GOODDAYS 東京仙人生活

ひっそりと静かに生きる47歳仙人のつぶやき

K-1 WORLD GRAND PRIX 2004 決勝トーナメント [2004/12/4] 

 

全体の感想

毎回のことながら、今回も判定の難しい試合が多かったなあと思った。

私にも納得のいかない判定があって、ボンヤスキーVSホースト戦と武蔵VSガオグライ戦は私の判定と実際の判定が逆だった。

しかし、それだけ微妙な試合がばかりだったということは間違いのない事実で、見方によっては仕方ない結果だったのかな思う。

ところで、今回にとり上げられていた0.5ポイント差を発表する方法は勝たせたくなくて明らかに優勢なほうに0.5ポイント差をつけてあげてドローに仕立て上げるための新たな手のように思えてならない。

それにしても、微妙な判定という選手の頑張りではどうしようもない部分で結果が決まってしまう部分があるのは本当にかわいそうだと思う。

それと、未曾有のドル安で優勝賞金の40万ドルがアメリカ人以外には実質的な値下がりになってしまうのもかわいそうだなと思った。

武蔵は準優勝賞金の6万ドルをすぐに円に変えるだろうが、ボンヤスキーは投資するそうなので両替のタイミングも考えてくれるだろう…。


各試合ごとの感想

1回戦 ○ガオグライ・ゲーンノラシン VS ●マイティー・モー (1RKO・右ハイキック)

間違いなく今回のベストバウト。

ある意味でマイティー・モー選手は優勝候補筆頭であったのだが、衝撃的なまでに良い意味で予想を裏切った試合であり、まさに鳥肌モノのKOであった。

これで観客はモトをとったろうと勝手に思ってしまう。

現場の興奮と感動は半端ではなかったと思う。

ヘビー級に選手には魔裟斗選手もブアカーオ選手も勝てないだろう。

それなのにこの男は…すごすぎる。

2001年3月31日に武田幸三選手に大差の判定で負けた選手とは思えない強さである。

元はと言えば、ソウルのGPのかませ犬というか当て馬のつもりで用意されたであろう選手が、あろうことか、中迫・子安両選手を破って優勝し、イグナショフに勝ち、TITANSでベルナルドに判定は一応引き分けだが実質的に勝ち、そしてマイティー・モー選手をKOするとは痛快すぎるが、ミドル級だけでなくヘビー級でもムエタイのすごさが実証されただけともいえる。

ミドル級の選手はさぞ元気づけられたことであろう。


しかし、これだけの体格差のある試合を組み続ければいつかは捉えられるだろうし、そうなったら大ケガしかねないので、そうなる前にヘビー級での試合辞めさせて本来のミドル級で試合をさせてあげたいものである…。

ところで、普通、ハイキックは90%の力で当たれば十分に相手は倒れてくれるので、蹴り足に100%の重心を込めて打つことはまず無いのだが、今回は相手が頑丈この上ないマイティー・モーだったことがあって、軸足に全く重心を置かない100%のハイキックを見ることができたが、ここまで蹴り手の持てるすべてのベクトルが完璧に炸裂したハイキックは初めて見た。

芸術的としか言いようが無い。

ガオグライ選手には是非ともMAXで真剣勝負させたい。

晦日にブアカーオVSガオグライ戦とか組んだら、魔裟斗VS山本KID戦は気分的には前座になるのだろうなぁ…。

あと、もちろん、試合後の伊原会長のパフォーマンスのすごさにも脱帽…。

 

1回戦 ○武蔵 VS ●レイ・セフォー (延長判定3-0)

見る人によって判定の別れるカードであろうが、良く見るとセフォー選手の攻撃はことごとく武蔵選手に当たっていない。

武蔵選手のディフェンスは本当に見事でパンチをサイドにいなすテクニックが完璧に身についている。

世間には「武蔵流」が認められていることを考えると、これぐらいなら武蔵選手の勝ちでもいいかなと思う(詳しくは後述)。

まあ、私がパフォーマンス重視のセフォー選手が好きではないということもあるが…。

 

1回戦 ○フランソワ・ボタ VS ●ピーター・アーツ (1RTKO・ヒザカット自滅)

アーツ選手はまた自滅か…。

どちらにしても面白い試合はできない人だが本人も歯痒かろう。

 

1回戦 ○レミー・ボンヤスキー VS ●アーネスト・ホースト (延長判定3-0)

本戦のドローは納得するが、延長はどちらかと言えば間違いなくホースト選手の勝ちであろう。

可愛そうなものである。

まあ、ホースト選手の衰えは明らかであったことは否めないか…?

 

準決勝 ○武蔵 VS ●ガオグライ・ゲーンノラシン (延長判定3-0)

武蔵を応援しているハズなのだが、心のどこかで小柄なガオグライ選手をも応援してしまった…。

延長では武蔵選手の攻撃で有効だったのはローキックぐらいなものだが、これも体重差で押し込まれはしたもののさして効いてはいなかったように思う。

私がジャッジならアグレッシブさと手数、そして、武蔵選手以上に「武蔵流」ができていたという意味でガオグライ選手の勝ちにしたと思う。

しかし、他の人は武蔵選手の勝ちだと思っている人が多いようで、そういう意味でも微妙な判定だったのだろう。


準決勝 ○レミー・ボンヤスキー VS ●フランソワ・ボタ (延長判定3-0)

ボタ選手がK-1ルールにきちんと対応しているのに驚いた。

ボンヤスキー選手はホースト戦での足と左腕のダメージが大きかったのか、準々決勝が第4試合でインターバルが短かったため疲れがとれていなかったのか、精彩に欠けていた。

ボタ選手は、昨年のアビディ戦同様、試合終了間際にハイキックを貰うという集中力切れを起こしてしまい、「残念でした」といった感じであった。 


決勝 ○レミー・ボンヤスキー VS ●武蔵 (再延長判定3-0)

ダウンはマイナス1ポイントのフラッシュダウンだったことと、2Rのローキックの印象とどちらかといえば流れが武蔵選手にあったことで本戦のドローは許容範囲である。

もしくは、自分で勝手に2度もリングから落ちる行為に対するペナルティーを取ってみたと考えたとしたら、武蔵選手の勝ちにしても良いかもしれない。

しかし、エキストラRの1R目の判定はやりすぎである。

完全にボンヤスキー選手の勝ちで決着がついていたハズなのにまた疑惑の判定をやってしまった…。

どうでも良いところで0.5ポイント差をつけるくせにここで0.5も差をつけないのには笑うしかない。

魔裟斗VSブアカーオ戦の失敗が全く生かされていない。

武蔵選手は合計13Rも良く頑張ったが、魔裟斗選手じゃないけど限界だったろう。

地力とリーチの長さで体格に勝るボンヤスキー選手が勝ったようなものだけに残念である。

ところで、武蔵選手は準々決勝はサウスポー、準決勝と決勝はオーソドックスだったが、何か個別対策があったのだろうか…本当に驚くほど器用なものである。

また、勝手に「テレビ局や周囲から優勝を狙える」などという無茶を言われながら2年連続で準優勝という結果を残したのだから立派すぎる。

しかしながら、今回の武蔵選手のモチベーションとボクシングテクニックの完成度は最高のものだったが、それでダメだったのだからしょうがないし、これでダメなら今後も望みはないかもね…とちょっと思ってしまった。

でも、勝負は時の運だから来年も頑張って欲しいものだ。

それと、明らかに負けている割に武蔵選手のアピールがすごかったのには「良くそこまで精神的にタフになった…」と感心した。

それと、ボブ・サップ選手とホースト選手に勝ったうえ、2連覇したボンヤスキー選手はすごいなーと思った。

でも、フィリョ選手に負けたり、不安定な試合をしたりと変な取りこぼしが多いからその辺は気をつけないとボンヤスキー時代はまだまだ来ないだろうと思う。

 

ホーストそれは言いすぎだろ!(ホースト発言に対してちょっと思ったこと)

スポーツナビのサイトに以下のようなホーストのコメントがあったのだがちょっと不愉快な気分になったうえ、彼のことがちょっと嫌いになった。

ちなみに、私はホーストVSボンヤスキー戦はホースト選手の勝ちだと思っているし、ホースト選手は一番好きな選手の一人である。

 

レミーは良くやったと思いますが、自分のほうがいい試合をしたと思います。
ただ、この日本的な考え方、判定は本当に理解できないと思います。
やはり日本人のジャッジを考えると、外国人のジャッジのほうがフェアで、またこのK-1は外国人選手が多い訳ですから、外国人ジャッジが入らないというのは非常に納得いきません。
また以前にもピーター・アーツ選手が武蔵選手と戦ったときに同じようなことがあって、あの時も完全にピーターが勝っていたのに武蔵選手に勝利が行ってしまったりといった納得できないことがありました。

 

自分自身でも、以前にアンディ・フグ選手と戦ったときに似たような結果、自分から勝利が奪われたと認識している試合がありました。
そういう例の二度目が自分に起きてしまったわけですね。
このGPっていうのは、やはり勝つことが選手の大目標であって、もし自分が納得して負けたのであれば負けは負けとして認めますが、やはり納得のいかない判定で負けにされてしまうのは、自分としてはまったく受け入れられないし、非常に今、怒り心頭です。

 

自分に厳しいとか、そういうことを言っているのではなくて、一般的な意見として端から見ていると、日本のジャッジは多くの間違いを起こしていて、またそれを繰り返してしまったと思います。

 

今日の試合でも、セフォー選手と武蔵選手の試合でも、あれはどう見ても武蔵選手の勝ちというよりは、ドローになっていたら納得できたかもしれないが、あれはセフォー選手が勝っていたと外から冷静に観ていて感じました。
ただ、それは今の自分の心境であって、自分の対戦に関しては今からビデオをゆっくり観て、もしかしたら違った見解が生まれてくる可能性はありますが。
今現在の自分の心境としては、延長戦は自分が間違いなく勝っていたと思っています。

 

今自分が怒っているのは、なぜ日本の審判、また日本の舞台での試合でこうしたことが繰り返されるのかということなんです。
勝った者に対しては、正当に勝利という形が出てしかるべきだと思いますから、そこがしっかりしていないところが非常に不満が残るところです。

 

 

また、セフォー選手も申し合わせたように以下のようなことを言っているが、もっと不愉快に思える。

私がセフォー選手嫌いと言うのももちろんある。

 

今、少し時間が経って、笑いながら話ができるんですが、とにかく自分としてはこのイベントに向けてやれることはすべてやってきました。
選手としてのやれる限りの努力をした上で、こういうことになってしまった以上、自分としてはもうこれ以上何もできません。
選手としてやるべきことはすべてやってきましたが、その努力だけでは報われない何か別の力が働いてしまったとしか思えません。

 

武蔵選手は試合を通してご覧になった通りの試合で戦ってきたわけですが、これは誰かよく分からないけど、誰かの意思が働いて、または誰かのさじ加減一つで、結果がこのようにねじまげられるのは非常にアンフェアだと思います。
それは誰か分かりません。
ジャッジの一人なのかそうではないのかは分かりませんが、選手としてはどうしようもない次元での話で勝敗が決してしまうのは、本当に不満がありますし、またご覧になっていただいて分かるように今自分は敗者としてここに座っていて、武蔵選手は準決勝に進む。
これはどう考えてもフェアじゃないなと思います。

 

ところで、最近のガオグライ選手と武蔵選手の活躍と、世間やマスコミに俗に言う「武蔵流」という「体格の劣る日本人が、相手の強打を見事によけながら有効打数を稼いで判定勝ちを狙う戦い方」が認められるようになったという点を注意して見れば、一見不可解にも思える武蔵VSセフォー戦の今回の判定には納得が行くように私は思う。

 

武蔵流という逃げ回るスタイルの戦い方を認めてかかってジャッジングしてみれば、武蔵VSセフォー戦も武蔵はセフォーに勝っていたことになるし、認めていなければセフォーの勝ちになる試合だったのだが、世論がそのように動いていて、ジャッジの深層心理でもそのように考えるようになっていた点については、日本人でないホースト選手やセフォー選手が知るわけも無く、だからこそ上記のようなコメントをしたのだと思うのだが、ところで、私が以下のような偏った考えを持つのは酷すぎるだろうか?

 

ホースト選手もセフォー選手も本人の頑張りは認めるし、今の栄光はまぎれも無く、本人の力で勝ち取ったものだと思う。

また、K-1が国際的に認知されるためには、外国人のレフェリーの導入などは是非とも考えるべきであろう。

しかし、ヘビー級の外国人選手にはどこか小柄な日本人を舐めくさっているというか見下していることがあって、毎回のことながら、「日本人選手に負けるなんて有り得ない」「日本人に負けるのは他の国の選手に負けるより腹が立つ」「日本人が勝ったのはジャッジが影響した」というようなニュアンスを言葉の端々から感じ取れてしまうのは本当に見ていて腹立たしい。

 

まるで、サッカーのワールドカップで韓国がイタリアやスペインを破ったのが悪いことであるかのようにヨーロッパ人が言うのと同じ感じなのだが、日本人選手だけならともかく、日本人ジャッジや「日本的な考え方」なるものを否定したり、「何か違う力が働いていて勝利を逃した」とまで言うのならば、「もうK-1には出なくてよろしい」と小言の一つでも言ってやりたくもなる

ところで、2ちゃんねるの意見のほとんどはホースト選手&セフォー選手擁護派ばかりで彼らとは完全に意見が違うようである…。

 

これらのことは、ジャパンマネーでご飯を食べている選手は絶対に言うべきではない。

彼らは、日本という国で自分達がチャンスを与えられて、富と栄光を手にしているという厳然たる事実をもっと認識し、日本人と日本に敬意を払うべきであると言ってはエゴになるだろうか…。

 

しかも、彼らの言う問題は、日本人が云々という部分にあるわけでは無い。

残念ながらK-1コミッショナーではなく、あくまで興行団体にすぎないため、毎回ながらテレビ局の意向やプロデュースする側の意向が働くという点に問題があるのである。

フジテレビのプロデューサーは「ボンヤスキーにニューヒーローになって欲しい」とはっきりと発言をしていることもあって、その意向がジャッジの深層心理残っていて、あのような判定をさせたのかもしれない。

 

また、ホースト選手が「日本的な考え方」というのは、本当に日本的な考え方に問題があるのではなく、空手的な考え方に問題があるということにすぎない。

実質的な選手構成的には「K-1=キックボクシング」なのに、空手団体である正道会館のジャッジが裁いているため、キックボクシングの観点と違った判定がたまになされるという点に問題があるのである。

なお、K-1には、腕ガード上からのミドルキックのポイントをほとんどとらない、決まらない浴びせ蹴りをポイントの対象とすることがあるという傾向がある。

 

また、多少の地元びいきぐらいはあっても、ここは日本なのだから多少は仕方が無い部分も無くはないだろうと思うのだが、それでも他の国の格闘技イベントと比べるとK-1はまだ地元びいきがなされていないような気がする。

日本人キックボクサーの欧州遠征における判定なんて地元びいきもいいところである。

実際に明らかに地元びいきだったのは、魔裟斗VSブアカーオ戦と今回の武蔵VSボンヤスキー戦の2つだったが、他にも、セフォーVSアーツ戦やクラウスVSチャップマン戦のような外国人対決でも明らかにおかしい判定が過去にあったのだから、明らかに地元びいきがなされているとまではいえないだろう。

しかも、おかしな判定はキックボクシングとてボクシングとて同じことで、そんなこと言ったらボクシングの鬼塚勝也氏などほとんど負けていたようなものではないか…。

 

これまであえて偏ったことを言ってみたわけだが、とはいえ、K-1自体も選手に愛想をつかされてはかなわないだろうし、ギャラの高いPRIDEに選手が流出し気味かつ人気まで奪われがちなわけだし、ホースト選手の言い分には確かに利があるので、K-1も色々と改革をすることが求められるであろう。

 

12月のバンコク