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日本経済と労働政策④ 供給力が必要な途上国と需要が必要な先進国

4回目と5回目は労働政策というところからは一旦外れて、経済全般について触れる。

 

経済学の大原則だが、自由市場下では需要曲線と供給曲線が一致したところで均衡価格が成立する。

需要と供給の少ないほうの増減に合わせて、取引量やGDPが決まっていく。

 

一般的に途上国は需要は旺盛だが、供給力が少ない。

したがって、「供給は自らの需要を創造する」というセイの法則通り、供給力の向上に応じて経済成長をしていく。

途上国の人は豊かな暮らしをするために欲しいものがたくさんあるものの、需要を満たすだけの稼ぎや稼ぐ手段がないのだが、自国で供給力を伸ばせない場合、外国からの投資を受け入れて供給力を増やせば、旺盛な需要に引っ張られてどんどん経済成長していく。

 

途上国が供給力を上げようとするならばやはり工業が最も適した産業ということになるが、そのためには国内資本もしくは外国資本からの生産設備への投資が必要となる。

外国からの投資を呼び込むのに特に重要なのが電力や道路のインフラで、庶民の家に停電を起こしてしまってでも、工場に安定した電力を送るだけの強権的な政治力を持った国が加速度的に発展しやすいのだが、その典型的な例が中国である。

勤勉な国民性・治安・政情・安定した電力供給等の要件を満たさない国は、いかに民主的な国であっても途上国から脱却できない。

むしろ、インフラも整わないうちに先に民主化した国は行き詰りやすい。

冷戦終了以降、アジアの国々が他の地域の途上国を出し抜いて発展できたのはこういった要件を満たしたからである。

そうやって考えると独力で明治と昭和に2度もキャッチアップした日本のすごさに驚かされるわけである。

鄧小平の改革開放によって外国資本を受け入れてここまで発展した中国はアメリカに次いで、もしくは並んでイノベーティブな国になろうとしているし、貯めに貯めた資金を一帯一路などを通じて世界中に投資する側になっているし、経済力国際的な影響力正と負両面のイノベーションを生む力が高くなり過ぎてアメリカから本気で睨まれ始めるに至った。

また、中国やロシアの基本戦術は、アメリカと敵対している国や独裁国家や人道的な理由で制裁を受けている国に与するという戦術だが、現在、イランを草刈り場にしようとしているように、それによって莫大な海外権益を得ているし、IMFが貸さないような融資条件で弱小国に貸して、借りた側に返す見通しが立たなくなると港などを租借するという植民地時代のような方法も取っている。

 

途上国に対して、先進国は絶えずイノベーションと効率化と投資を突き進めているので、供給力は十分にあるが、それに需要が追いつかないことが多い。

したがって、経済成長は供給力の向上に応じるのではなく、需要の増減によって起こることが多い。

先進国に関してはジョン・メイナード・ケインズ有効需要の原理に従うわけである。

先進国の人は既に豊かな暮らしをしているし、老後が長く、老後に子供の世話にならない傾向にあるため、消費するよりも貯蓄や投資をして将来の不安に備えたいと思う人が多いのである。

 

先日、アメリカの家計債務が過去最大を更新したという報が入ったばかりだが、アメリカ人のようにデカい車に乗ってデカい家に住んでプールも欲しいと思うような旺盛な需要がある国であれば、輸出に頼らず、逆に輸入をしまくっても供給力に応じて独力で経済が伸びる。

十分な供給力を持つ国であるということが大前提となるが、貿易赤字が多い国は需要が多いので、供給力に応じて経済がガンガン伸びる景気の良い国であり、貿易黒字が多い国は需要が少ないので、余った分を外に買ってもらうことでしか経済を成長させられない景気の悪い国であるともいえる。

アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアといったアングロサクソン国は世界屈指に経常赤字を垂れ流し続けている国々だが、旺盛な国内需要があり、かつそれぞれが独自の魅力を持つ国なので、海外からの多額の投資に支えられて確かな経済成長を続けている。

 

とはいえ、十分な供給力を持たない国が長期に渡って経常赤字を計上し続けるとギリシャのような負債だらけの国になってしまうのだが、アメリカが財政赤字を増やしまくって、世界で突出した経常赤字を計上し続けても大丈夫な理由は、アメリカドルが1945年のブレトン・ウッズ協定以降は国際取引の基軸通貨であること、および、世界中の膨大な投資マネーがアメリカ株式やアメリカ国債などに投資されて還流しているからである。

基軸通貨である限り、トランプ氏のように騒がなくても、通貨を発行すればいくらでも国際取引が可能なので貿易赤字を垂れ流しても問題ないはずなのだが、基軸通貨の座から滑り落ちるとその特権が無くなるので、原油取引決済などにドル以外の通貨を用いようとする国はアメリカに敵視されやすい。

基軸通貨でいられる要件を集約すると、アメリカが圧倒的な経済力=供給力軍事力を背景にした政治力といったヘゲモニーを握っているからということになる。

ダントツの政治力を持つためにはダントツの軍事力が不可欠であり、だからこそアメリカは軍事に異常なコストを割くわけであり、中国もそういった志向を持つわけである。

アメリカという国はダントツの政治力・軍事力を持ち、併せて、文化や言語においても世界標準を担っているだけでなく、対外債務過多とはいえ、世界ダントツの経済力=供給力を持っている。

これはアメリカが資本主義の権化ともいえるような国家システムで運営されている国だからで、自己責任の名のもとに先進国らしからぬ低福祉を自国民に強いながらも、世界から天才とカネとイノベーションを集める唯一無二の仕組みと魅力を維持し続けているからである。

 

対外債務過多のアメリカにおいてアメリカ企業は世界から投資マネーを集め続けるために時価総額上昇・高配当を生み出し続けなければならないわけだが、アメリカの経営者は莫大な報酬を得る代わりに、多くの株を企業で持ち合う日本のサラリーマン社長とは比べ物にならないプレッシャーにさらされる。

その結果、ROAを重視した極めて効率的な企業経営がなされるし、世界一の報酬を得られる限り、世界で最も優秀な経営者がアメリカに集まるという仕組みが維持される。

昨今の中国のゴジラ的とすらいえる成長を見せつけられると不安な気持ちにもなるが、仮に、世界経済の成長・アメリカ経済の成長・アメリカの軍事力等に陰りが出て、原油取引決済などにおける決済通貨が中国元やユーロに移行し、アメリカドルが基軸通貨の座から滑り落ちたりしたら、莫大な対外債務があるアメリカ経済とアメリカ政府は窮地に追い込まれると思う。

 

ちなみに、世界最高の高福祉国家はその莫大なオイルダラーを手にする中東の産油国で、王族が石油権益を一手に握り、選挙権もない代わりに、税金がゼロで、病院・教育は無料で、土地は無償貸与で、住宅ローンもほぼゼロで、公共料金も格安で、公務員の給料も驚くほどに高いので、親族に公務員が一人いれば食うに困らないのだが、公務員率は異様に高い。

もちろん、中東の産油国もいつまでもこの状況が続くと思っていないのであれこれやっているし、ハードイスラムで自国民がろくに働かないドバイは上手く外国人を用いて、多大な電力供給が行き詰まれば即座に廃墟になるような過酷な自然環境のなかにおいても石油依存率の低い経済運営を上手いことやっている。

独裁の妙とでも言うべき効率の良さを最大限に発揮しているわけである。

 

ドイツはEU域内で圧倒的な競争力を持つわけで、通常の為替メカニズムが働けば競争力のある国の通貨は高くなるのだが、EU域内で通貨安にならないという特権を活かして、EU域内から膨大な貿易黒字を積み上げて成長している。

ドイツの国内での需要がそれほど増えなくても経済成長できるわけで、EUが「ドイツ帝国」と揶揄されるゆえんである。

例えるなら東京都の経済がドイツで、その他の道府県の経済が他のEU諸国のような感じといったところだろうか…。

東京から地方へは無償の交付金を流してバランスを取るが、ドイツからギリシャなどへの資金援助が必要になるたびに毎回ひと悶着が起きることとなる。

 

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