GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

日本経済と労働政策⑤ デフレの影響が極端過ぎな日本

GDP一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額であり、主に四半期単位もしくは年単位で算出する。

GDP生産・支出・分配のどの観点から見た時も同じ金額になるが、これは三面等価原則といわれ、常に「生産=支出=分配」という式が成り立つということである。

 

GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入 

 

支出面で見ると上記の式が成り立つのだが、GDPを増やすためには消費・投資・政府支出・輸出のいずれかを増やす必要があるということがわかる。

ドイツや韓国は消費の少なさを補うために輸出を増やしてGDPを増やしてきたし、アメリカは消費がすごいので、供給量に応じてどんどんGDPが増えていく。

 

日本は企業の業績が良くても、給与を上げないうえ、社会保険料も増え続けているので家計の可処分所得が伸びず、消費のメインエンジンである家計消費が伸びない。

また、主に将来への不安を理由に、企業は国内投資を渋り、同じ理由で家計も消費を控え、巨大な国内のガラパゴス市場グローバル市場の狭間で戦略がどっちつかずになって輸出も思うように増えず、その結果、デフレ傾向が収まらないため、政府支出によってなんとかGDPを支え続けている状況である。

そして、政府支出をし過ぎて国の累積財政赤字が増え、少子高齢化と人口減少が進み、平均寿命が伸びるほど、将来への不安感が高まって、消費よりも貯蓄に回す傾向に拍車がかかる。

この貯蓄の多くが株式などではなく現預金であることについては次回に述べる。

 

企業も人口減による市場縮小で将来にキャッシュフローが悪くなることが怖いので、好業績にも関わらず、上げずに済む限りは給与を抑えていざという時のために内部留保を増やし続けている。

給与を低く抑えるのに長らく役立ってきたのが、終身雇用制度である。

また、輸出で稼ぐためにはイノベーション・国内市場ではなく海外市場をにらんだ戦略・自国通貨安・人件費安等の要素が大切だと思うのだが、日本は優れた海外戦略で挑む中国・ドイツ・韓国・台湾企業などに押されて思うように伸びていない。

 

本来はインフレによって物価が値上がりしていくことで通貨の価値が年々下がっていくものなのだが、人々がお金を使わないので値下げ競争になり、その結果、物価が値下がりが続くデフレになり、その結果、通貨の価値が下がる前に通貨をモノに変えてしまおうというインセンティブも働かなくなり、消費意欲の減衰が進んで経済が縮小するデフレスパイラルがいつになっても解消しないなかで、デフレの解消を目標に定める安倍内閣黒田日銀が誕生し、大胆な金融緩和政策を行った。

 

とにかく通貨価値を毀損させればインフレが起きて消費意欲も出るだろうと、日銀が量的緩和だのマイナス金利だのETF買いだのと過激な手を打ち続けるが、一向にインフレが起きないまま現在に至っている。

しかし、怪我の功名もといデフレの功名で、付利について考えなければ財政再建が事実上終わってしまったのだが、ここまでめちゃくちゃな通貨毀損策をやっちゃっても通貨価値が棄損されないというありさで、円安も進まなければインフレも起きなかった。

通貨を発行してその通貨を債務返済に充てる財政ファイナンスをやったらハイパーインフレになるとあれほど騒がれたのに、政府と日銀が連動して財政ファイナンスをしまくって、付利の問題はあるものの国の借金を事実上チャラにしてしまったのに円の価値が落ちなかったというデフレのすさまじさなのである。

ちなみに、付利だとか事実上の財政再建終了だとかいった内容は以下のトピックで述べてある。

 

gooddays.hatenablog.jp

 

もし、仮に日本円がトルコ・リラのように他の通貨に対して日々切り下がるような事態にでもなれば誰もが我先にと消費するようになる気もするが、外貨に替えて溜めこむだけで買いに進まない気もする。

しかし、そもそも世界最強の債権国であり、自国通貨建てで国債を発行し、そのほとんどを国内で消化しているという日本国のファンダメンタルズを考えると、過去のPIIGSやトルコのような事態は起きようがない。

 

かくして、お金を貯めることは個人の人生にとっては良いことなのに、全員がお金を貯めると最悪の結果になるという「合成の誤謬に平成の開始とともに日本経済が陥って、もう平成も終わろうとしているのだが、シンプルライフブームがもはやブームではなく実際になってしまっているのではないかと思われる現象として、若年層の消費性向の深刻な低下が起きているのだというからさらに驚く。

高齢者でありながら老後を怖れる高齢者がお金を使わないというイメージを持ってしまいがちだが、実際には40代以下の若年層が恐ろしくお金を使わないようになっていっているというのである。

これは単純にバブルを経験している層と経験していない層の差で、浪費の楽しさを知っている層と知らない層の心理的な差としか言いようがないのかもしれない。

それでいて、内閣府が行った「国民生活に関する世論調査」調査で、国民の74.7%、18歳~29歳にいたっては83.2%もの人が「生活に満足」と答え、2年連続で過去最高を記録しているわけで、もはや幸福大国化しており、生活満足度だけならバブル期をはるかに凌ぐのだからすごい。

 

これまで何度も述べているが、お金は誰かが使えば誰かの所得になる性質のものであり、使わないと回転しないのでGDPは増えない。

「キャバクラに行く→キャバ嬢がマッサージに行く→マッサージ屋が焼き肉屋に行く…」というふうに貯めずに使えば、供給力に応じてGDPは雪だるま式に増えていくが、いくら供給力があっても貯めればそこで再生産は終了してしまうのである。

客が来る小売店で30万円売っても、客の来ない小売店で10万円売っても売り子の労働の供給は変わらないのに、生み出される付加価値や生産性は何倍も違うわけである。

 

なお、この合成の誤謬に関することは以下のトピックに長々述べたが、このトピックは本ブログの全トピックで最も自画自賛するトピックである。

借金がお金を生み、借金が無くなればお金そのものが無くなってしまうというお金の真理について述べている。

 

gooddays.hatenablog.jp

 

話を戻すが、現在の40代以下の世代がお金を使わない現象は、個々の人生のためには良いのかもしれないが、仮に歳を重ねても低い消費性向のままで行ってしまうのであれば、合成の誤謬が強化され続けることになるわけで、将来の日本経済に相当大きな影が差すのではないかと思う。

 

しかし、現在の老年世代が死んでいくにつれ、親より人数の少ない子供たちに半端ではない額の相続、さらに穿った言い方をすれば、市中の日本国債も相続されていくわけで、その流れのなかで消費が増えるのではないかという期待もなくはない。

また、日本社会は、働ける世代に資産が少なく、老々格差はあれど、老年世代に多くの資産がある世の中で良かったな、韓国のように逆だったら目も当てられないもんな…と心の中から思うわけで、これまで述べたこととは逆で、個々の人生における貯蓄の大切さというものに思いをいたす。

ところで、十分な年金が保障されている北欧では老年層の貯蓄額は少ない。

福祉がしっかりしているから貯蓄をせずにどんどん消費に回せるというか、貯蓄していられないほどに税率が高い国であるためでもあるが、国に運命を任せてしまうリスクを回避するという意味では自分で貯蓄していくということは精神衛生上良いわなとも思う。

 

それにしても思うのは、消費税のことである。

生産しない者から徴税できるという意義があるので、リフレ派ほどには消費税を徹底否定するつもりはないが、貯蓄には課税せず消費にのみ課税する消費税という税制は消費性向の高い低所得者に圧倒的に不利で、かつ、どこまでも貯蓄を奨励する税制であり、これほど日本人のマインドに合わない税制はそうそうないだろうなと思う次第である。

このマインドでは、他国より消費税率が低くて当然、上げるたびに消費が激減して内閣が倒れるのも当然という気がする。

余談だが、低所得かつリテラシーの低い層は、大好きなタバコ・酒・自動車・ガソリンで税をむしり取られ、競馬や宝くじといった公営ギャンブルでテラ銭まで取られるのだから、ケツの毛まで抜かれ、「もっとラットになれ!」としばき倒されていると言っても過言ではない。

譲渡・先物・配当・利子等による所得も一律20.315%が課税されるため、2割ほどのテラ銭を取られることにはなるのだが、これは住民税込みの分離課税であり、所得税より税率が安いわけで、考えれば色々とエグいなと思わずにいられない。

 

gooddays.hatenablog.jp

 

【追記】

2018年10月25日追記。

もちろん、内部留保は現預金だけではないのだが、この辺については次回に述べた。

 

f:id:gooddays-shumai:20201226233448j:plain先日家から撮った月。ビルの谷間に沈んでいった。今日は満月に近いっすね