GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

日本経済と労働政策① グローバル化の影響

いつもは俺の意見をメモするのに使っている本ブログだが、これから9回にわたって、日本経済と労働政策全般について思うことを書く。

本ブログは適当に書いている回と、ガチで書いている回があり、本シリーズは久々にガチで書くシリーズとなる。

シリーズの途中に別の内容を挟むかもしれないが、本シリーズは9回まで続く。

 

経済学にも財務会計にも疎いながら書くのではあるが、プロがお堅く書く内容よりも読者を楽しませる内容になればいいなと思う。

なお、最近の事柄ではなく、デフレ時代や歴史的な事項にも触れたので、昔の陳腐な内容の記述も多いのだが、ある程度の前提の説明は必要と考えたためであり、ご了承願いたい。

また、連続して読まなくてもそれぞれの回で完結するように書いているが、シリーズとして継続させるなかで言おうとしている一貫した意見もあるので、単独でも連続でも読めるように書いた。

 

初回は、現在の世界の概況と、低所得層の生活可能レベルの最低賃金確保とその賃金での完全雇用を目指す必要性についての解説的な内容となる。

 

資本主義は必然的に格差を生み出すのだが、労働法の立法労働組合運動福祉国家の創設といった歴史過程を経てたびたび修正されてきた。

マルクス共産主義革命が起き、社会主義国家ができたほどに、資本主義の矛盾や問題点が起こす問題が甚大であったからである。

なお、資本論はいつか読まねばと思っているのだが、俺は要約版のようなものしか読んだことがない。

 

そして、冷戦終了後に本格化したグローバル化は、各国内での所得格差を大きく広げる方向に作用し、また、世界各国において経済的理由による移民の流れを促した。

この流れの中で起きた国内格差移民の扱いが特に先進国内における大きな問題となっている。

 

グローバル化は世界全体の貧困層を減らし、かつ、世界全体のGDPを増やすのに大きく資するのだが、その代償として先進国の中・低所得層の所得手段をどんどん奪い去る傾向にある。

また、高所得層の所得税法人税が低い国に人材や会社が集中するので、そういった国が隆盛するのは必然なのだが、その代償として富裕層や莫大な利益を上げるグローバル企業から所得に見合った税金を取れない世界になってしまった。

 

企業においてはグローバル化が進むと、自国民に高い給与を払うのが嫌だから労働力の安い国に進出する、もしくは時給の安い移民を受け入れて彼らに任せるという動きが加速する。

しかし、言葉・習慣・宗教・文化が違う移民を受け入れると社会の分断貧困層を生み出すことが多いため、社会の安定度が大きく下がる現象が特にヨーロッパ諸国において起きてしまった。

 

かくして、高い付加価値創出力を持たない先進国の中・低所得層の国民は、移民と新興国の高い競争力による給与の下方降下圧力や、治安の悪化文化摩擦といった葛藤を持つようになって現在に至っている。

グローバル化に対する反動として世界中で右傾化・ポピュリズムの波が吹き荒れているが、自由主義・民主主義陣営のリーダーであるアメリカにおいてトランプ政権が発足するところまでいってしまった。

自由貿易の重要性や移民差別の否定のような“きれいごと”ばかりを述べるリベラルな経営者層やカリフォルニア州のような勝ち組州に嫌気が指した有権者がきれいごとでない政策を遂行してくれるトランプ氏を勝たせたからである。

なお、グローバル競争における強者は、よりリベラルであり、よりきれいごとが通じる世界でこそより多く儲けられるのだが、ついでにきれいごとばかりを言って自らの人格を汚さずにも済む。

 

世界中の国が福祉国家であれば世界の人々はかなりハッピーになるのだが、一つの国に準拠しないグローバル企業、もしくはアメリカ・中国のように強欲な資本主義を推進し、かつ、異常な格差を容認してしまう国があると、福祉国家は競争力においてどうしても劣勢に立ってしまう。

アメリカの白人男性の平均寿命は下がり続けており、中国の農村戸籍層の暮らしは悲惨なまま放置されているが、官民で格差を許容し、貧困層を犠牲にした上で異常な競争力を手にした国の存在はその他の国にとって大きな脅威となる。

ましてや、国の規模・政治力・軍事力が強ければその脅威はすさまじいものとなるので、アメリカと中国という2つの巨大な要素はどの国に対しても計り知れない影響を及ぼす。

また、シンガポールアイルランドのような租税回避国の存在は世界における法人税下げ競争に拍車をかけるため、世界の生活者にとって大きな脅威となる。

税率を上げると資本が逃げ、税収が減ると再配分が上手くいかなくなり、移民が増えることで貧困層が増え、社会の安定感が下がるというパラドックスに多くの先進国が陥ってしまっている。

トマ・ピケティ氏はグローバルな資産課税や累進課税を主張するが、各国が足並みを揃えることはないので、それは絵に描いた餅にすぎない。

ちなみに俺はトマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」そのものも読んでいない。

 

フィンランドに難民申請をしたイラクからの難民が寒さに嫌気がさして帰国してしまったという話があるのにも関わらず、高福祉の北欧諸国は幸福度ランキングの頂点に立つので、幸福度調査の結果には民族の気質のようなものが大きく反映されるように思われるのだが、国民の幸福度と社会の安定には貧困がないことが大きく資することは間違いないと思う。

 

そして、貧困をなくすためには、ハンディを負った人が適切な福祉を享受できること、健常者が普通に働けば“健康で文化的な生活”ができる程度の収入を得られること、最低賃金レベルの収入を得るための労働が必ず用意されていることが重要である。

所得は労働収入福祉による給付によって得られるが、人々の自尊心や幸福感について考えると、生活保護ベーシックインカムを含めた給付よりも労働収入によって所得が構成されるようにするべきである。

 

国民の幸福の最大化のためには、適切な最低時給とその水準における完全に近い雇用という要素こそが最も重要な要素ということになると俺は思う。

一人当たりGDPと最低時給の相関を見ると、多くの欧米諸国は日本よりも失業率は高いものの、随分と高い最低時給を設定しているし、さらに最低時給を上げていっている潮流にある。

日本においても近年は最低時給を上げていっているが、自民党の支持基盤である中小企業の経営者の利益を重視するために先進国らしからぬ最低時給を設定し続けて現在に至っている。

最低時給で1日8時間働いても生活保護より可処分所得が少ない社会であり続けているのは、「働いたら負け」と言っているようで国がこういった姿勢でいいのかと思わずにはいられない。

 

労働コストの安い新興国・高い競争力を持つ巨大低福祉国家法人税の低い国家といった外の脅威にさらされながらではあるが、低所得層の雇用確保と、ある程度の最低賃金確保は先進国の最優先事項だと俺は思う。

 

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