GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

K-1 WORLD MAX 2005 世界一決定トーナメント 決勝戦 [2005/7/20]  


各試合ごとの感想

1回戦 ○魔裟斗 VS ●マイク・ザンビディス (判定3‐0) 

3Rに奪ったダウンがなければ微妙だったが、魔裟斗選手の見事な勝利。

全試合で最も緊迫感にあふれた試合だった。

それにしても、魔裟斗選手のディフェンス技術とキメの強さには驚愕してしまう。

ところで、「3Rの最後は珍しく逃げに回っていたし、勝った後に渋い表情を見せているなあ…」と思っていたらやはりケガをしてしまったようである。

ところで、魔裟斗選手は前はそれほど会場人気は高くなかったのだが、この日の魔裟斗選手の会場での人気はすさまじいものがあった。

魔裟斗選手応援シート」とやらの面積の広さにもビックリしたが、声援の大きさにもビックリした。

 

1回戦 ○アンディ・サワー VS ●小比類巻貴之 (判定2‐0)

2Rの終了間際にパンチの連打を浴びてからはサワー選手のペースになってしまい、小比類巻選手の負けとなった。

結果だけを見れば私の予想通りとなったのだが、あの内容では本人にとっては悔いの残る試合になったであろうことは間違いないであろう。

しかし、小比類巻選手はどうやら試合前からどこかをケガしていたようであまり蹴りが出せる状態ではなかったということが後になって伝えられたようだ。

小比類巻選手は前までは会場での人気はあったのだが、最近はそうでもなく、特にこの日は人気を感じなかった。

それどころか3Rにはまたブーイングに近い反応が起きて、観客は勝ったサワー選手に大きな拍手を送っていた。

劇的なKOやダウンを取り続ける力を持っているのだから、また再起を促してがんばって欲しいものである。

 

1回戦 ○アルバート・クラウス VS ●ジョン・ウェイン・パー (判定3‐0)

私の中では優勝候補だったウェイン選手はここで敗退した。

私個人としてはどちらかといえばウェイン選手の勝ちだと思っただけに残念であった。

ウェイン選手のキックによるポイントはほとんど取ってもらえなかったということだろう。

ウェイン選手はプロボクシングでもかなりの成績を残しているのだが、ボクシングにおいて若干クラウス選手より体幹が安定していないため、パンチでも有効打の数は変わらなかったのに少しばかり守勢に回っているようにとられたのであろう。

しかし、ものすごく良い試合だったこともあったからなのだろうが、TBSが3Rとも放映していたのには感心した。

去年のブアカーオ戦といい今年のクラウス戦といい、完全に互角に戦っていながら両方とも1回戦で敗退とはかわいそうなものである。

 

1回戦 ○ブアカーオ・ポー.プラムック VS ●ジャダンバ・ナラントンガラグ (判定2‐0)

ブアカーオ選手が危なげなく勝利した。

まあ、こんなものであろうと思った。

しかし、ナラントンガラグ選手のような選手って素人にはホント人気あるんだよなぁ~。

 

準決勝 ○アンディ・サワー VS ●安廣一哉 (1RTKO・ドクターストップ)

準決勝第1試合は棄権した魔裟斗選手に代わって、偶然のカットでドクターストップにより途中までの判定で勝利した安廣選手がリザーバーとして駒を進めたのだが、一度ドクターストップを受けた選手が次の試合に進むというのはいかがなものだったのだろう…。

せめて、傷口を縫って再びドクターにOKをもらっての出場であった旨を大会後ではなく準決勝が始まる前に説明しておけば変な話だと思われずに済んだのに…とは思う。

開き直って捨て身で攻めていた安廣選手はなかなか良い動きをしていたが、結局、同じ傷からの出欠でドクターストップ負けとなってしまった。

サワー選手にとっては思わぬかたちで体力の温存ができたことになった。

 

準決勝 ●アルバート・クラウス VS ○ブアカーオ・ポー.プラムック (判定0‐3)

準決勝第2試合は2月以来の再戦カードとなったが、ブアカーオ選手が完全な本気モードで戦ったらクラウス選手もさすがに完封されたようだ。

まあ、クラウス選手はウェイン選手にかなり腕を殺されていたからその辺も多少は影響したのだろう。

ブアカーオ選手はこの試合でリベンジを果たそうと必死になったためか、止まることのない怒濤の攻めをみせ続けた。

しかし、その代償としてこの試合で両方の足首をケガしてしまったというから皮肉なものである。

 

決勝 ○アンディ・サワー VS ●ブアカーオ・ポー.プラムック (再延長判定2‐1)

勝戦はマニア垂涎の実力者同士のカードだったのだが、内容的には過去4大会の中でもっともつまらない決勝となった。

この現象はK-1GPにおいてもそうであるが、やはり決勝ともなると両方ともかなりの手負いとなってしまうためであろう。

後述の佐藤嘉洋選手の場合と同じだが、首相撲からのヒザ蹴りが1回だけだとキッカーにとってはすぐに手詰まりに陥ってしまうわけで、それがこの回数であっても異常な回数のブレイクを生み出す結果となった。

TBSが決勝をカットしまくったのは正解だったと思うほどブレイクばかりのつまらない試合となってしまった。

しかし、3大会連続で現王者が決勝で敗れて新王者が生まれるという展開になっているが、不思議なものである。

魔裟斗選手や小比類巻選手がタイ人選手に勝てるように…と導入されたと思われる「組んでからのヒザ蹴りは1回まで」というルールの限界を今大会が露呈した気がする。

ブアカーオ選手はイライラしてしまったのだろうか、得意の首相撲から投げ技ありのシュートボクシング選手であるサワー選手を投げまくって膠着を打開しようとしていたように見えたが、K-1では投げはマイナスにこそなることはあれプラスにはならないのがかわいそうであった。

また、運も手伝って決勝まで温存できたサワー選手と満身創痍のブアカーオ選手の初期条件の差はブアカーオ選手にとってかわいそうであった。

また、あの再延長の内容で雌雄が決されたのもかわいそうに思えた。

リザーブファイト ○安廣一哉 VS ●ダリウス・スクリアウディス (途中判定3‐0)

ダリウス選手の金的蹴りが2回連続で起き、試合が大きく中断したが、かわいそうなことにダリウス選手には減点1が与えられた。

そして2Rには偶然のバッティングでドクターストップによる試合中断となり、それまでの採点で裁かれたが、連続の金的攻撃による減点のために安廣選手の判定勝ちとなった。

両者ともかわいそうだったし、釈然としない試合であった。

特に前回の小比類巻戦といい今回の安廣戦といい実力を出したくても出せなかったダリウス選手はかわいそうであった。

 

スーパーファイト新田明臣 VS ●朴光哲 (判定3‐0)

新田さんがオファーを受けてから試合までほとんど時間のなかったのだが、こうやって計量をクリアしてリングに立てるだけでも立派だと思った。

試合内容はローキックを効かせての判定勝ちという予想通りの展開となった。

しかし、朴選手のパンチ、特に右ストレートには光るものがあると思った。

なお、朴選手は修斗の選手ではあるもののアマボクシングで相当強かった選手のようである。

 

スーパーファイト ○ラモン・デッカー VS ●ドゥエイン・ラドウィック (判定3‐0)

キックボクシングのリングへまさかの復活を遂げたデッカー選手が実力者のラドウィック選手からすべてのRでダウンを奪って完勝するとは思っていなかった。

ラドウィック選手は70kg級では減量が最大の敵だったのだが、この試合は75kg契約で行われたので、ベストの状態にあるラドウィック選手を撃破したということになる。

「伝説のキックボクサー」は「生ける伝説」だったな…。

 

スーパーファイト佐藤嘉洋 VS ○ヴァージル・カラコダ (判定0‐2)

この日の試合で最もショックだった試合である。

私個人としてはいまだに佐藤選手の負けを受け入れることができない。

異常にブレイクが多く、その非はどちらかといえば、ヒザ蹴りにこだわった佐藤選手にあったためにその点がひびいて佐藤選手の負けとなったのだろうが、ダメージはどう見てもガラゴダ選手のほうが圧倒的に受けていた。

佐藤選手のヒザが地獄のようなダメージを与えるのは長らくキックを観てきた人間なら知っているが、知らない人間にはそうは見えないであろう。

だからこそ、カラコダ選手は「ボクシングのキャリアを通じてもこれまでで一番厳しい相手で、勝ちの判定を聞いてリングの上で泣いてしまった」とコメントをしたものだと思われる。

カラコダ選手はパンチを振り回し距離をつめてブレイクを待つという戦略を繰り返して勝ったことになるが、これは決勝でのサワー選手と同じ展開である。

また、あのように後ろに避けながらオマケのようにもらうパンチというのは実はダメージがあまりないのだが、見た目には良く映らない。

佐藤選手もダメージはないと言っていたが、その辺の見た目の悪さが強く判定に響いたのであろう。

また、ヒジとヒザが得意な佐藤選手の持ち味を最大限に消し去るK-1ルールとはいえ、それにしても異常なブレイクの早さについては閉口してしまった。

私はパンチャーとキッカーでは、自分がパンチしかできないこともあってどちらかといえばパンチャーのほうが好きだし、「日本人はパンチを大事にするべきであって、歴史の重みが違うのだからムエタイスタイルを志向すべきでない」と常に思っている私ですら、最近のK-1のキックに対する採点上の評価には個人的には大きく首を傾げてしまう。

まあ、ギャラリーが採点基準にケチをつけてもしょうがないのだが、この試合の判定には大きなショックを受けた。

こういったふうに強く思うのは、私が新田さんのファンであるのと同様に佐藤選手のファンであるからに他ならない…。

 

今回の大会を観戦してちょっと思ったこと

以下、総括的な内容を述べるが、キックに対するポイントの低さと異常なブレイクの多さ以外にも、今回の大会でとても残念に思ったことがある。

前からわかっていたことと言ってしまえばそうなのだが、4年目になっても魔裟斗選手がいなかったらこのイベント自体が盛り上がらないということがわかってしまったことである。

魔裟斗選手が棄権した瞬間のボルテージの下がり方は半端ではなかったし、それはお茶の間でも同じであったであろう。

そういう意味では、ヘビー級のように多彩な選手が盛りたてるという図式ではなく、魔裟斗選手あってのMAXという図式が成り立ってしまうということになる。

 

このMAXというイベントの特徴はキック好きなマニアとミーハーな女性ファンから成り立っているため、中間層の遠心力が強くない点が弱点だと思うのが、そこに魔裟斗選手がいなくなるとマニアしか残らなくなるわけでそうするとただのキックボクシングになってしまうわけである。

キックボクシングの世界では70キロ級以外でも魅力的な選手や強い選手がキラ星のようにいるわけだが、魔裟斗選手のようなメジャーな世界で通用するヒーローがいないので、70キロ級以外の階級が設立されないのだろう。

五味選手や川尻選手が強いのにも関わらず今ひとつ地味なために盛り上がらないPRIDE武士道が人気面で苦戦しているのもそのせいだと思うのだがいかがだろうか…。

 

話は変わるが、首相撲について個人的意見を言うと、何回も何回もブレイクをかけられるのを見るぐらいなら地味な首相撲を延々と見ていたほうがまだマシだと思ったのは私だけではないだろう。

パンチを振り回して一気に間合いを詰めるという作業を繰り返すだけでポイントが入ることにつながりかねず、このルールはクラウスやガラコダ選手のような選手が勝ちを拾いやすすぎるように思う。

ただでさえ、メキシコ製の小さなグローブでパンチが効きやすいの条件で選手は戦っているのだから、もう少しキッカーが報われても良いような気がする。

 

バンコク市内にて