練馬区から引っ越して東京湾の近くに住むようになって10年経つが、大都会であっても海の近くに住むのと内陸部に住むのとで天候の違いを感じる。
まず違うのは風の匂いで、今住んでいる家には良くも悪くも潮の匂いがする風が吹き込むことが多い。
ということは建物の塩害に注意が必要ということになる。
気温に関しても違いがあるのだが、関東で特に気温が上がるのが埼玉や群馬であることからもわかる通り、海水が周囲の気温の上昇を抑えてくれるのと、ヒートアイランド現象を抑制してくれるので海沿いは体感温度が低い。
勝鬨橋を渡って築地に向かうと急に暑くなったように感じるし、勝どき側に戻ってくると一気に涼しくなったように感じる。
同じく、練馬あたりで雪が降っていても海水によって気温の低下が抑えられるためか、こちらではなかなか降らないことが多い。
また、海沿いなので風が強いのだが、冬は寒く感じるものの、夏はこのおかげで涼しく感じる。
なお、隅田川は満潮時に逆流するのだが、川に入り込む海水のおかげで虫や蚊が少ない。
築地市場でも虫の発生を抑えるために海水で床掃除をしているそうである。
また、川の水が海水であるために、川にやたらとたくさんのクラゲが浮遊している。
あとは、船の汽笛や通行音や屋形船からのカラオケ音声が聞こえるのはこのエリアならではの特色ともいえる。
そういうわけで湾岸エリアは同じ東京でも夏に比較的過ごしやすいエリアなのだが、おかげでかなり暑がりな俺もまだ一度も冷房に世話にならない生活を送ることができている。
とはいえ、とある年だけは完全に冷房無しで過ごしたのだが、別に我慢をしたいというわけではないので、35度を超えるような日になれば躊躇なく冷房をつける。
うちは川沿いで南東と北西に窓があるのだが、窓を開けると風がびゅーびゅー吹き抜けるため、この季節に我が家を吹き抜ける風が異常に気持ち良く、まるで南国リゾートのビーチサイドにいるような心地になる。
さらに、ここ数日は台風の影響で風の強さが増しているわけだが、この風を受けられるだけでも川沿いに住む価値はあるなと思うぐらいに心地良い。
心地良さを味わうために窓を全開にして寝るといいことずくめなのだが困ったこともある。
それは音の問題である。
路地だらけの月島ならともかく、このあたりはマンションだらけで、野良猫など生きられそうにない環境なのにどこかに野良猫がいるのかどうかわからないが、今は猫の発情期なため、深夜にメス猫が気味悪く鳴く声がやたらとうるさい。
少し前はカラスの繁殖期でカラスの声がうるさかったが、こちらはほぼ収まった。
また、築地市場のごく一部のトラックの運転手は気に食わない相手に対して真夜中であってもクラクションを全力で鳴らす。
あと3ヵ月で移転する築地市場には迷惑施設としての一面があるのだが、本当に迷惑なのは市場ではなく短気なトラックの運ちゃんの存在である。
すっかり高価格になってしまった湾岸地区のタワマンを推すわけではないが、東京の不動産を買う中国人は海の近くにあるという要素に結構な価値を置いているそうである。
よくよく考えてみると、海を間近にして住むことができる世界的な都市は意外と少ない。
世界で思いつくのは、ニューヨーク・ボストン・マイアミ・タンパ・ロサンゼルス・サンフランシスコ・シアトル・バンクーバー・ホノルル・シドニー・メルボルン・アデレード・パース・大連・青島・厦門・香港・マニラ・シンガポール・ムンバイ・カラチ・ドバイ・イスタンブール・ヴェネツィア・ナポリ・ジェノヴァ・モナコ・ニース・マルセイユ・バルセロナ・アムステルダム・コペンハーゲン・ストックホルム・ヘルシンキ・チュニス・アルジェ・カサブランカ・ケープタウン・ハバナ・リオデジャネイロ・ブエノスアイレス・モンテビデオぐらいなものである。
アテネはピレウス港まで若干距離があるし、上海や深圳やサンクトペテルブルクなども同様に若干の距離がある。
日本でも市街地が海辺まで延びていると言いきれる都市は、小樽・函館・青森・新潟・千葉・東京・横浜・堺・大阪・神戸・尾道・高松・下関・北九州・福岡・佐世保・長崎・別府・鹿児島・那覇ぐらいなものかと思うので、海沿いに住めるというのは結構貴重なことだと思う。
なお、これについても静岡・呉・大分・宮崎などは上と同様の基準で外した。
東京は数少ない海辺に浮かぶ巨大都市だ