として、就業1時間当たり一人当たり購買力平価GDPを採用することも多い。

購買力平価GDPにはOECDIMF世界銀行などが算出しているものがあり、生産性の比較データについては日本生産性本部が一貫してデータを提供し続けてくれている。

 

ところで、一人当たりの購買力平価GDPの1位はカタールの指定席なのだが、これが異様に高い国に台湾があり、2017年の一人当たり名目GDPは日本が38,440ドルで台湾は24,577ドルなのに対し、一人当たり購買力平価GDPでは日本が42,832ドルなのに対し、台湾は50,294ドルと日本より高く、発展途上国ではないのに購買力平価GDPが名目GDPの2倍超もあり、先進国らしからぬ物価水準となっている。

要は日本は一人当たりの生活水準で台湾に水を空けられているということである。

日本も名目GDPより購買力平価GDPのほうが高いので、「実は物価安いよね」という国の一つなのだが、台湾の物価の安さは尋常ではないということなのである。

 

実際に台湾の物価を見て回ったところ、不動産以外はかなり安いと感じたわけであり、名目GDPより購買力平価GDPで比較するほうがより実情を反映すると思う。

また、トルコ・リラが大幅に切り下がったからといってトルコの実体経済が名目GDPと同じように下がっているかといえばそうではなく、そういう意味でも購買力平価GDPで比較するほうが妥当なように思う。

しかし、購買力平価GDP一物一価で判断する方法であり、個人的にはいささか雑な面があるようにも感じている。

  

仮にアメリカのリンゴが50円・日本のリンゴが100円の場合、日本のリンゴはアメリカの2倍高いから名目GDPより購買力平価GDPを低くせざるを得ないよねというふうにして調整していくことになる。

次は散髪を例に挙げて、仮に日本の4,000円の床屋で丁寧で高品質なサービスを受けた場合と、中国の1,000円の床屋でやたらと不愛想な店員から角刈りにされて、後の祭りだがクレームをつけたところ、猛烈に逆ギレされてしまった場合で比べたとしても、質は全く問われないので日本の床屋は中国の床屋の4倍高いものとして調整されることになる。

牛肉などは重さで比較するしかないと思われるので、アメリカで売っている牛肉に比べて、日本で売っている牛肉はべらぼうに高いものとして調整される。

なお、ビッグマックの価格は比較対象になっても、アジの干物はアメリカに売ってないということで比較対象にしてくれない。

なので、比較可能な物のみを対象にして、質を問わずに価格や量を比較して生活水準を為替水準で調整することになる。

 

というわけで、俺は購買力平価GDPの調整の質そのものに非常に懐疑的であるが、インターネットで検索しても購買力平価GDPに懐疑的であるという記述を見ることは何故かほとんどない。

俺はどの国を旅行する時も名目GDP購買力平価GDPをインプットしてものすごく意識して旅行し、かつ、スーパーなどをつぶさに見て回るのだが、そういったことを気にしている人が少ないだけかもしれない。

 

ちなみにデービッド・アトキンソン氏は著書の「新・生産性立国論」において購買力平価GDPについて、「これを使うことに異論を唱えていては、経済の話はできません」と一刀両断しておられるが、俺としても「ビッグマック指数や名目GDPと比較するよりはマシだわな」と思うし、他に指標を挙げられないので氏の見解に異論はない。

余談だが、名目GDPではアメリカが世界最大の経済大国だが、購買力平価GDPでは中国が既にアメリカを抜いてしまっており、アトキンソン氏と同じ視点に立てば、世界最大の経済大国はアメリカではなく中国であるという答えが正解ということになる。

また、日本の購買力平価GDPではインドに抜かれて4位となっているので、日本は世界第4位の経済大国というのが正解ということになる。

また、韓国の一人当たり購買力平価GDP39,434ドルで、42,832ドルの日本と同水準の生活水準の国として位置づけられており、中国は16,660ドルとなっている。

なお、名目GDP購買力平価GDPが同じ国が世界に1つだけあり、それは全指標の基準となるアメリで59,501ドルとなっている。

したがって、各国の名目GDP購買力平価GDPを比べればアメリカより物価が安いか高いかがわかるということであり、日本の物価はアメリカの物価より安いということになる。

 

さて、本題に戻るが、生産性就業1時間当たりの一人当たり購買力平価GDPで比較する以上、生産性は、分母であるGDPが多い、もしくは、分子である労働時間が短ければ上がる。

なお、イタリアやスペインは失業率が高いというネガティブな要素のためにこの数字が上がるのだが、このデータにはそういう一面もある。

労働時間が長くて生産性も高い代表的な国にはアメリがあり、1時間当たり69.6ドルを稼いでいる。

労働時間が短くて生産性が高い代表的な国にはフランスやイタリアがあり、それぞれ購買力平価換算USドルで66.9ドルと54.1ドルを稼いでいるが、パート労働者の時給などが低い日本46.0ドルしか稼げていない。

 

労働時間を減らすことで生産性が上がってもGDPが増えるわけではないが、労働時間の減少は国民の幸福に貢献すると思う。

また、生産性を算出するうえで用いられる日本の労働時間は1,700時間台と少なく、46.0ドルという生産性の数値自体も低く感じられるかもしれないが、これには4割を占める非正規労働者も含まれるわけで、その数字が加わることで生産性・労働時間・時給全ての数値の減少につながるのだが、非正規労働者も労働者であることには変わりないわけであり非正規労働者を合算して生産性を比較するのは妥当であると言わざるを得ない。

要は日本の生産性が低い大きな理由として、非正規労働者の多さ非正規労働者の時給の低さが主な原因として挙げられるということである。

特にパートの主婦が日本の生産性の低下に強く寄与しているという意見はデービッド・アトキンソン氏がことあるごとに述べておられる意見である。

 

そして、仮に生産性を上げることに主目的を置くのであれば以下の政策が有効だと思う。

 

  • 解雇規制を緩めて解雇を可能にすることで、要らぬ社員を解雇することによって各社内における一人当たりの生産性を上げる。

  • 解雇された人を別の成長産業に流れるよう促して、社会全体が高成長産業にシフトするようにする。

  • 最低時給をガツンと上げて、生産性の低い会社を廃業に追い込み、かつ、生産性の低い業界の規模を縮小させる。

 

本ブログで何度も述べているが、解雇を阻害する東京高裁の判例こそが日本の生産性と成長業産業への人材シフトとイノベーションを阻害している最大要因であり、日本経済のプレゼンスが長期凋落している主要因である。

これについては過去に何度も言及しているので今回は述べない。

 

最低時給を上げる件は、デービッド・アトキンソン氏が主張している政策であるが、これについては本シリーズの第2回の最後でも予告していた通り、次回と次々回の最終回に述べる。

また、生産性を上げることを主目的とするのが好ましいのかという問いに対する俺の見解も次回に述べる。

これまでの回は分析的な内容ばかりで退屈だったかもしれませんが、次回と次々回の最終回は内容的におもしろいものになったかなと自分では思っています。

 

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