GOODDAYS

社会全般について思ったことをここでつぶやいてます

アングロサクソン新自由主義とEU考

今回のイギリスのEU離脱の件を受けて書く。
ユーロという通貨には大問題がある。
国にとって金融政策というのは極めて重要なのだが、ユーロはそれを国から奪い去る。

普通であれば為替で国力の差を埋めれば良いのだが、同一通貨であるがために、産業の強いドイツと産業の弱いイタリア・ギリシャの労働者が全く同じ土俵で戦わなければならなくなるわけで、何もしなくても通貨安政策が実現するドイツが富み、ギリシャが貧しくなるのは必定で、ギリシャ人には不満が募り、それに対して、ギリシャの財政を助けるためにドイツの資金がギリシャに流れてドイツ人に怒りが募り(でもドイツ人はギリシャ債で相当な金利益を上げている)、援助をする側のドイツがEU圏内において支配的な立場になっていくことは避けようがない。
同国内ではいくら東京で徴税した税金が、交付金で沖縄に行こうと騒ぎにならないが、これが隣の国に行くとなると納得できなくなるのは普通の感覚でもある。


そういう意味ではEUはともかく、ユーロという通貨に関してはその理想主義はわかるが将来は厳しいのではなかろうかと個人的には思っている。
ドイツ帝国などと揶揄されたりもするが、そうなってしまうのはユーロのせいなのである。
ところで、イギリスの拠出金が他の国に流れているという現実はあるのだろうが(離脱派の主張する額にっ虚偽があったが)、イギリスはEUにおける特別な地位を得てユーロにも、出入国管理がなくなるシェンゲン条約にも加盟せずに済み、それでありながら自由貿易での大きなベネフィットを享受していたのにも関わらずそれを放棄したのだから驚いた。


今回の問題には移民に対する嫌悪の感情があったことは間違いない。
移民に職を奪われないエリートは理想を掲げられるが、彼らに仕事や治安といった生活圏を脅かされる階層は東欧などからの移民排斥に動きやすい。
また、エリートは難民を受け入れることを人道的と呼ぶが、生活圏を脅かされる人はそれを脅威に思う。


自称「イスラム国」等の過激派組織のテロでイスラム教徒に恐怖心や嫌悪感を抱く人も増えていく一方であろう。
こういった反エリート意識が今回の離脱投票に結びついた面も大きいのであろう。


現在の中東問題はちょうど100年前の5月に英仏で結ばれたサイクス・ピコ協定こそが最大の原因であり、そもそも論で言えばイギリスが最大の戦犯なのだが、多くのイギリス人の脳裏にはそういった思想はないのだろうとも思う。
戦中に存命していた人が少ないのに今でも隣国から目の敵にされる日本人だからわかるが、100年前のことなど、今のイギリス人に関係あるかといえばないともいえるのだが、中東問題は世界最大の難題なのだから頭にぐらいは置いておいて欲しいなという願望もある。


他にも、日本も同じだが、老人民主主義の結果といった表現もできるだろう。
そして、離脱派の急先鋒のジョンソン氏がいざ党首選挙になると逃げ出す始末。
 側近の裏切りあるなしに関わらず、自分がイギリス人だったらブチ切れだろうなと思った。

2016年6月28日の読売新聞において、フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏が述べていたことを勝手に要約・抜粋すると以下のようなことであった。
1980年代以降、英米アングロサクソン二国がサッチャイズム・レーガノミクスという新自由主義推し進めて、日仏独も違和感を覚えながらもそれに適応してきたが、とうとうそれを推し進めてきた英米で社会の分断・解体が進行し、それに耐えられなくなって、トランプ現象やEU離脱といったポピュリズムの台頭に至った。
 「資本・食品・人が自由に移動する開かれた世界」という新自由主義の夢は悪夢に終わりつつある。
なるほどなと思った。


 新自由主義では、市場原理主義・小さな政府・民営化・規制緩和・労働者保護の縮小・均衡財政・福祉の縮小・累進課税の緩和・相続税の減税といった政策が善であり公正であるとされたが、その結果、格差の拡大・社会保障の低下による不安の拡大という問題を生んだ。


そして、新自由主義推し進めたボーダレス化は、自由貿易の拡大・生産手段の海外移転・グローバルな人の移動・国家間の所得格差の縮小・通貨安競争・法人税下げ競争といった現象を生み、それは、従来の先進工業国には不利に働き、中国のような勃興国やアメリカ・イギリスなどの投資金融型経済には極めて有利に働いた(これはピケティ氏の「r(資本収益率)>g(経済成長率=所得)」が指すところ)。


新自由主義社会では、中国が圧倒的に豊かになったように、自由貿易圏の貧困を次々に消し(自由市場経済のフロンティアは中国→ベトナムカンボジアミャンマーとどんどん広がっていった)、消費者に世界最高の商品を届け、他国に投資して大きく儲けることもできる(実際、日本企業はあり余る内部留保を海外企業買収に充て年間20兆円もの配当等の収支を得ている)。


その反面、国内産業の空洞化を招き、人の移動の自由化は移民の増加・職の不安定化・職のコモディティ化による所得の低下(日本語圏の人はまだ助かっている)を起こす。
職の不安定さが増し、失業率が上がり、社会保障が狭められ、その中で圧倒的な金持ちが存在する英米型社会においてポピュリズム的な主張が受け入れられるのは致し方ないこととなのかもしれないとは思ったのである。

今回のアメリカ大統領予備選では、保守主義色の極めて強いクルーズ氏や、それに次ぐルビオ氏といった候補はいたが、共和党で支持を得たのは保護主義色の強いトランプ氏だった。
 民主党でも社会民主主義者サンダース氏が善戦した。
アメリカが世界に広めてきた新自由主義に対しても、民意による転換点が差し迫っているのかもしれないと思わせる現象が起きているのである。


余談だが、このたびのイギリスのEU離脱で、安倍首相が日本において血眼になって目指した自国通貨安政策だけは大きく実現した。
とはいえ、経常収支も貿易収支もおそろしく赤字続きの国であり、イギリスにとってこれが吉なのか凶なのかということはこの国の事情をきちんと知らない僕には測りかねるところである。


次は、日本における新自由主義はまだまだだと思う件について。
僕は高校生の頃から一貫して新自由主義のほうがベターと思い続けていて、消費者より生産者重視の長年の自民党のやり方が許せなかった。
また、昔の自民党守旧派と言うならば、新自由主義推し進める人々は長らく改革派と呼ばれてきた。


今は180度逆の主張をするようになってしまったものの小沢一郎氏は自己責任型の社会の実現を強く主張し、漫画家の弘兼憲史氏は「加地隆介の儀」という作品で一貫して新自由主義にこそ理想があると表現し、竹中平蔵氏のような閣内の論客や大前研一氏のような国際的な論客も一貫してそういった社会の到来を主張してきた。


そして、新自由主義的政策がとられることで、電車・電話・電気・ガス・郵便といった公的部門の民営化がなされてサービス水準が上がり、金融ビッグバンでメガバンクが誕生して国際競争に遅れずに済み、株式委託手数料が減り、大店法改正で全国にイオンやアリオができて生活が便利になり、容積率緩和で大都市開発で高層ビルが建ち、酒の販売が自由になって酒屋が行き詰まった結果コンビニが増え、薬局でも昔より医薬品を買いやすくなった、製造業の海外移転によって製品の価格が下がり続けて安くモノが買えるようになったなどといった恩恵を消費者が受けた。
その反面、地方の商店街はどこも構造上の疲弊を抱え、派遣労働者が誕生して正社員との所得差が拡大するといった生産者側が受けた影響のために日本における中級層の人口が減るといった弊害も出ている。


でも、日本に関していえば、個人的にはいまだに小泉改革は中途半端だと思っているし、まだまだ規制緩和は必要だし、もちろん全てではないが、もっと新自由主義的政策を推し進めたほうが良いと思っている。


しかし、アベノミクスがどうやってもやりようがないことをなんとかやろうとしているのと同じで、日本人は総倒れになってしまおうと新自由主義に抵抗を続けている。
イギリスのEU離脱ではないが、もはやそれが民意なのだから仕方ないともいえる。
役人が作った規制が多すぎて外国資本が新規参入しにくく、国内市場が大きすぎるためいつまでもガラパゴス市場のままだし、移民も難民ものらりくらりと難癖つけて受け入れないし(選挙の争点にすら上がらない)、株式の持ち合いを続けてサラリーマン社長が内部留保を溜めこんで緊張感のない経営を続け、海外企業の国内企業買収に対してはハゲタカと読んで極度に警戒して不公正な買収対策をするものだから国際企業から投資対象というか相手にされず(ウィンブルドン現象で伸びたイギリスの真逆)、派遣労働者は簡単に切るくせに過剰に正社員の雇用を保護する法制があり、いつまでも扶養者控除という時代遅れの税制を続け、年金保険でも専業主婦を優遇し、低税率なのに高福祉で、国民は預貯金に必死で株式に資金を回さず(撤退する僕が言うな!って話だが、これって資本主義の基本でしょ?)、赤字を垂れ流す国を信じられないから国民は貯蓄ばかりをしてお金が回らないし、何より人口および生産人口率が減り続けるのだからどうやったって経済が発展するわけがないし、国内がどん詰まりなのにこれまで述べたようにグローバリゼーションを嫌がり続けているのだから、他のグローバリゼーションが進んでいる国との差は開くばかりになってしまっている。


その結果として、新自由主義を取り入れてきた世界各国はこの20年間で経済規模を2倍にし、それができていない日本一国だけが成長せず、これからもそうなり続けるのである。
 国際的には名目GDPよりも重視されている購買力平価では既に台湾に抜かれ(実質的に一人あたりの所得は台湾に抜かれているということ)、韓国に追い抜かれるのも時間の問題となっている。


といいつつ、僕個人の考えは人生の豊かさの大きなファクターとして、家族・対人関係を別としたら、健康と労働時間の短さこそが二本柱で、経済的豊かさはその次だと思っているので、そういう意味ではいかなる時も労働時間の短縮に血道を上げ続けるヨーロッパの社会は本当にすばらしいなあと思っている。


なので、人生にとって大切なのはおカネではなく、健康と労働時間と割り切って社会を作るのはアリだと思うのだが、日本社会と日本企業は労働時間に関しての考え方も最悪だからどうにもこうにも救いようがないですな。今回のイギリスのEU離脱の件を受けて書く。